フェムテック市場どうなる?国内外の最新動向・課題・未来予測
とどまる所を知らない国内のフェムテックブーム。ベンチャーが牽引してきた市場だが今年は大手の参入も目立ち、フェムテック関連のリリースを目にする機会が随分と増えた。生活者向けの情報も充実化し、テレビ番組、SNS、オンラインイベント、女性誌にと、もはやお祭り状態の活況ぶりだ。ウーマンズラボ編集部にも、フェムテックに関する情報リクエストが頻繁に届いている。今回はその中でも特にリクエストの多い3つの質問に回答したい。「国内外の動向」「現在の課題」「今後の市場可能性」について。
目次
フェムテックとは?
フェムテックの意味
フェムテック(Femtech)は、「Female(女性)」と「Technology(技術)」を掛け合わせた造語で、テクノロジーの活用により性や健康に関する女性特有の問題の解決を目指す製品・サービスのこと。女性の心身にまつわる様々なタブーを変容するムーブメントという概念も含んでおり、言うなれば「ヘルスケア領域におけるフェミニズムが起きた」という表現をするとわかりやすいかもしれない。“フェムテック”という言葉の生みの親は、ドイツのスタートアップ「Clue」のCEOであるアイダ・ティン氏。彼女が新しいビジネスカテゴリーを示すものとして“フェムテック”を使うようになったのが始まりで、2012年ごろから徐々に世界的に知られるようになった。
フェムテックのカテゴリー
国内外のフェムテック企業、シンクタンク、VC、メディア、団体などがそれぞれ独自に分類しているが、大方は次のように分類されている。(女性の健康問題は以下に挙げているものだけではなくもっと様々にあるが、ここでは、現時点の市場で一般的に言われているカテゴリーのみを記載する)
- 生理ケア
- 妊産婦の健康(妊活、不妊、妊孕性、妊娠、産後ケアの領域)
- 更年期
- メンタルヘルス
- セクシャルウェルネス(セックス、デリケートゾーンケア、避妊など、性的健康の領域)
- 健康全般
フェムテックの市場規模
アメリカの大手調査会社「Frost & Sullivan」の試算(2018年)によれば、フェムテック市場は2025年までに5兆円規模にまで成長する可能性があるという(※)。ちなみに日本の市場規模については、フェムテック専門ストア・通販を運営するフェルマータが試算をしており、1.4兆円と予想している。
フェムテックがターゲットとする女性は、世界人口の約半分。もちろんプロダクトカテゴリーによってターゲットは異なるものの、世界の半分をターゲットにすることができるのだから、市場潜在力は実に大きい。
(※)Frost & Sullivanが試算したフェムテックの市場規模ついては、ITメディアビジネスの記事がもう少し詳細を記載しており(投資額は10年で17倍!急拡大する「フェムテック」市場を働く男性こそ知るべき理由)、それによると、周辺市場も含めると20兆円にまで成長するとのこと。ただしこれは米国を中心にした先進国のデータであり、世界全体の市場推計を必ず表すものではないとの補足もしている。
フェムテックが世界的に盛り上がっているワケ
女性の性や身体に関する問題は歴史的に見てタブー視されたり着目されてこなかったため、この領域の問題解決に向けた積極的な動きはこれまで見られなかった。ではなぜ今、急速に世界がフェムテックに注目するようになったのか?以下の理由が挙げられる。
- テクノロジーの急速な進化と、クロステックの世界的ブーム
- 先進国を中心に性差医療・性差ヘルスケアが急速に発展し(国内では2000年以降)、女性の健康問題を性差による体の違いから捉える動きが活発化している
- 女性の社会進出、SNSの浸透、ジェンダー平等意識の世界的高まりなどにより、それまで抑圧されてきた女性たちの声(性差により起こる様々な問題への不満・怒り・悩み・ニーズなど)が表面化され、それがビジネスの商機へつながり始めている
- 女性起業家が増え、女性視点による女性のための画期的なプロダクトが数多く登場するようになった
- 投資機関・投資家の間でベンチャー支援の機運が高まっており、技術力や成長性あるスタートアップへの積極的な投資が行なわれている
- 生理・性・生殖について、社会全体がオープンに語れるようになった
- 先進国で進む晩婚化・晩産化・非婚化・少子化問題により、女性の生殖に関する悩み・ニーズが高まっている
- 国を挙げた健康経営推進を機に、生理・PMS・更年期といった女性特有の健康問題が引き起こす労働損失額が数字として可視化されたことで、官民ともに女性の健康について問題意識を持つようになった
