2021年 女性の消費トレンド(2/6)
2019年 女性市場の消費トレンド
1.ダイバーシティ&インクルージョン
ダイバーシティとインクルージョンは、「多様な人たちの存在を認め、対等な仲間として受け入れる」という意味です。これまでの資本主義社会では「強い者」が「弱い者」を排除する・あるいは明確に区別することで「強い者」の立場を守り「強い者」が発展してきましたが、「人口減少・人手不足・経済成長の鈍化」などを背景に、社会全体の考えは変化し、特にここ1~2年で急速に「多様な人たちの存在を認め、対等な仲間として受け入れる」概念が広まっています。
では「多様な人」とはどういう人たちなのか?代表格がLGBTですが、他にも「認知症の方」「障がい者」なども該当します。認知症といえば、暗い・辛いネガティブイメージが強いですが、最近はポジティブに受け入れる流れが起きています。介護する女性の間で人気になっている「笑う介護。」というブログがありまして、介護の日々を笑いに変えてる点が支持され書籍化までされています。他にも認知症の母と娘の爆笑ドキュメンタリー「徘徊ママリン87歳の夏」という映画も、新しい認知症の描き方として話題になりました(以下動画)。
次に「障がい者」。障がい者というと、健常者サイドは「どのように接して良いか分からない」といった気持ちがあり、障がい者サイドは「変な目で見られるから隠したい」「社会に出るのが怖い」といった気持ちがあり双方にネガティブイメージがありました。しかし最近は双方間の心理的壁を超え、ともに自然体で社会活動やイベントを楽しんでいます(以下動画)。こちらはウブドべという医療福祉をテーマにしたイベントを行う団体が主催するクラブイベントで、健常者も障がい者も一緒に楽しんでいます。以前までは想像できない風景ではないでしょうか。
この2事例が特徴的なのは、かつてのネガティブイメージはなくなり、いたって自然に「多くの人が多様性を受け入れている」点です。
「高齢者」も多様な存在として受け入れられています。こちらは料理家タミ先生、作家の佐藤愛子さん、インスタが人気のキミちゃんで、皆さん90代。考え方、90代ならではの知恵、ユーモラスで元気なキャラクターなどが幅広い女性に支持され、「生き方が楽になった、勇気をもらえる」など、特に20~30代の若い女性たちが90代女性に励まされています。
これら事例から言えるのは「人と人のボーダレス化」が加速していることです。
企業は「多様な人たちを特別視するのではなく、ボーダレス化発想」が必要です。最近は男女を隔てないジェンダーレスコスメが人気を集めたり、ユニセックスデザインを採用する企業が増えたり、車いすの人が旅行を気軽に楽しめるユニバーサルツーリズムが広がりを見せるなどして、ボーダレス化が各業界で始まっています。
2.SDGs消費
SDGsとは「誰一人取り残さない、持続可能な社会の形成」という意味で、「社会課題に対し啓蒙活動だけでなく収益につながる経済活動として取り組むことで、ビジネスチャンスの創出・拡大につなげる」とされています。このSDGsが女性の消費に大きな影響をもたらし始めています。
そもそも女性の「買いたい!」にはさまざまな要因が影響しますが、特に近年、影響度が大きい消費基準があります。一つは「ヘルスコンシャス」。こちらは女性の新たな消費基準として昨年はじめにウーマンズより発表させて頂きましたが、今年はSDGsを加えました。
1つ目の消費基準「ヘルスコンシャス」とは、女性が購買決定を行うとき、無意識に「ヘルシーかどうか?」を基準にしていることです。せっかく旅行するなら、ただ温泉に入って食事して宿泊するだけよりもヘルスツーリズムを提供する旅館を選ぶ。女子会をするならヘルシーな料理を提供するお店を選ぶ。働くなら健康経営やワークライフバランスを大切にしている企業を選ぶ、といったことです。
では、「SDGs」における消費基準とは具体的にはどのようなものでしょう?例を見てみましょう。
- 動物実験をしない化粧品メーカーか?
- フードロス対策に取り組む食品スーパーか?
- フェアトレードで事業推進している企業か?
- 女性や弱者にやさしい企業か?
