2021年 女性の消費トレンド(5/6)

把握しておきたい女性市場の課題

次に把握しておきたい女性市場の課題を6つお伝えします。

1.何をテックにして何をリアルとして残すか?

無人店舗、キャッシュレス決済、VR体験はできるが購入はできない店舗、AIによる自動対応、ロボットによる接客などあらゆるシーンで驚くスピードでデジタル化が進んでいますが、現役世代である私たちにとっても、この進化を理解し、ついていくのは結構しんどかったりします。正直、「そこまでホントに必要?」と思うこともあります。日本のボリュームゾーンであり且つ消費の中心である中高年層、特に高齢層はもっとそれを強く感じており、ある意味では生きづらい社会にもなっています。多くのビジネス誌やメディアが取り上げるから「我が社も全てデジタルにしなくては!」とつい焦ってしまい、テクノロジーファディズムに陥っている可能性も否定できません。東京などの都市部基準で考えるのではなく、日本全体あるいは全世代を俯瞰してみると、今のところ、実際は最新テクノロジーを使いこなす層は少ないのが現状で「進化が早すぎて追いついていくのは疲れる。今の生活で十分便利」「デジタルはややこしてく嫌い!」という女性は多く存在します。

とはいえ、デジタル技術が人口減少・人手不足など様々な社会課題を解決してくれるのも確かです。10~20代女性は除きますが、女性は特に男性と比較してデジタル利用率は非常に低く、実際に、ウェアラブル端末の利用率、スマートスピーカーの利用率、アプリでの健康管理利用意向などに関する各種調査結果では、非常に低い数字がみられます。反対に意外にもニーズが高いのが、アナログ商品だったり、人による直接的なサポートや接客です。「何もかもデジタルに切り替える必要はあるのか?」「何をテックに切り替えて、何をリアルとして残すか?」よく検討する必要があります。

2.シェアではなく、購入・保有する価値をどう提案するか?

シェアリングやサブスクリプションが広がりを見せる中、消費者の間では「保有する意味・価値」が急速に薄らぎ始めています。今は高級バックも高級車もシェアするほうがよっぽどコスパは良いし、安い価格で楽しめるし、シェアしてる方が環境に良いし、シンプルライフができるし、維持管理費もかからないし、所有し続ける経済的リスクもなくいいことづくめです。「シェア」ではなくあえて「購入・保有する価値」は何か?一歩踏み込んで提案する必要があります。

3.中年女性、高齢女性へのシフトをどう進めるか?

私が普段から不思議に思うことがあります。ここ2~3年、このような講演の場でお伝えさせて頂いているのですが、日本のボリュームゾーンは中高年層であることは誰もが知っているはずが、多くの企業がいまだに、CM、商品開発、テレビ番組、雑誌コンテンツ、飲食店メニュー、話題を仕掛けるイベント、デジタルを駆使した店舗など、あらゆることがいまだに若い世代を基準にしていることです。もちろん、シニア向け商品やサービスは以前と比べて増えてきてはいますがそれでも若者中心である印象を否めません。最も分かりやすい例はテレビ番組です。若い世代はテレビではなくネットフリックスやユーチューブを視聴し、一方で高齢者はテレビ視聴時間が長いことは、テレビ業界にいない人ですら知っていることですが、なぜいまだに若い世代向けのテレビ番組が多いのでしょう。それでいて「視聴率が低い」と嘆いているのですから不思議でなりません。ネットフリックスやユーチューブではなく、テレビをよく見る高齢者を対象とした番組を作る方がよっぽど理にかなってるのではないでしょうか。

日本の消費は頭打ち、と海外進出に目を向けたり、訪日外国人を対象にする戦略に切り替える企業が増えていますが、その前に、まずは意外にも未開拓地である国内の中高年層に戦略をシフトするのも大事ではないでしょうか。なぜなら、中高年層が楽しめるモノ・コトは、若者世代と比較して圧倒的に少なく、多くの中高年女性がそこに不満を抱いているからです。ある60代女性にインタビューしたとき、彼女はこんなことを言っていました。「世の中のいろんなことが若い人向け。年を重ねた私たちが楽しめることや欲しいと思う物ってとても少ない。高齢社会と言われている割には、高齢女性にやさしくない社会ですよね。」と嘆いていました。中高年層は、若い世代と比較するとお金は持ってますし、シェアより所有を好む傾向があります。ビジネスチャンスは十分にあります。

4.「飽き」との闘いをどう克服するか?

「売れる期間」が、極端に短くなっています。理由はモノ・コト・情報が膨大にあふれかえっている今の市場では、消費者の「飽き」が非常に早いスピードでやってくるからです。分かりやすい例がスーパーフードです。Aというスーパーフードが流行っていたと思ったら、数カ月後にはもう次の新スーパーフードが女性の関心を集める。こういったことがあらゆる市場で起きています。消費者を飽きさせず、長期にわたり買って頂くためにはどうすればいいのか?早急に対策したい課題です。

5.二極化への対応をどう進めるか?

働く女性の増加や、お金を稼ぐ環境が整ってきていることを背景に、収入を増やす女性が増えていることは本日お伝えした通りで、今後、富裕層とそうではない層の二極化はさらに進んでいきます。収入による二極化だけでなく、デジタルリテラシーの二極化も今後顕著になっていくでしょう。全体的に女性のデジタルリテラシーやデジタルニーズは男性よりも低いですが、それでもデジタルリテラシーが高い女性の方が消費や社会生活の面で得をすることは増えていくはずです。デジタル派女性とデジタル苦手派女性の二極化が進み、所得の二極化も進む。企業は進む二極化にどのように対応するか?が求められます。

6.可処分時間をどう獲得するか?

本日お伝えした通り、今後多くの女性が時間を創出できるようになります。また、残り時間が少ない高齢者にとっても最も貴重なのが時間です。消費者の間で「時間の価値」が高まる中、各社こぞって女性消費者の「可処分所得」ではなく「可処分時間」獲得に動き出し始めています。限られた時間を1分でも多く自社に割いてもらうためにはどうすれば良いのか?要検討事項です。

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