スタートアップエコシステムの状況、日本と諸外国を比較した調査報告 東南アジアとの連携意義も整理
JETROが、日本と諸外国のスタートアップエコシステムを比較した調査報告書「日本と東南アジア等諸外国とのスタートアップエコシステムの比較調査」を6月に公開した。日本と東南アジアを含む諸外国のスタートアップの状況や特徴を比較した上で、今後の東南アジアのスタートアップエコシステムとの連携意義や課題を整理している。調査対象国はシンガポール、インドネシア、ベトナム、マレーシア、タイ、韓国、フランス、米国、英国。本稿では調査報告書のうち、主要な情報をコンパクトに要約。
目次
ユニコーン企業数の比較、最多は米国で690
2025年のユニコーン企業数(企業評価額が10億ドル以上の非IPO企業)の比較では、米国が突出して多く690社、日本は6位で8社だった。
- 1位:米国(690)
- 2位:英国(55)
- 3位:フランス(31)
- 4位:シンガポール(15)
- 5位:韓国(13)
- 6位:日本(8)
- 7位:インドネシア(7)
- 8位:タイ(3)
- 9位:ベトナム(2)
- 10位:マレーシア(1)
ASEANの産業別スタートアップ数、最多は成熟フェーズの「ソフトウェア&データ」
2024年のASEANの産業別スタートアップ数で最多は「ソフトウェア&データ」で、ASEAN地域では成熟のフェーズにあるカテゴリー。一方で、主要な成長分野として浮上しているのは、「Eコマース」「ヘルステック」「フィンテック」「エドテック」で、従来の伝統的な産業にテクノロジーを統合する傾向が見られる。
- 1位:ソフトウェア&データ(51,581)
- 2位:Eコマース&リテール (17,520)
- 3位:ヘルステック(14,635)
- 4位:フィンテック (14,395)
- 5位:エドテック(12,041)
- 6位:ソーシャル&レジャー(11,667)
- 7位:ハードウェア&IoT(9,296)
- 8位:マーケティング&販売(9,243)
- 9位:フードテック(4,492)
- 10位:エネルギー&環境(4,313)
- 11位:運輸(4,068)
エコシステムの状況、シンガポールとマレーシアが強固
スタートアップの政府支援が最も充実しており強固なエコシステムが構築されているのは、シンガポールとマレーシア。シンガポールは、世界のスタートアップのハブになることを目指しており、約4,500のハイテク・スタートアップ、400のVC、240のアクセラレーター・インキュベーターを抱え、イノベーション創出のための強固なネットワークを形成している。
日本のエコシステムの特徴を分析
日本のスタートアップエコシステムの状況や特徴を分析した結果は以下。
- 日本のスタートアップは初値が「株価の天井」と言われているが、これは日本に限った傾向ではないことが調査で判明。上場後3年間における初値天井の割合は、最多は韓国で63%、次いで米国57%、日本は52%だった
- 日本は小規模IPOが多いと言われるが、日本だけの傾向ではないこともわかった。上場時時価総額の平均値を調べたところ、日本は9,000万米ドル、英国4,700万米ドル、シンガポール1億100万米ドル、フランス1億2,100万米ドルだった。ただし米国と比べると小規模で、米国は8億1,700万米ドルと突出して高かった。
- 日本のスタートアップのExitとしてのIPOとM&Aの特徴も分析した。日本・米国・英国・フランス・シンガポール・韓国の6カ国で比較したところ、日本のIPO件数は米国(1,182)、韓国(505)に次いで日本が415で3位だった。一方でM&Aは、件数・金額共に欧米諸国に劣っており、2010〜2024年のM&A件数トップ3は米国(12,978)、英国(1,355)、フランス(1,141)。日本は4位で519。続いて韓国は392件、シンガポールは240件で、全体的に欧米の方がM&Aは活況。
日本と東南アジアの連携意義
日本の大企業やスタートアップがASEAN諸国のスタートアップと連携する意義は3つ。
- シナジー効果によるイノベーション創出
製品・サービス、市場、顧客基盤など、双方の強みを活用し、イノベーションの創出を追求する。 - 共通ビジョンによる社会課題への挑戦
ASEAN諸国では社会インフラ整備が途上であり、社会課題の解決に向けた協働が可能 - 共創を通じたレジリエンス向上
感染症拡大、社会経済情勢の変化、地政学リスク等、不確実性への適応力を高めることはあらゆる企業に共通の課題。共創を通じた顧客基盤の拡大や収益源の多角化で、事業の持続的成長基盤を固めることが期待できる
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