国内市場の動向
国内では女性起業家を中心に、ベンチャー界隈で2年ほど前からフェムテックが盛り上がってきたが、今年に入ってからは動きが急加速。大々的に取り上げるマスメディアが増えたことで一般にも広く知られるようになり、大手の参入も活発化している。現在の国内動向の特徴は3つ(フェムテック含む、2024年度、女性ヘルスケア市場全体の国内最新動向はコチラ)。
市場の主役は非デジタル系
フェムテックのプロダクトは国内でも急増しており、その数は2019年の50から2020年には97へ(フェルマータ調べ)。その中で特に集中しているのは、次の4カテゴリー。
- 生理ケア
例:生理吸収ショーツ、月経カップ、タンポン、生理管理アプリなど - 妊産婦の健康
例:骨盤底筋トレーニングアイテム、妊活・妊娠サポートアプリなど - セクシャルウェルネス
例:デリケートゾーン専用化粧水、セックストイ、セルフプレジャー、性病郵送検査キットなど - 健康全般
例:オンライン診療、生理周期に合わせたアロマオイルなど
中でも特に脚光を浴びているのは、生理ケアカテゴリーに入る生理ショーツや月経カップ、そして、セクシャルウェルネスのカテゴリーに入るデリケートゾーン専用化粧水やセルフプレジャーアイテムなど。最先端のデジタルテクノロジーを搭載したものというよりは、非デジタル系のアイテムが国内では目立つ。マスメディアが取り上げるプロダクトがどこも似たり寄ったりであることも影響し、女性たちの間でも特に認知が広まっているカテゴリーだ。
ただ上記のような言い方をすると語弊があるかもしれないので、ここで補足をしておきたい。業界やメディアで今脚光を浴びているフェムテックは非デジタル系が主だが、開発者・開発企業が「フェムテック」と名乗っていない(あるいはメディアに登場していない)だけで、女性に特化したデジタル系プロダクトは国内にもたくさんある。
ヘルステックやメドテック界隈の専門メディアなどを見れば、そういったプロダクトを見かけることはできる。例えばウーマンズラボでも紹介した「LTモニタ」がその例。女性特有がんの手術後に発症しやすいリンパ浮腫に着目した3次予防プロダクトで、どちらかというと「メドテック」のイメージが強いが、こちらも、女性特有の健康問題に着目しているという意味では、フェムテックの範疇に入る。(詳細は以下記事に掲載)
合わせて読みたい記事
主要ターゲットは若年層
上述の4カテゴリーを見てもわかるように、今のところ国内の大方のフェムテックが対象にしているのは、生理・妊娠・出産のある若年層(10〜40代)。更年期女性を対象にしたプロダクトも国内外でぼちぼちと出てきてはいるが、国内では少数。まだ数える程度しかない。人口ボリュームから考えても市場性はあるのだが、ヘルスケア業界全体で知見が蓄積されていない領域であること、また、企業・商品のロールモデルが少ないこと、そして更年期症状は個人差が大きく症状も背景もまちまちで複雑であることなどが障壁となり、新規プロダクトの登場はベンチャー、大手ともに、依然乏しいのが現状だ(ただし、業界内での関心そのものは近年急速に高まっている)。
もう一つ、若年層向けが多い理由として挙げられるのは、国内のフェムテック起業家は若手が多いこと。女性起業家は男性起業家と比べると、自身が経験したことのある領域で起業するケースが多いため、更年期を経験していない若手ではこの領域でのプロダクト開発が難しい。それなら、更年期をすでに経験したアラフィフ世代の女性が開発すれば良いのでは?と思うだろうが、そうなると今度は、この年齢で起業する女性が圧倒的に少ないという問題がある。海外では中年女性が起業するケースは多いが、日本においてはそうではない。以上の背景から、日本のフェムテックは現状、若年層を対象にしたものが多い。
大手の相次ぐ参入
今年に入り大手がフェムテック領域に参入する事例が相次いでいる。今のところ非デジタル領域が主で、独自の自社開発というよりは、既存のプロダクトや発想を活用するなど、フェムテックブームをうまく活用する形で参入するケースが目立つ。ベンチャーの成功事例の後追い、ポップアップストア誘致、フェムテック企業との業務提携、フェムテックを活用した福利厚生などだ。以下は今年に入ってからの大手の事例一例。
- 【伊勢丹】
フェムテック専門店のポップアップストアを誘致(2021.2) - 【銀座三越】
フェムテック専門店のポップアップストアを誘致(2021.3) - 【ラフォーレ原宿】
