2021年 女性の消費トレンド(3/6)

4.幸せの新基準は家時間

働き方改革や、あらゆる生活行動がAIによりスマートライフ化されること、時間短縮型の各種サービスが各社から次々に登場している市場トレンドなどにより、今後多くの生活者が時間を創出できるようになります。最も「時間貧乏」である働くママですら、近い将来、時間持ちになるはずです。

メイク、日々の肌ケア、ダイエット、服選び、家事育児など一日のタスクが男性より多い女性たちにとって、「時間の余裕」ができることによる生活行動・消費行動への影響は大きく、女性たちは新たにできた時間へ関心が向き始めます。一昔前であれば、時間ができたら外出するのが一般的でしたが、今は家にいながらできることが増えているので、「時間ができた=家の中で何しよう?」と、発想の軸が ” 家 ” になります。そこで今急速にニーズが拡大しているのが家時間を充実させる商品・サービスです。

例えば、次のようなものです。

  • エステと同等の効果を期待できる高級美容家電
  • かつては富裕層の象徴でもあった家事代行サービスやシェフの主張料理サービス
  • 自宅にいながらAIがフィットネス指導をしてくれるアプリ
  • AIが好みを判定して定期的に服を届けてくれるサービス

かつては「富裕層のもの」だったり「外に行かないと体験・利用できない高品質の商品サービス」が、今は、家の中で手軽に利用してニーズを満たせるようになりました。もはや何かを体験したり利用するために外に出る必要性はなくなっています。LIXIL住宅研究所が昨年発表した「人生100歳時代の未来住宅」は、あえて自宅内に段差や懸垂ができる階段を設け、家中での時間を「足腰を鍛える時間」として提案しています。二世帯住宅と言えばこれまではバリアフリーが一般的だったので、とても画期的なコンセプトです。

LIXLIの人生100歳時代の未来住宅

出典:LIXIL住宅研究所

家時間を充実させる商品サービスは、高齢者や、過疎地に住む人、介護・育児・家事に追われる忙しい女性たちのQOL向上につながります。3事例をご紹介します。

  • ある30代女性は、ゾゾタウンを利用する理由を次のように言っています。「欲しい服が売ってる店舗まで往復する電車賃は5,000円。そのお金があるなら服を1着買える。ゾゾタウンを利用する方がよっぽどお得です。移動の時間もお金もコスパ悪いですよね」
  • ある40代女性は「毎日忙しくて子どもの相手ができないことに罪悪感があった。でも、先日の子どもの誕生日では、出張シェフを利用し子どもが好きなパーティ料理を自宅で作ってもらった。子どもはすごく喜んでくれたし、私も罪悪感から解放されたし、いい時間でした」。
  • 化粧品ブランドのコフレドールは口紅の色をweb上でワンクリックでお試しできるサービスを開始しました。これによりわざわざ店舗にいかずとも、興味ある口紅を自宅にいながら簡単に試し塗りができます。足腰が弱いため移動ができない過疎地に住む80代女性も、パソコン上で似合う口紅を複数試し、購入するようになるかもしれません。メイクには認知機能の低下を予防したり、笑顔や言葉数を増やすなどの効果があると言われており、このようなサービスが女性にもたらす影響は企業が想定している以上のものがありそうです。

このように家時間の充実は多くの女性に幸せをもたらすため、幸せの新基準として今後急激な需要拡大が見込まれます。働く女性世代に限って言及するなら、働き方改革で自宅で仕事をする人が増えてますので、家で過ごす時間はさらに増えていきます。「いかに家から外に出させないか?」で発想すると、商品・サービスの新しい開発コンセプトが見えてきそうです。

5.役割・居場所の複数化

これまでは、学生なら「学生だけの顔」。30代働くママなら「ママ・妻・仕事人の顔」。70代シニアなら「妻の顔」。というのが一般的でしたが、最近は複数の顔や居場所を持つ女性が増えています。学生なら「学生の顔と、人気ティックトッカーの顔」。ママなら「ママ、妻、仕事人の顔に加え、趣味や副業を楽しむ顔」。70代シニアなら「妻の顔に加え、地域貢献活動に取り組む顔」。先日、内閣府が公表した「平成30年度 エイジレス・ライフ実践例」によると、74歳の女性は介護施設などに訪問して脳トレ体操を、78歳の女性は児童館で茶道教室を、74歳の女性は健康テーマ型のサロン活動を行うなどして地域に貢献しています。

このように全世代の女性の間で、人生を楽しむべく「自己実現・挑戦」が進んでいます。今までも女性の自己実現は注目されてきましたが、従来と何が違うのかというと、今までは余暇時間やサブ的に自己実現の行動が行われていたのが、近年は自己実現や挑戦をサブではなくメインで行うようになった点です。一方で「私は自己実現や挑戦ができないから、自己実現したい人を応援したい」女性もいて、投げ銭やクラウドファンディング、応援消費という形で実現しています。

企業は「ターゲット女性のうち、どの顔にアプローチするか?」という視点を持つことも今後必要になってきます。企業が応援サイドに回ったり、あるいは応援してもらうのも、戦略の一つではないでしょうか。

6.オタク女子の市場パワー拡大

特に若者世代は「お金を使わない」と近年言われてますが、年々市場パワーを拡大しているオタク女子に関してはあてはまらず、自分がハマってることにとことんお金を使います。オタクという言葉のカジュアル化が進んだこともあり、女性のオタク市場は細分化しています。例えば、次のようなオタク女性がいます。

  • コスメおたく
  • 歴史オタク
  • 美容整形オタク
  • コスプレオタク
  • DIYオタク
  • 100円ショップオタク
  • 調味料オタク

彼女たちは年間数10万円〜100万円以上を惜しみなく費やします。彼女たちは必ずしも高収入の女性というわけではなく、一般的収入の普通の女性たちです。

彼女たちの平均年収を仮に240万円とすると、企業がターゲット策定する際、彼女たちは「中間層」に分類されます。しかし、好きなモノコトにお金を集中して使うという視点で見ると、「中間層ではあるが、年間で好きなモノコトに数10万〜100万円以上を使う富裕層」と見ることができます。彼女たちの消費パワーは富裕層に匹敵するケースもあります。オタク女子についてまとめた「浪費図鑑」という書籍も登場し、オタク女子は今注目の的です。

シン・浪費図鑑

オタク女子の市場パワーが拡大している背景には、以下が挙げられます。

  • 価値観の多様化が進んでいる
  • 自分の好きを優先する女性が増えている
  • 働く女性が増えたことで好きなモノ・コトにお金を使いやすい環境になった
  • 「多様な人を認め、受け入れる」という社会全体の流れ

オタク女子は、企業のマーケターよりもその分野に詳しいケースは珍しくなく、素人の玄人化が進んでいます。企業サイドは「オタク市場は小さいから魅力的ではない」と感じるかもしれませんが、この節約時代に積極的に消費をしてくれる彼女たちの存在は貴重です。彼女たちに的を絞る戦略は意義が大きいのでは、と感じます。

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