再春館製薬所×Lib Work、住宅販売を開始 漢方発想の住環境で「自己回復力」を引き出す家とは? 独自戦略を取材

再春館製薬所(熊本・上益城)と住宅メーカーのLib Work(熊本・山鹿)は先月末、住むだけで自己回復力が育まれる人生100年時代の健康住宅「再春館製薬所の家(Positive Age House)」の販売開始にあたり、モデルハウスを公開した。既存の住宅メーカー各社がテクノロジーを駆使した健康住宅の開発を進める中、どのような独自戦略で差別化を図ったのか?再春館製薬所の担当者に話を聞いた。

テクノロジーの過度な活用は避けた

再春館製薬所の家」は、「健康寿命延伸」「生体リズム」「自然との共生」を軸に、漢方とテクノロジーの考えを融合させて設計した住宅。人が本来持つ回復力や自然な健康を引き出すため、テクノロジーの過剰な活用は避け、生体リズムを自然の力で整えることができる住環境づくりを意識した。

生体リズムに合わせて照明の色温度や明るさが変化する「サーカディアン照明」や、自然の力を活かして快適な住環境をつくる「パッシブデザイン」の採用が、その一例。例えば南側の窓周辺に植えた落葉樹は、夏には茂った葉が強い日差しを遮り、秋冬は葉が落ちることで日光を室内に取り込みやすくする。室内の風の通り道にも配慮し、自然な通風が室内環境を快適に保つ。

再春館製薬所の家~Positive Age House~

【出典】再春館製薬所

 

また、日常生活の中で「視・聴・嗅 ・味・触」の5感を刺激することで心身を活性化させたりリラックスできるよう、外気浴ができる浴室、ヒノキ材を使ったバルコニー、凹凸のあるなぐり加工の床や畳、ボロン床など多様な素材を用いるなどして、触覚への刺激を意識的に設計した。暖炉の炎のゆらぎや木漏れ日、そよ風など、自然界の「1/fゆらぎ」も取り入れた。それにより、”規則的すぎず不規則すぎない”心地よいリズムが生まれ、心身をリラックスさせる効果が期待できるという。暮らしの中で四季の移ろいを楽しめるよう、庭木には、実がなる木や香りを感じる木、紅葉する木などを植えた。

【出典】再春館製薬所(凹凸のある「なぐり床」が足裏を刺激する。触覚を刺激しながら、健康づくりにも)

 

随所に散りばめたのは、健康づくりの機会

日々の暮らしの中で健康づくりを促すため、生活導線の随所に仕掛けも散りばめた。狙いは、「日常生活の中で無意識に“さぼり筋”が目覚めるような、自然な動きを促すこと」だという。例えばダイニングには、掘りごたつのような構造を採用。「座ったまま横に移動することで、筋肉を刺激する動作が自然と生まれます」。中2階に設けた”座りたくなる”読書スペースも、階段の昇り降りの機会を自然と生み出す仕掛けだ。家の中でさまざまな場所に移動したくなる仕掛けを取り入れることで目指すのは、「住む人が毎日何気なく体を動かし、長い年月の中でその積み重ねが大きな健康効果となって返ってくること」だという。

【出典】再春館製薬所(段差を設けることで、ちょっとした運動の機会に)

【出典】再春館製薬所(段差を設けることで、ちょっとした運動の機会に)

 

再春館製薬所(座り姿勢で横に移動するこで、筋肉を刺激する動作が自然と生まれるダイニング)

【出典】再春館製薬所(座り姿勢で横に移動するこで、筋肉を刺激する動作が自然と生まれるダイニング)

 

再春館製薬所(「そこで読者したくなるスペース」を中2階に設けることで、階段の昇降の機会が生まれる)

【出典】再春館製薬所(「そこで読者したくなるスペース」を中2階に設けることで、階段の昇降の機会が生まれる)

今回公開したモデルハウスでは、「要介護状態になることなく人生100年を生き抜く住まいのあり方や暮らし方」を提案していることから、身体に不自由がない住人を想定した設計となっているが、今後は、要介護状態になるなど身体状況の変化に対応した可変性ある間取りの設計についても、検討していくとのこと。「安心して長く暮らせるよう、コンセプトに基づきながら、個々の健康状態や将来の計画に合わせて柔軟に設計していきたい」としている。

 

他社との違いは「自然との共生で自己回復力を引き出すこと」

住む人にとって自宅が「養生の拠点」となるような住宅を目指して開発したというが、既存の住宅メーカー各社が健康訴求をした住宅開発・販売を進めている中、どのような独自戦略をとったのか?最大の差別化ポイントは、「人と自然との関係性」に対する根本的な捉え方だという。

「多くの住宅が、外界から完全に人を隔て、室内に人工的な快適環境をつくることを目指してきました。しかし、それは本来自然の一部である人間にとって、不自然な関係を生み出しかねません。私たちは創業以来、漢方理念に基づき“自己回復力”の研究・製品開発を重ねてきた製薬会社として、『自己回復力』を高めるには“自然との共生”が不可欠であると考えてきました。平衡感覚を不要とする完全に平らな空間は、自然界にはありません。外の庭や窓からは四季の移ろいが感じられ、自然の光や風が家の中を巡る。こうした設計により、住む人は自然を避けるのではなく、自然と共生しながら健康を育むことができます。『自然を遮断して健康を守る』のではなく、『自然とつながり、共生することで自己回復力を引き出す』。それが、他にはない本質的な差別化ポイントだと考えています」。

 

創業100周年に向けたチャレンジ、全国へ展開

再春館製薬所は今年4月に、2032年の創業100周年に向けた挑戦として「ポジティブエイジカンパニー宣言」を発表した。原点である漢方理念に立ち返り、自己回復力に着目した研究・製品開発を通じ、全ての人にとって「明日が楽しみと思える毎日をつくりたい」という考えを示したもので、住宅販売はその取り組みの第一弾。今後は、九州各県から全国エリアへの展開を目指すとしている。

 

 

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