フェムテック専門店を常設店として誘致(2021.3) - 【GU】
生理用吸収ショーツを発売(2021.3) - 【イオン】
フェムテック発想の骨盤底筋サポートショーツ発売(2021.3) - 【丸紅】
フェムテック領域への参入にあたり、生理管理アプリとオンライン診療システムを活用した福利厚生制度を社内に導入(2021.3) - 【ユニ・チャーム】
月経カップを発売(2021.4) - 【SOMPOひまわり生命保険】
フェムテック企業と業務提携し、実証実験を実施(2021.4)
合わせて読みたい記事
海外市場の動向
海外でも先進国を中心にフェムテックは一大ブーム。米国のビジネスメディアCB Insightsによると、メディアがフェムテックを取り上げた回数は2020年に過去最高を記録したとのこと。実際に各主要メディアが、様々なプロダクトや市場動向を解説している。
海外は国内よりもデジタル系フェムテックに強く、発想に富んだ多様なプロダクトが多い。また、中高年齢を対象にしたものや、医療的価値がより高いプロダクトが脚光を浴びている。いくつか海外事例を見てみよう。ローンチ前のプロダクトもあるが、ぜひ発想の参考に。
生理痛軽減ボディースーツ
ハンガリーのフェムテック企業「Alpha Femtech」が開発するのは、生理痛を軽減するボディスーツ。微振動や体への熱放射をすることで痛みを軽減するウェアラブルスマートウェアで、水着のようなデザイン。データはアプリに送信され、子宮内膜症の診断にも活用される。いつでもどこでも着用できるので、日常生活に支障をきたさない点も、ユーザー側の大きなベネフィット。
更年期以降の骨粗鬆症を予防
更年期・更年期以降は、女性は骨密度が低下し骨粗しょう症のリスクが上がる。その予防デバイスが登場している。米国航空宇宙局NASAで実証済みの技術を用いて開発したもので、振動による骨への刺激で骨量減少を抑える。効果は薬・運動に匹敵するという。
Marodyne LiV(独)が開発したのは体重計のような見た目のデバイスで、ユーザーは台の上に乗るだけ。Bone Health Technology(米)が開発したのは、腰に巻くベルトタイプ(以下動画)。
更年期のホットフラッシュ、高速冷却
PRIDE CHILL(米)は、更年期に起きるホットフラッシュに着目した冷却装置を開発。冷たい空気を吸うことで体内が高速冷却され、ほてりを抑える。手の平サイズなので持ち運びも可能だ。米国の高齢者団体AARPが開催した、更年期特化のビジネスコンテストで受賞をした1社。(使い方は以下動画)
3Dプリンタで乳房再建
3Dプリンタを使った乳房再建術が、乳がん患者の3つ目の選択肢になる日が近い。海外の複数のベンチャーが取り組んでいる技術で、3Dプリントしたインプラントと自分の脂肪を乳房切除後の胸に埋めると、徐々に乳房が再建される。インプラントは1年で体内で消失する。
LATTICE MEDICAL(仏)もその技術を持つベンチャーで、2025年のローンチを目指している。
子宮頸がんを60秒で診断
Mobile ODT(イスラエル)が開発したのは、子宮頚がんを検出するためのAI医療機器EVA System。手の平に収まるスマホサイズで、診断までにかかる時間はなんとわずか60秒。検査したその場で結果がわかるのが、患者側のベネフィット。
患者のデータ管理、画像・ビデオのキャプチャ、電子医療記録への統合もでき、医療者側にもメリットがある。20カ国でサービスを提供中。
エイジ・フェムテック
こちらは女性専用のプロダクトではなく男性も使えるものだが、フェムテック領域にも関わる事例なので紹介しておきたい。
「Alcove(米)」は高齢者特有の健康問題に着目したVRで、ターゲットは高齢者。家族や社会とのつながりを維持・促進することで高齢者の社会的孤立や健康への悪影響を防ぐことを目的としている。海外ではエイジテックの領域で捉えられているが、男性よりも平均寿命が長い女性こそ必要とされるプロダクトであることを考えれば、その意味ではこちらもフェムテックと言えるだろう。
この事例のように、高齢者を対象にしたデジタルプロダクトは世界的に見ても例がまだ少ないが、ウーマンズラボ編集部では、高齢女性を対象にしたヘルスケアプロダクト、あるいは高齢女性特有の社会課題解決を図るプロダクトを「エイジ・フェムテック」と呼んでいる。
高齢女性をターゲットにする場合デジタルデバイド問題が最大の懸念事項となるが、Alcoveの事例を見ると、UI/UXの設計次第では可能性は十分にあるのでは?と感じさせる。
