訪問美容の開業前に知るべき課題 ホットペッパービューティーアカデミー
美容業界の調査・研究を行うリクルートライフスタイル(東京・千代田)運営のホットペッパービューティーアカデミーは2月16日(火)、NPO法人全国福祉理美容師養成協会(愛知・日進)と、ヘアサロンのオーナーや店長限定の勉強会イベント「はじめての訪問美容」を共催した。会場には約100サロンのオーナーや店長が集まった。
参加者は、「訪問美容の現状と可能性」、「訪問美容の現場の知識や施術の流れ」を学んだ後に、実際にサロン経営に訪問美容を取り入れることをイメージしながら、新たなビジョンやゴール、サービス内容の考案に取り組んだ。
目次
要介護者や要介護支援者対象の訪問美容は期待市場
2035年には「3人に1人が65歳以上」の時代に突入するという、年々高齢化率が上昇する日本において、要介護者や要介護支援者を対象にした訪問美容サービスは今後さらに需要が高まると考えられる。しかし、サービス利用者にとっても事業者にとっても情報が少なく、その実態がいまいち掴めていないのが実情だ。訪問美容事業を行っている事業者がまだまだ少ないからだ。
全国に約20万件ある理美容室のうち、兼業で訪問理美容を行っているのは約300サロン、美容室を持たずに専業で訪問美容事業を行っている、あるいは介護事業のサービスの一環として行っているのは約300ほど(ホットペッパービューティーアカデミー調べ)。同アカデミーによると、現在の市場規模は737.5億。この数字は、超高齢社会を迎えた日本においてさらに伸びていくと予想される。
しかし、情報も成功事例も多くはないため、事業者は訪問美容に従事するスタッフの確保やビジネスの可能性も気になるところ。そこで、本イベントでは、訪問美容の可能性を見出す要素を幾つか示した。
広がる高齢者マーケット、訪問美容のニーズは高まる見込み
高齢化率の上昇に伴い、障害のある高齢者の数も増えていくと予想され、本人またはその家族の訪問美容のニーズは今後も高まる。訪問美容の市場規模は年々拡大していくと予想できる。
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新しいキャリアパスの創出で、女性の働き手が増える
復職後の新しい形のキャリアパスとして訪問美容に従事することを考える人が増えている。ホットペッパービューティーアカデミーによると、結婚や出産などの理由を含め、仕事を辞めた美容師のうち3割が「復職するなら働きたいヘアサロン」として、「訪問美容をしているヘアサロン」を挙げていることがわかった。理由としては、「勤務時間のコントロールができる」「いきなり現場(店舗)に戻るのは抵抗がある」「訪問美容から復職して、再度美容師として徐々にキャリアを積んでいきたい」など。近年、働く女性の復職の難しさが課題として挙げられているが、訪問美容という働き方は、その解決策の一つとして、多くの女性美容師の働き方を変える可能性がある。
離職率の高いヘアサロン業界で、スタッフの離職防止になる
訪問美容で新たにやりがいを見つけられたり、また(事業者によるが)働き方が自由なので、美容師が働きやすい環境ができる。理美容師は店舗内で業務を行うのが一般的だが、訪問美容という働き方は出張型になるので、時間の拘束、勤務場所の拘束が緩くなる。その点を評価して働きがいを感じる理美容師は増えるかもしれない。中には、「
地域密着サロンの実現 市場トレンドは1:1のサービス
訪問美容サービスを提供することで、地域住民の「困った」や「ニーズ」に応えられるようになるので、より地域に密着したサロンとして認知度を上げることができる。例えば、美容室に来店した娘が、「母が寝たきりになったからヘアカットをどうしようか困っている」と美容師に相談する。そんなお客様の「困った」にも対応できるのが訪問美容だ。訪問美容サービスを求めているのは本人よりもその家族である場合も多く、そのような人たちにとって、高齢の家族のことまで見てくれるサロンの存在は大きい。
コンビニ業界やスーパーマーケットでも、訪問や1:1の個別サービス導入ケースが増えている。そのような個別サービスは、手間暇がかかり効率という点やマネジメントの部分で様々な課題があるものの、顧客満足度は非常に高く喜ばれている。ヘアサロン業界もこれからは1:1の地域密着型の流れが強化されていくのではないだろうか。
お客様との一生涯のお付き合い
高齢で病気や障害を理由にそれまで通っていたサロンに行けなくなったとしても、訪問美容のサービスがあれば、引き続き自宅や施設でも同等の理美容サービスを受けられる。お客様と生涯に渡りお付き合いできるのは、サロンにとっても顧客にとっても望ましいことだ。このように見てみると、訪問美容を導入することで得られるメリットは大きく、今後のマーケットの拡大という点から考えても可能性は十分に大きいと考えれる。ただし、訪問美容ならではのぶつかる壁もある。下記課題はクリアにしていく必要がある。
- 訪問美容の認知度を上げて、サービスを一般化するための啓蒙活動(例:業界全体での情報発信やイベント開催など)
- 各自治体により、訪問美容に関する条例はまだまだ曖昧。地域により異なるので要確認
- 持続性あるビジネスモデルの構築と、継続的なマーケティング活動
訪問美容開始のためには事前のマーケティング設計が重要
本イベント後半では、「どう やって訪問美容サービスを美容室に導入するか?」というワークショップも行われた。言うまでもなく、訪問美容を開始するためには事前にしっかりとマーケ ティング戦略を設計する必要がある。訪問美容のために準備するもの、訪問美容担当者、料金設定、届け出関連の確認、オペレーション、提供日など事前に決めなければいけないことはたくさんある。
訪問美容をスタートするためにクリアすべき課題は?
弊社ウーマンズにも訪問美容事業に関するご相談を何度か頂いたものの、結局は訪問美容事業ではなく他のヘルスケアビジネスで進めていくという決断をした企業が多い。一番の理由は上記3番目の「持続性あるビジネスモデル構築」の部分で、様々な課題が明らかになってくるためだ。そこで、訪問美容事業の普及を行うリクルートライフスタイルのビューティ&ヘルスケア統括本部執行役員の柏村美生氏に、課題解決策についてお伺いした。対談内容はこちら「訪問美容開業における課題と対策方法」の対談内容はこちら!