100人の100歳に聞いた「長生きの秘訣」 〜センテナリアンのリアルな声〜
100歳以上の人、いわゆるセンテナリアンを対象にした貴重な調査結果「100歳100人 実態調査2021(※)」が公表された。注目は「長生きの秘訣」について聞いたアンケート結果と、95人のリアルな声。長生きの秘訣、健康の秘訣、そして幸せに生きるヒントが見えてくる興味深い調査だ。健康づくりや幸せになるためのハウツーは世の中にごまんとあるが、説得力があるのはやはり、実際に長生きしている人たちの生き方や考え方。本稿を読み進める前にぜひ読者の皆さんも改めて考えを巡らせてみて。ズバリ、長生きの秘訣って何だと思う?(※)100歳以上の男女100人(女性84名,男性16名),キューサイ
目次
51年連続で増加、100歳以上は86,510人
調査結果の前に、国内の100歳以上の人口について復習しておこう。昨年9月の厚労省の発表によると、100歳以上の人は前年比6,060人増で86,510人。昭和38年は全国で153人だったが、平成10年に1万人を超え、平成24年には5万人を突破と年々増加。51年連続で過去最多を更新し続けている。内訳は女性が約9割で、昨年は86,510人のうち76,450人が女性だった。
100歳以上の人口が増えているのは、平均寿命の延伸からも理解できる。厚労省が昨年に公表した「令和2年簡易生命表」によると、女性の平均寿命は87.74歳、男性81.64歳で、男女ともに過去最高を記録した。平均寿命は今後も伸び続けると見られ、2065年には女性91.35歳、男性84.95歳に(以下グラフ)。同時に100歳以上の人口も増え、2050年には68万人に達すると推計されている(国際長寿センター)。もはや100歳まで生きることは、そう珍しいことではない。
100人の100歳に調査
本題に入ろう。「100歳100人 実態調査2021」を実施したのはキューサイ(福岡)。同社は健康長寿の秘訣を探ることを目的に、元気な100歳以上の人100人に2016年から生活実態調査を行っており、今回で5回目。各質問の結果からは、長生きや健康の秘訣が見えてくる。
長生きの秘訣
100人の100歳以上の人に「長生きの秘訣」を聞いたところ次の結果に(男女計)。トップ3は「食」「前向きな気持ち」「運動」。
ちなみに男女別の集計結果をランキング形式で並べたのが以下。男性のサンプル数が少ないのでこれを全体の傾向として捉えるには無理があるが、納得の性差が見られたので補足しておきたい。女性の長生きの秘訣トップ3は「食」「前向きな気持ち」「運動/交流/趣味」に対し、男性のトップ3は「食」「運動」「交流」で、女性の方が精神面を重視していることが読み取れる。年齢問わず生涯にわたり女性は男性よりメンタルバランスを崩しやすい傾向があるため、自身や周囲の経験も背景に、「前向きな気持ち」を維持することを長生きや健康の秘訣として心がけているのかもしれない。
女性(人) | 男性(人) |
食に関すること (46) | 食に関すること (5) |
前向きな気持ち (33) | 運動 (5) |
運動 (23) | 交流 (4) |
交流 (23) | 趣味 (3) |
趣味 (23) | 規則正しい生活 (3) |
感謝の気持ち (15) | 前向きな気持ち (3) |
規則正しい生活 (11) | 自分のことは自分でする (2) |
自分のことは自分でする (10) | 感謝の気持ち (1) |
どんな食事をしている?
前述の通り、「長生きの秘訣」第1位は「食」。では具体的にどのような食事をしているのか?「普段の食事でほぼ毎日食べるもの」を聞いたところ、次の結果に。トップ3は「お米」「野菜類」「乳製品」。
自分は何歳だと思っている?