高齢化率が世界一の日本は、課題先進国。他国よりも高齢者に関する様々なデータや商品・サービス事例が豊富にあることを強みに今、国内でエイジ・フェムテックに成功すれば、その後の世界展開も夢ではない。エイジテックで女性に特化したプロダクトも、また、高齢者を対象にしたフェムテックも、今はまだ世界的にブルーオーシャン。ぜひ参入を検討してみては?エイジテックの一大ブームはもうすぐそこまでやってきている。
合わせて読みたい記事
国内の課題
(1)偏り
前述の通り、現在の国内市場の主役カテゴリーは「生理ケア」「妊産婦の健康」「セクシャルウェルネス」。特に生理ケア周辺に集中しており、国外と比べるとカテゴリーの多様性に乏しい。プロダクトのターゲット年齢についても顕著な偏りがあり、中高年層向けのものが圧倒的に少ない。本来、女性特有の健康問題は様々にある。例えば…
- 10代・20代に多い摂食障害(10代はAN,20代はBN)
- 20〜30代の出産経験がない・少ない女性に多い子宮内膜症
- 若年層に起きる早発閉経
- 中年層が抱えやすいダブルケアによる心身の不調
- 50代以降の生活習慣病
- 閉経後〜60代に多い子宮脱や萎縮性膣炎
これは一例だが、このように各年齢で特有の健康リスクがある。対象とする健康問題やターゲットの年齢など、今後は多様性が求められる。
なおマスメディアの報道に偏りがある点も、市場の課題と言える。取り上げるに値するプロダクトは数多くあるが、特定の領域・企業や、”映え”するプロダクトへの取材が集中するのはメディアの悪い癖だ。メディア自身も、様々な疾患・健康問題を対象にしているプロダクトを取り上げる必要がある。
合わせて読みたい記事
(2)健康・医療的価値の高いものが少ない
生理吸収ショーツ、セックストイ、フェムケア化粧品などは、これまでの女性特有の不便・不満・ニーズを満たした画期的なものではあるが、一方で、上記で例に挙げたような各健康問題を解決する健康的価値・医療的価値の高いプロダクトは現状少なく、未だ取り残されている。これは日本で特に顕著な印象があるが、開発力のある国外であっても同様の課題が指摘されている。3Dプリンタの活用で乳房再建術を行うLattice Medical社(仏)の共同創設者兼最高経営責任者であるジュリアン・ペイエン氏は、この市場課題について次のように述べている。
市場が拡大・発展していくのに必要なのは、健康・医療的価値がさほど無いプロダクトではなく、女性に真に健康効果を提供できるテック企業が増えること。(The New York Times,2021)
もちろん、健康的価値・医療的価値が高いプロダクトは国内でも登場している。検査に痛みを伴わない非接触型の乳がん検診装置(株式会社Lily MedTech)、女性ホルモン値の検査で更年期の状態などを調べる検査キットcanvas、妊孕力を調べる卵巣年齢検査キットのF checkなどがその好事例だ。
(3)フェムテック新興企業への投資不足
業界的に投資機関・投資家は男性が多いために、フェムテックで起業する女性起業家が資金調達に苦労していることも、フェムテック市場の課題として各所が指摘をしている。男性は女性特有の健康問題に無理解である(あるいは正しい知識を有していない)ことが多いため、投資側にいるのが男性だと、女性の健康ニーズへの共感や市場可能性の判断がができず、出資に至らない、あるいは出資額が小さくなり、起業家はM&AやIPOを達成しづらい環境でビジネスをすることになる。結果的に市場が活性化しないという悪循環に陥ってしまうのだ。
それなら、女性が主導する投資機関や、あるいは投資判断の担当者が女性であれば良いのか?これは難しい問題で、女性だからと言って必ずしも女性の健康問題に精通しているわけではないので一概に「Yes」とは言えない。またVC業界は男性が圧倒的に多いため、女性視点を失い、思考が”男性化”してしまっている女性もいる。
この課題はフェムテック新興企業だけに当てはまるものではない。大手企業であっても、男性が主導する部署、あるいは男性的思考の強い部署の場合、フェムテックでの新規ビジネス立ち上げや企画・開発は困難を極めることもある。「女性視点を大事にすること」と「女性特有の健康問題に関する正しい知識を持ち、女性ニーズを知ること」。この2つが、投資側にも開発者側にも必要だ。
(4)消費者側の低いヘルスリテラシー
