エビデンスベースとは?科学的根拠の重要性と事例(2/3)
政治・教育のエビデンスベースの取り組み
政治におけるエビデンスベース
エビデンスベースの取り組みは政治でも進展している。「Evidence-Based Policy Making(EBPM)」と呼ばれるもので、「根拠に基づいた政策立案」と訳される。
2018年12月7日に閣議決定された「平成31年度予算編成の基本方針」では、「各省庁は全ての歳出分野において行政事業レビューを徹底的に実施するとともに、証拠に基づく政策立案「Evidence-Based Policy Making(EBPM)」を推進し、予算の質の向上と効果の検証に取り組む」とされている。これを踏まえ、内閣府本府では2019年度から、新規の予算要求において次のような取り組みを実施している。
- ロジックモデル(以下図参照)の作成
- ロジックモデルへのアウトカム指標の記載
- 推進室によるロジックモデルの公表
- 定量的なアウトカム指標が困難な場合の代替指標と理由の記載
- 各部局による検証
- 各部局による推進チームへの検証報告、その公開
- 事業実施の見直しや継続予算要求は検証結果を踏まえる
EBPMには、政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化した上で合理的根拠(エビデンス)に基づくものにしていくという考え方が込められている。政策効果の測定に重要な関連を持つ情報や統計等のデータを活用したEBPMの推進は、政策の有効性を高め、国民の行政への信頼確保に資するものと考えられている。
教育におけるエビデンスベース
教育現場でもエビデンスベースが進んでいる。「Evidence-Baced Education(EBE)」といわれ、科学的根拠に基づいた教育政策のことを指す。教育現場では教育者の経験に依拠した根拠のない教育が行われることがあるとの指摘もされる中で、データを収集して分析し、根拠に基づいて得た知見から教育を実践することを目指す。多忙な教育現場でエビデンスベースを実現するために、教育者と研究者が協同して進めるなど、組織的な取り組みの必要性が高まっている。
EBEの研究者として著名な中室牧子氏は、欧米の教育におけるEBEの状況を次のように語っている。
アメリカでは、教育政策では、実験ベースのエビデンスが示される必要があるという考えが広く浸透しており、無数の社会実験が実施されています。アメリカでは現代の教育政策の法律的支柱といわれるNo Child Left Behind法(落ちこぼれ防止法)の中で、「教育に科学的根拠のある研究」をという言葉が100回以上も繰り返し用いられています(引用:慶應義塾大学中室牧子研究室)
また、日本のEBEの課題についてもこう話す。
日本の教育政策には、事後的に定量的な政策評価が実施されなかったがために、子ども手当やゆとり教育などのように流行が廃れるかのように終了し、しかもその政策にどのような効果があったのか(あるいはなかったのか)、いまだにはっきりしないものがたくさんあります。私は経済学の「効果測定」(Impact Evaluation)と呼ばれる手法を用いて、教育政策の効果測定を実施することに関心を持っており、多くの自治体や学校と共同研究を実施しています。「教育に科学的根拠を」―これは教育にかける1円のお金を生きたお金にする試みです。少子化が進み、日本の財政状況が悪化するなかでは大変重要な考え方です。(引用:慶應義塾大学中室牧子研究室)
ようやくアクティブラーニングの効果がエビデンスベースドで測られる地平に到達した。認知スキルだけでなく社会情動的スキルまで射程に入れていて◎ 教師も「データを読む力」が試される時代
|「世界水準の事例」OECD局長 埼玉県学力検査を絶賛 https://t.co/kr2dMtVSPV
— knockout_ (@knockout_) 2019年6月5日