自然妊娠で子ども3人を望むなら、女性の「妊活開始」は何歳まで? データから読み解く、実現に向けた最適解
本稿は、たちばな台クリニックの秋谷進医師による連載記事です。プレコンセプションケアへの関心が高まる中、前回は、働く女性と出産意欲に関する研究報告を紹介しました。今回は、欲しい子どもの人数を起点に、適切な妊活開始年齢について考えていきます。
子だくさんの家庭はどう実現する?
「子どもがたくさんいると賑やかで楽しそうだな」「兄弟姉妹のいる家庭っていいな」――。漠然とそんな風に、子だくさんの家庭に憧れを抱いている方もいらっしゃるかもしれませんね。一方で、経済的なことやご自身の年齢を考えると、「現実的には難しいかも…」と感じてしまうのも無理はないことだと思います。国の調査でも、理想の子ども数を持たない理由として「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」を挙げる人が最も多く、経済的な負担が大きな壁となっている現実がうかがえます 。では、日本で子だくさんの家庭を築くという夢は、本当に叶えられないのでしょうか?いいえ、そんなことはありません。大切なのは、正しい知識を持って、早くから人生設計を考えることです。今回は、国内外の研究データを紐解きながら、子だくさんの家庭を実現するための具体的なヒントを一緒に考えていきましょう。
自然妊娠で子ども3人を望むなら「妊活開始」は23歳まで
まず、非常に重要なデータをご紹介します。オランダのエラスムス大学医療センターなどの研究チームが2015年に発表した、「望む人数の子どもを持つためには、何歳から妊活を始めるべきか」という研究です。この研究は、1万組のカップルを対象にしたコンピューターシミュレーションモデルを用いて、希望する子どもの人数と、その達成確率に応じた妊活開始の最終年齢を算出したものです 。結果は、体外受精(IVF)を利用するかどうかで大きく変わりました。
【体外受精(IVF)を利用する場合】
子ども3人を望むなら(達成確率90%):28歳までに開始
子ども2人を望むなら(達成確率90%):31歳までに開始
子ども1人を望むなら(達成確率90%):35歳までに開始
【自然妊娠のみを希望する場合】
子ども3人を望むなら(達成確率90%):23歳までに開始
子ども2人を望むなら(達成確率90%):27歳までに開始
子ども1人を望むなら(達成確率90%):32歳までに開始
この結果を見て、どう感じましたか? 「3人欲しいなら、自然妊娠の場合は23歳までに始めないと…」というのは、少し衝撃的かもしれませんよね。もちろん、これはあくまで統計的なデータであり、すべての人に当てはまるわけではありません。しかし、年齢とともに妊娠の確率が少しずつ変化していくのは事実です。この研究が教えてくれるのは、もし「子どもは3人欲しい」という希望があるのなら、20代前半という早い段階から、結婚や出産を含めたライフデザインをパートナーと話し合っておくことが、いかに重要かということです。
経済的な不安を乗り越えるための制度活用術
生物学的なタイムリミットと並んで、大きな壁となるのが経済的な不安ではないでしょうか。「令和7年版こども白書」によれば、理想だと思う人数だけ子どもを持たない理由のトップは、やはり「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」でした。しかし、日本には子育て世帯を支えるための様々な公的支援制度が用意されています。これらを賢く利用することで、経済的な負担を大きく軽減することが可能です。
例えば、児童手当ですよね。 2024年10月から、所得制限が撤廃され、支給期間が高校生年代まで延長されました。さらに、第3子以降は月額3万円が支給されるなど、多子世帯への支援が手厚くなっています。また、幼児教育・保育の無償化も見逃せません。 3歳から5歳までの子どもたちの幼稚園、保育所、認定こども園などの利用料が原則無償化されています 。住民税非課税世帯の場合は、0歳から2歳までの子どもたちも対象となります。最近では、高等教育の修学支援も充実してきました。例えば、 住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯の学生を対象に、大学などの授業料・入学金の減免と、給付型奨学金が支給されます。24年度からは、多子世帯や理工農系の学生など中間所得層への支援拡大も行われていますね。
他にも、急な用事やリフレッシュしたい時に子どもを預かってくれる「一時預かり事業」や、地域で子育ての助け合いを行う「ファミリー・サポート・センター事業」など、身近な場所で利用できる支援も充実してきています。これらの制度は、知っているか知らないかで、家計への影響が大きく変わってきます。お住まいの自治体のホームページを確認したり、こども家庭センター などの相談窓口を活用したりして、積極的に情報を集めてみましょう。
最強のチームは「夫婦」、共働き・共育てを当たり前に
筆者の家庭には子どもが4人います。子ども4人は似ているところもありますが、やはりそれぞれ違います。4人の「人」です。我が家では、「子どもはたくさんほしい。賑やかな家庭を築きたい」という妻の希望を第一に優先して、このような家庭形成になりました。親として子どもたちを支えていますが、逆に親が子どもたちに支えられていると思うこともあり、幸せを感じます。3人、4人と子どもを育てていく上で、夫婦の協力体制は不可欠です。もはや「手伝う」という感覚ではなく、共に主体的に育児・家事に取り組む「共育て」の意識が、子だくさん家庭の土台となります。実は、この「共育て」が、第2子以降の子どもの誕生にも大きく影響するというデータがあります。国の調査で、夫の休日の家事・育児時間が長い家庭ほど、第2子以降が生まれる割合が高い傾向が見られたのです 。夫が家事・育児に積極的に関わることが、妻の「もう一人産みたい」という気持ちを後押しするのかもしれませんね。
一方で、日本の現状を見ると、男性の育児休業取得率は上昇傾向にあるものの、まだ十分とは言えません。育休を取得しなかった理由としては、「収入を減らしたくなかったから」に次いで、「職場が育休を取得しづらい雰囲気だったから」という声も多く挙がっています。しかし、今、国をあげて子育てしやすい環境づくりが進められているのも事実です。「子だくさん家庭」を希望する方は、ぜひ色々な制度を上手に活用してみてはいかがでしょうか。
参考文献:
J Dik F Habbema,Marinus J C Eijkemans,Henri Leridon,et al.Realizing a desired family size: when should couples start?.Hum Reprod.2015 Sep;30(9):2215-21.オランダのエラスムス大学公衆衛生学部J Dik F Habbema氏らによる、生殖医学の専門雑誌 Human Reproduction に2015年9月に掲載された論文です。
【執筆】秋谷進
小児科医・児童精神科医・救命救急士。子育て経験に基づいたエッセイ『児童精神科医二十五年目のエッセイ』著者。他、書籍多数。朝日新聞先生コネクトなどで連載中。たちばな台クリニック小児科勤務。1973年東京都足立区生まれ、神奈川県横浜市育ち。1992年、桐蔭学園高等学校卒業。1999年、金沢医科大学卒。金沢医科大学研修医、国立小児病院小児神経科、獨協医科大学越谷病院小児科、児玉中央クリニック児童精神科、三愛会総合病院小児科、東京西徳洲会病院小児医療センターを経て現職。過去の記事一覧はこちら。

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