このような視点が消費の基準になります。以前からこのような考えを持つ女性はいましたが、「限られた人の間に広まる、ちょっと特別な領域」でした。それが「多くの人にとってスタンダード」になりつつあるのが以前までとの違いです。急速に世界的注目度が高まっているプラスチック問題も、多くの生活者に「SDGs」の概念を広めるきっかけにもなっているように感じます。
「お金に関する調査(SMBCコンシューマーファイナンス)」で「多少高くても、社会のためになる活動をする企業の商品を購入したい」に「そう思う」と回答したのは約半数でした。このような考えに基づいた消費は、若年層ほど傾向が強かったのですが、今後は上の世代にも急速に波及すると考えられます。
女性に人気の化粧品メーカー・ラッシュは、「お肌も環境も喜ぶパッケージフリーのスキンアイテム」というキャッチコピーのもと、容器を必要としない固形型シャンプーや固形型クレンジングの提供を開始しています。他にもさまざまな企業が次のように発表しています。
- H&M:レジ袋を廃止
- イオン:ペットボトルからできた再生ポリエステルを使用したカジュアルパンツの販売を開始
- 楽天:「サステナブルな買い物を当たり前に」をモットーに掲げる通販サイト「アースモール」をオープン
- ユニクロ:脱・毛皮へ向けた取り組みとしてヤギ素材の使用中止を発表
- グッチやヴェルサーチ:毛皮不使用
「持続可能な社会づくりと買い物」という概念がやがて「スタンダード」になることは必至です。SDGsを無視してしまうと「社会にやさしくない」という理由で女性客を遠ざけてしまう可能性は否定できません。
実際に女性消費者にこの流れを聞いてみると、「時代の流れ。いいことだと思いますよ」「大々的なことは難しいけど、身近なことからやってみようという意識は芽生えますよね」「未来を考えれば、取り組むのは当然」などポジティブコメントが返ってきます。持続可能な社会づくりに向けて今後企業はSDGsを意識した商品開発・プロモーションに切り替える必要があります。結果的には女性消費者に選ばれる一つの要素になっていきます。似た概念に「エシカル消費」がありますがSDGs消費はエシカル消費よりも、より広義で包括的なのが特徴です。
3.ヒト消費
モノ消費、コト消費の次の流れとして、ヒトとのリアルな出会いや絆、交流を求める女性が増えています。なぜヒトニーズが高まっているのか?主に3つの要因が挙げられます。
- 2030年には約半数が単身者になるとの予測がある通り今日本では単身社会が進んでおり「一人身は気楽である一方で、寂しさやしんどさ」を感じる女性が増えていること。実際に昔ながらの横丁やバーに通う女性は意外にも多くいます。
- デジタル化による無機質社会。無人店舗や自宅にいながら受けられる各種AIサービス、VRによるコミュニティ形成、ロボット配達などは、利便性向上や社会課題解決につながる一方で、生活者に「ヒトとのリアルな交流の場」を奪う要因にもなります。
- 利己消費の限界。物にあふれ、すでに多くのものを持つ私たちにとって、自分の得だけを考えた消費には関心が向きづらくなっています。そこで関心が高まっているのがヒトを基点にした各種商品・サービスです。
例えばメルカリのライブ販売。販売したい個人が生中継で商品をPRし、視聴者からの値下げ要求や質問にその場で回答や交渉をします。人気販売者だと一度の視聴者は数百人。「家庭教師と生徒のマッチング」「料理をふるまいたい人と、自宅で料理を作ってほしい人をつなげるマッチング」「恋活・婚活マッチング」「タクシーに乗りたい人と車を提供したい人のマッチング」など人と人をつなげるサービスが次々に登場しています。
クラウドファンディングに関しても「投資したことによるリターン目的」よりは「その人を応援したい」といった「純粋な他者への応援」として成り立っているケースが見受けられます。他にも地域のウォーキング大会は特にシニア層に人気ですし、さまざまな名目のオフ会も全国各地で開催されています。ビールメーカーのヤッホーブルーイングは「ファンとスタッフで創り上げるファンイベント」を定期的に開催してまして、大変な人気ぶりです。Twitterなどデジタルのみで交流を図るメーカーも多い中、同社のイベントにはリアルな交流を求めて多くのファンが集結します。今年は北軽井沢で開催予定のようです。
ヒトとの距離を縮める商品・サービス・プロモーションはもともとコミュニケーションを大事にする女性には喜ばれやすいので、「ヒト消費」の視点で企画開発してみてはいかがでしょうか。キーワードは「愛情」「情緒的」「所属」「承認」といった「人間らしさ」です。デジタルが加速度的に進化することで無機質な空気が広がるからこそ「人とのリアルなつながり」は今まで以上に強く、貴重なものになっていくでしょう。