米国民の4割が個別化医療を「全く知らない」

近年、患者の免疫力を活性化させてがん細胞を攻撃する免疫療法や、遺伝的な特徴に合わせた治療を選択する「個別化医療」が驚くほど進展している。しかし、HealthDayと調査会社のHarris Pollが2,000人以上の成人を対象に実施したオンライン調査(実施期間11月15~19日)から、米国民の大半(71%)が個別化医療を十分に理解しておらず、約40%は「全く知らない」と回答したことが明らかになった。個別化医療の概念は分かっている人でも、ほぼ半数(49%)がこの治療法は副作用が少なく、効果が高いことを知らなかったという。

「プレシジョン・メディシン」とも呼ばれている個別化医療では、遺伝子プロファイリングなどの情報を活用して治療を個別化する。例えば、BRCA遺伝子変異による進行乳がんや進行卵巣がんの治療薬であるリムパーザ(一般名オラパリブ)は、特定の酵素の働きを阻害し、がん細胞を短時間に死滅させる作用がある。さらに先週、米食品医薬品局(FDA)が承認したVitrakvi(一般名larotrectinib、日本国内未承認)は、甲状腺がんや肺がん、頭頸部がんなど、がん種を問わず同じ遺伝的要因を持つがんの治療に使用できる。

このような目覚ましい進歩を遂げているにもかかわらず、今回の調査では、個別化医療のことを「全く知らない」とした回答者が5人中2人(41%)を占めていた。個別化医療を「良く知っている」と回答した人の割合はわずか5%だった。

この調査結果について、米国がん協会(ACS)のチーフ・メディカル・オフィサーであるLen Lichtenfeld氏は「情報に溢れた日常では、自分に関係のない情報には注意を払わないものだ」と話し、この結果に驚きはないとしている。一方、米国臨床腫瘍学会(ASCO)の元会長であるBruce Johnson氏は、自分が専門とする肺がん領域でも新薬の登場で患者の人生が劇的に変わったことを実感しており、「医師は個別化医療の啓発にもっと関わるべきだ」と話している。

一方、今回の調査では、個別化医療で用いられる薬剤は、化学療法で用いられる従来のものと比べて格段に高額であることを知らない人が半数以上(60%)いることも分かった。実際、免疫チェックポイント阻害薬のキートルーダ(一般名ペンブロリズマブ)の治療費は年間で約15万ドル(約1700万円)に上り、リムパーザで生存期間を1年延ばすには23万4,000ドル(約2600万円)以上が必要と推定される。Vitrakviの場合は30日分のカプセル代だけで3万2,800ドル(約370万円)となる。

ただ、多くの人が個別化医療に期待を抱いていることは確かなようだ。調査では、3人中2人以上(68%)が個別化医療の進歩を「喜ばしい」と回答した。個別化医療を知っていた人では、その割合は85%に上っていた。また、10人中6人以上が、個別化医療は「多くの人の命を救う」、「医療に革命をもたらす」と期待していた(それぞれ63%、62%)。Lichtenfeld氏は「個別化医療の進展で、より効果的な治療選択肢が広がったのは望ましいことだ」とした上で、「効果が期待される患者はごくわずかである可能性が高い薬剤もあることを、十分認識しておく必要がある」と強調している。(HealthDay News 2018年12月6日)Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.

 

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