続いて「精神面・気力面」と「身体面・体力面」の年齢意識(自分が思う年齢)を聞いたところ、前者は男女平均で85.3歳、後者は男女平均で91歳という結果に。気持ちも体も実年齢より若いと考えている人が多いことがわかった。
さて、このファインディングスはどう捉えればよいのか?「年齢意識が若いことが長生きの秘訣」と言えるのだろうか?その解として参考にできそうな他の調査がある。サントリーウエルネスが今月公表した「日本全国 実感年齢白書2022」によると、実年齢より年齢意識が若いと考える人は健康・美容意識が高く心身が良好で、「活発に活動する」「好奇心がある」「美容に気を使う」「積極的に外出をする」「人と交流をする」「生活満足度が高い」傾向が、年齢意識が若くない人と比べてより強く見られることがわかった。年齢意識と健康や長生きの間には、どうやら関連性がありそうだ。
後輩世代へメッセージ、100歳の人たちの声
最後に100歳の人たちの声に耳を傾けてみよう。調査では「アクティブシニア70歳代の後輩に向けたメッセージ」として生き方や考え方について個々に意見を求めており、95人分のリアルな声をレポート(※)に掲載している。ぜひ読者の皆さんにも全てをお読みいただきたいのだが、さすが一世紀を生き延びてきた人たちの発言内容は深い。前述の「長生きの秘訣」を聞いた定量調査の結果ももちろん参考になるが、一人一人の発言内容の方がより参考になることが多く、健康の意味について深く考えさせられる。(※2)同社の調査結果掲載ページ内の「『100歳×100人 アクティブシニアの方へのメッセージ集』はこちら」より閲覧可
一人一人の声を読み進めていて気づくのは、若い世代へのメッセージとして「くよくよしないこと」を挙げている人が非常に多いこと。次いで目立った言葉は、「感謝の気持ちを持つ」「何かに興味を持つ」「人と交流する」「楽しいことを見つける」「自分のことは自分でする」。アクティブに年齢を重ね健康を維持するのに最も重要なことは、実にシンプルで、「ポジティブマインドの維持」なのかもしれない。レポート内から複数人の女性の声を以下にピックアップした。
・「とにかく、くよくよしない」こと。何でも残さずに、よくかみ、よく食べること。お日様に当たって、体をのばすこと(101歳女性,東京)
・何事も前向きに考えよう。面倒くさがらず、動く(東京、100歳女性,東京)
・ 1日1日を大切に、明るい気持ちで、感謝の気持ちを忘れずに(100歳女性,茨城)
・規則正しい生活をして、みんなと楽しく生活をする。出来るだけ歩く様にする。何にでも興味を持つ。ヨーグルトと牛乳を毎日食べる。お魚よりお肉を食べる(100歳女性,兵庫)
・「楽」という文字を中心に(上)に音をつけると音楽に、(下)に園をつけると楽園に、(左)に気をつけると気楽に。こういうふうに楽しいを中心にいろいろ楽しい事があるよ!(100歳女性,宮城)
・新聞を読むからボケないと思う。新聞は読んだ方がいい(101歳女性,山口)
・二度と来られないこの世なので、楽しいことをいっぱいすること。体が一番だから、何でも食べること。人といっぱいおしゃべりをすること。いろんな所へ行って楽しむこと(102歳女性,広島)
・すべての事に不平を持たない(102歳女性,愛知)
・人の悪口を言わないこと。体を動かすこと。なにごとも良い様に考えること(102歳女性,沖縄)
・先祖に対しての感謝の気持ちをもち、健康には気をつけて、自分の事はいくつになっても出来るように、無理せずに頑張ればいい。100才からすると70才はまだ子供。80才の坂はやすやすとのぼって、97才(カジマヤー)でひと休みして、その後は健康で長生きするだけ(100歳女性,沖縄)
・「長生きをする」という事を、意識せずにあまり色々考えない(101歳女性,静岡)
・他人様に迷惑をかけず、好きな事をして、好きなものを食べて笑って過ごす。細かい事でクヨクヨしない!(101歳女性,愛知)
130歳まで生きる可能性、エイジテックに期待
平均寿命は伸び続けセンテナリアンの数も増加の一途を辿っている。ある研究によれば、今世紀に130歳まで生きる人が現れる可能性があるというから驚きだ。
だが一方で長生きを悲観する人は多く、民間調査では6割の女性が「100歳まで生きたくない」と否定的。その理由は、経済的な不安、老化による判断力・記憶力の低下、体が自由に動かなくなること、自立した生活ができなくなること、病気の不安などだ。核家族化や単身者の増加を背景に、高齢期に頼れる家族が少ない、あるいは誰もいないことも、人々の長生き不安をさらに強めている。
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こういった不安を解決するものとして期待が寄せられているのが、昨年から国内でも聞くようになったエイジテック。残念ながらフェムテックほどのビッグワードへ急成長する気配は現時点ではないが、本来であれば少子高齢化の課題先進国である日本こそ、世界をリードできる領域だ。現状はエイジテックは国外が先行しているものの、まだ黎明期。平均寿命の延伸やセンテナリアンの急増ぶりを知った今、改めて、高齢者向けのソリューション開発に本格的に目を向けてみてはどうだろう?
そしてその時はぜひ、センテナリアンの観察を。長生きの秘訣や研究開発の視点の発見にとどまらず、健康やウェルビーイングの究極の“真髄”に気づかされるはず。
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