女性より男性更年期の方がタブー? 更年期と仕事の両立問題、性差が明らかに
NHKは今月4日、「更年期と仕事に関する調査2021」を公表した。専門機関と共同で実施したもので、更年期症状を理由にした雇用劣化や、家計・治療費といったお金の問題、職場・国に求める支援ニーズを明らかにした。
更年期症状と仕事の両立問題に焦点を当てた大規模調査である点はもちろんのこと、女性を対象にした更年期調査が一般的な中で男女両方を対象にした調査は珍しく、症状による雇用劣化の性差、治療費用の金額における性差、支援ニーズの性差を明らかにした点が興味深い。これまで関心が寄せられてこなかった男性の更年期の実態も理解できる貴重な調査結果だ。
目次
性差で見る調査結果
調査は全国の40〜50代の男女、約45,000人を対象に実施。更年期症状の経験有無を聞いた後、経験者を対象に医療機関の受診率・診断率や雇用劣化について質問した。主なファインディングスを見ていこう。
更年期症状の経験・受診・診断率
<更年期症状の経験率>
現在または3年以内に更年期症状を経験した人の割合は総じて女性の方が高く、また、経験率が高い年齢階級にも性差が見られた。経験率が最も高いのは、女性は50〜54歳、男性は55〜59歳。
女性(%) | 男性(%) | |
40〜44歳 | 14.6 | 4.9 |
45〜49歳 | 34.9 | 7.6 |
50〜54歳 | 52.3 | 9.9 |
55〜59歳 | 42.8 | 11.7 |
<更年期症状の受診率>
現在または3年以内に更年期症状があった人のうち医療機関を受診したのは、男女ともに全年齢階級において2〜3割ほど。各所が公表している調査結果と同様に、やはり受診行動が起きない方がマジョリティのようだ。
女性(%) | 男性(%) | |
40〜44歳 | 30.0 | 32.5 |
45〜49歳 | 32.4 | 24.9 |
50〜54歳 | 31.7 | 20.3 |
55〜59歳 | 29.8 | 18.6 |
<更年期の診断率>
現在または3年以内に更年期症状があった人のうち医療機関で「更年期障害」と診断された割合は、女性は年齢とともに高くなる一方で、男性は低下。
女性(%) | 男性(%) | |
40〜44歳 | 11.7 | 20.3 |
45〜49歳 | 16.8 | 11.4 |
50〜54歳 | 20.3 | 10.5 |
55〜59歳 | 21.8 | 6.7 |
<更年期症状によって負担に思っていること>
更年期症状によって負担に思っていることトップ3は、男女ともに以下。
- 身体的な不調(女性63.4%,男性60.2%)
- 精神的な落ち込みや不調(女性52.0%,男性:50.5%)
- 仕事との両立(女性33.8%,男性38.2%)
更年期症状による雇用劣化
約3,000万人いる働く女性のうち更年期世代(45〜55歳)は約4割を占める今、職場における更年期問題は無視できない状況にあり、NHKの取材によると、更年期障害が原因で仕事を辞めた女性は46万人、男性11万人。更年期離職を含めて仕事に何らかのマイナスの影響があった女性は75万人、男性29万(日本女子大学,周燕飛教授推計)。職場の更年期対策は急務だ。では、具体的にはどのような雇用劣化があるのか?その実態についても調査をしており、以下のファインディングスを得られた。
- 更年期症状が原因で雇用劣化が起きたと認識した人の割合は男性の方が高く、女性15.3%、男性20.5%
- 具体的にはどのような雇用劣化があったのか?種類別に見ると、女性の最多は「仕事を辞めた(9.4%)」で、男性の最多は「降格・昇進辞退(9.3%)」
- 更年期症状により労働時間と収入が減少した人の割合は男性の方が高い
更年期症状の治療にかける金額
更年期症状に悩んでいても医療機関を受診したりセルフケアをせずに放置している人が多いことは各種調査でも明らかにされているが、性差を見るとどんな特徴が見られるのか?更年期症状に対して「治療費をかけない」という人の割合は男女ともに3割だが、治療費をかける人については性差が見られた。
- 高額の治療費用(20万円以上)をかけるのは男性に多く、女性6.9%、男性15.6%
- 高額の治療費をかけるのは男性だが、少額であれば女性の方が治療費をかける割合は高い。「10万円未満」の治療費をかけた人の割合は、女性53%、男性37%
職場に求める支援 〜男性更年期はタブー?〜
職場に求める支援ニーズにも性差が見られ、女性は「同じ症状に悩む人と話をしたい」「相談したい」と考える傾向が男性より強く、一方で男性は「他人に知られたくない」「隠したい」「支援は不要」と考える傾向が強いことが明らかに。まだまだ更年期はオープンに話しづらい空気があるが、その傾向が強いのは実は男性の更年期の方なのかもしれない。以下は、職場に求める支援ニーズに関する主なファインディングス。
- 男女ともに職場に求める支援策の最多は「職場の誰もが更年期症状や対処法について理解できる研修」で、女性38.1%、男性39.9%
- 更年期症状に関するコミュニケーションニーズがあるのは女性で、「同じ更年期症状を経験している人同士で話したり、相談できる環境」を職場に求める割合は女性31%、男性19%
- 周囲に知られたくないと考えるのは男性に多く、「職場の人に知られたくない・自分ひとりの問題にしておきたい」と回答した割合は女性9.5%、男性16.8%
- 職場・国に求める支援制度において高順位にランクインしたのは、女性「休暇を使いやすい環境(43.6%)」、男性「治療にあたっての経済的支援(34.3%)」
調査項目
調査結果の詳細はレポートから閲覧可。年齢階級別・更年期症状の深刻さ別にも集計されているので、参考になるポイントが多いはず。性差の視点で見ることで、より女性の悩みやニーズを読み取りやすくなる。全調査項目は以下。
<更年期症状と仕事の変化>
- 更年期症状の経験率
- 更年期症状の受診率と診断率
- 現在の就業状態:有業率、正社員比率と管理職比率
- 更年期症状前後の就業状態の比較
- 症状が出ている(た)時期の労働時間と収入の変化
- 更年期症状が原因で、雇用劣化が起きたと認めた者の割合
- 雇用劣化が起きた時の業務内容と雇用環境
- 雇用劣化が起きた理由
<更年期症状が家計におよぼす影響>
- 更年期症状の治療や症状緩和のための治療費用の総額
- 更年期症状による収入低下や治療費用の捻出で家計に起きた変化
<望まれる支援>
- 更年期症状によって負担に思っているもの
- 症状が出ている(た)時期に、職場で支援を受けた割合
- 職場での取り扱い方に関する希望
- 職場や国の支援制度に関する希望
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