「物価・賃金」への巨額投資、問われる実効性と次世代へのつけ
2026年度診療報酬改定は、「物価と賃金」という経済情勢に真正面から向き合う異例の内容となった。ポイントは以下の3点に集約される。
- 歴史的な「本体」引き上げ
医師や看護師の人件費などに充当する「本体」部分を3.09%引き上げ。デフレ下での微増改定から脱却し、インフレ経済に対応したコスト構造への転換を図った。 - 「病院」重点の配分シフト
物価高騰の影響を受けやすい高度医療機関(病院)へ配分を傾斜。一方で、利益率が相対的に高いとされる診療所への配分は抑え、医師偏在対策として過剰地域での新規開業に減算措置(ペナルティ)を設けるなど、開業医優遇の是正に踏み込んだ。 - 「賃上げ」の使途徹底
新設される賃上げ向けの加算が、確実に現場職員の給与明細に反映されるよう、実効性を確保する仕組みを構築する。
今回の改定は、医療機関の経営危機という一刻の猶予も許されない状況に対し、高市政権が積極財政的なアプローチで応えた格好だ。しかし、診療報酬の引き上げは、すなわち国民の保険料と税負担の増加を意味する。厚生労働省の試算では、今回の改定は’26年度予算案において、国費ベースで約2348億円の増額要因となる。高齢化で自然増する医療費に加え、インフレ対応コストが上乗せされた構造になっている。
特筆すべきは、26年度(プラス2.41%)と27年度(プラス3.77%)で段階的に改定率を変える「2年度平均」の手法を用いた点。これは将来の物価上昇を見越した措置だが、読みが外れた場合の調整弁として、27年度予算での再調整も示唆されている。良質な医療の確保にはコストがかかる。当たり前の事実を突きつけられた今回の改定。負担増に対する国民の納得を得るためには、医療機関側の経営透明化と、賃上げが確実に実施されたかどうかの厳格な検証が不可欠となる。
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