フェムテックユーザーとなる女性消費者側のヘルスリテラシーが低いことも、市場の活性化を阻んでいる。いくら健康的・医療的価値の高いフェムテックが登場したとしても、ユーザーサイドが必要性を感じなければ、そのプロダクトのローンチは意味を成さない。それ以前に、そのプロダクトにアクセスするだけの十分な情報リテラシーやヘルスリテラシーがなければ、「欲しい・欲しくない」の判断に迷うことすらもない。つまり、女性消費者のニーズが顕在化されないということだ。
女性自身であっても自分の体のことをよくわかっていない人は実に多い。日本医療政策機構が女性を対象に行った調査(2018年)では、「これまでに受けた性や女性の健康に関する教育のうち、学校でもっと詳しく聞いておきたかった内容は?」という質問に対し最も多かった回答は「女性に多い病気のしくみや予防・検診・治療の方法」で48%と半数にも上った。女性特有の健康問題に関する知識を、女性自身であっても有していないことがわかる結果だ。市場の活性化には、業界のヘルスリテラシーや開発力向上のみならず、消費者のヘルスリテラシーを底上げすることも重要だ。
そして2023年頃から新たな課題となっているのが、撤退・休止・解散するフェムテック事業者が増加している点。その背景や対策などは2024年3月に発行したレポートにまとめているので、ぜひチェックを。
フェムテック市場はどうなる?未来予測
現状の課題を踏まえると、今後のフェムテック市場では多様化が急進すると予想される。なおここで言う「多様化」は、主に以下3つの視点があると考えている。各項目は若干被る部分もあるが、フェムテックビジネスを発想する際の視点の持ち方として参考にしてほしい。
<1.対象疾患(健康問題)と対象年齢の多様化>
“各年齢”で訪れる女性特有の”様々な健康問題”に着目したプロダクトの登場が予想される。今から1〜2年ほどで世界的な活況が見られるようになるだろう。
<2.対象クラスターの多様化 〜主にマイノリティ〜>
LGBTQ+や持病者といったマイノリティクラスターを対象にするなど、対象クラスターの多様化も徐々に進んでいくだろう。実際に、LGBTQ+への配慮から「女性向け」という表現をやめ、ジェンダーレスを謳うセクシャルウェルネスのアイテムもすでに登場している。
持病者を対象にするフェムテックも期待大だ。持病や後遺症により生活不便を強いられている人をサポートするプロダクトは、これからの注目カテゴリー。なお持病者を対象にする際は、2次予防領域か3次予防領域のいずれかになるが、開発難易度やコスト面から考えると、3次予防領域の方が先に活性化するのではと見ている。
<3.男女共通の疾患領域における性差への着目>
これはもう少し先になると考えられるが、女性特有ではない男女共通の疾患を対象にしたフェムテックもやがて登場するだろう。今は女性特有の疾患・健康問題を対象にしたプロダクトが主だが、今後は、高血圧や糖尿病など男女共通の疾患・健康問題に着目する動きも出てくるはずだ。
男女共通の疾患・健康問題であっても、罹患した際の心身の状況や、治療による副作用で直面する悩み・困りごと・ニーズ・生活状況には性差がある。こういった性差に着目し、その病気にかかったことで生まれる女性特有の困りごとを解決するプロダクトというのは、世の中にほとんどない。性差医療・性差ヘルスケアの歴史そのものが浅いことも関係しているが、今後この分野は発展が見込まれているので、同時にフェムテック業界でも注目されるカテゴリーへ成長するだろう。
以上が、今後の動向予測。とは言えこれらは、フェムテックへの投資不足という市場の課題が同時にクリアされてこそ。そして、女性消費者のヘルスリテラシー向上による需要拡大も必須条件。フェムテック市場に参入するなら、全方位への配慮は欠かせない。なお、フェムテックビジネス含めた女性ヘルスケアビジネス全体の最新動向や市場予測(2024年度版)はコチラのレポートにまとめているので、ぜひご参照いただきたい。
【レポート】売れるフェムテックの開発と販売戦略
フェム系商品・サービスのマーケティング戦略に役立つレポートをご用意しています。売れ行きに課題を感じている/販売スピードを加速させたい/流通量を増やしたい/戦略のPDCAを行いたい事業者様は、ぜひお役立てください。詳細・レポートのお申し込みはこちら。
【編集部おすすめ記事】
■ソフィの新商品 “月経カップ” にダメ出しコメント殺到、一体何がダメ?
■新発想、CBD入りのタンポンで生理痛軽減
■膣内環境、ニーズに応える国内初の機能性表示食品
■予防医療ビジネスの最新動向、0次〜3次予防の段階別ベンチャー事例