何歳以上が「おばさん」?ペルソナ設計で失敗しないために知っておくべき日本人の年齢意識(20〜70代調査)

広告に採用する女性の人物モデルやイラストが実年齢より”若見え”しすぎると、「現実からかけ離れている」と敬遠され、逆にあまりにも”老け見え”していると「失礼だ!」と嫌われ…。自社がターゲットにしている女性の年齢を視覚で表現するのは、実に難しく悩ましいところ。

白髪をあえて染めない「グレイヘア」が中高年女性の間でちょっとしたトレンドになったり、「ありのままを受け入れる」という風潮が強まっていることからも、女性たちは決して「見た目年齢が若ければ若いほど良い」と思っているわけではないことがわかるが、一方で、一昔前と比べると全体的に人々の見た目は若々しくなっている上に、「実年齢より私は若い」と思っている人は増えているので、ステレオタイプで女性の年齢を表現するのはNG。大事なのは「若見えしすぎず、老け見えしすぎず、ナチュラルな若さ」で、マーケターサイドも、女性たちの年齢意識を常に敏感に読み取りアップデートする必要がある。

では、最近の人々の年齢意識はどうなっているのか?サントリーウエルネスが、人々の年齢意識に関する調査レポートを公開したので見ていこう。何歳からが「おばさん」で、何歳になると「おばあさん」?人々が一般的に抱いている年齢イメージの他、「自分は実年齢より若い」と思っている人と「実年齢より老けている」と思っている人、それぞれの特徴について調査を実施。ペルソナ設計や広告モデルの採用を考える際に役立つ。

調査概要

サントリーウエルネスは今年1月、調査レポート「実感年齢白書 2022」を公開。20〜79歳の男女約1万人を対象に年齢意識に関する調査を行い、日本人の年齢意識や、「実年齢」と「自身が思っている年齢」の差、年齢意識が若い人の特徴などを紐解いた。

 

「おばさん」って何歳から?言葉からイメージする年齢

「おばさん・おじさん」「シニア」「おばあさん・おじいさん」「お年寄り」とは、何歳以上の人を指すのだろうか?各人称代名詞の言葉からイメージする年齢を20〜70代の男女に聞いたところ、次の結果に(20〜70代の男女1万人の平均値)。49歳になると「おばさん」、61歳になると「シニア」、69歳になると「おばあさん」、73歳になると「お年寄り」というのが平均的なイメージのようだ。

  • おばさん、おじさん…49.0歳以上
  • シニア…61.6歳以上
  • おばあさん、おじいさん…69.0歳以上
  • お年寄り…73.1歳以上

ただし各言葉からイメージする年齢は、回答者の年齢によって異なる。以下は年代別の集計結果。「シニア」については全年代共通で「62歳前後」というイメージが浸透しているようだが、それ以外の言葉については、回答者の年齢の上昇とともにイメージする年齢も上がっていく。

【出典】サントリーウエルネス

 

自分は何歳だと思っている?

続いて自分自身で思う自分の年齢=実感年齢(※)を聞いたところ、興味深い結果が。(※)調査を実施したサントリーウエルネスは、自分自身で思う年齢のことを「実感年齢」と表現。以降は本稿でも「実感年齢」と表現する。

以下は「実感年齢」から「実年齢」を引いた数値をグラフ化したもの。若い時は「実年齢より自分は大人びている」と思う人が多いのだろう、「実年齢」より「実感年齢」が高い傾向が見られるが、中高年になると「実年齢より自分は若い」と思うようになり、さらに年齢の上昇とともに「実年齢」と「実感年齢」の差が大きくなっていく。興味深いのは、その境界線。「実年齢より自分は年齢が高い」と思わなくなり、「実年齢より自分は若い」と思い始めるのは37歳であることがわかった。

【出典】サントリーウエルネス

 

どうやら人々は40代を目前にするあたりで、自分の年齢に対する考え方や印象に変化が起き始めるようだ。別の見方をするなら、自分の加齢や世間が抱く年齢イメージに対し敏感になり始めるのが”40代突入前”、と言えるかもしれない。

この結果は早見表でも公開している(以下)。年齢別に「実感年齢」の平均値を掲載しているので、「自社がターゲットにしている年齢の女性は、自分を何歳だと思っているのか?」と気になった時に参考にしてみては。

 

【出典】サントリーウエルネス

 

「自分が思う年齢」が「実年齢」より若い人・老けている人の特徴

37歳を境に「実感年齢」が「実年齢」より若くなるとは言え、あくまでそれは平均値。皆が皆、中高年になると一様に実感年齢が若くなる訳ではない。実感年齢の高低を左右する要素は加齢以外にもあるようだ。

調査では、「実感年齢が若い人(=実感年齢が低い人)」と「実感年齢が高い人」、それぞれの特徴についても分析。それによると実感年齢が若い人は、生活全般において幸福度が高いことがわかった。「自分は実年齢より若い」と思えるかどうかは、幸福度の高低も関係していると言えそうだ。

【生活全般の満足度】
実感年齢が若い
グループ
実感年齢が高い
グループ
幸福度 63.3% 40.0%
健康 61.0% 27.8%
容姿 48.2% 18.8%
仕事 44.7% 24.3%
人間関係 60.9% 40.5%
趣味 65.9% 41.0%

 

別の角度からも「実感年齢」の高低を左右する要素を調べている。「実感年齢が若い人(=実感年齢が低い人)」と「実感年齢が高い人」、それぞれの意識や習慣の有無をまとめた表(後継)を見ると、特徴に次の違いが見られた。

<実感年齢が若い人の特徴>

  • 健康に関心があり、健康行動者率が高い
  • 美容や自分の外見に関心があり、美容行動者率が高い
  • デジタル活用率が高い
  • ポジティブ思考
  • 人生に前向き
  • よく笑う
  • 自己肯定感が高い
  • 趣味がある
  • 家にいるより外出したい
  • 流行に関心がある

<実感年齢が高い人の特徴 (実感年齢が若い人と比較した考察)>

  • 健康に関心がなく、健康行動者率が低い
  • 美容や自分の外見に関心がなく、美容行動者率が低い
  • デジタル活用率が低い
  • ネガティブ思考
  • 人生に前向きではない
  • あまり笑わない
  • 自己肯定感が低い
  • 趣味がない
  • 外出するより家にいたい
  • 流行にあまり関心がない

【出典】サントリーウエルネス

 

【出典】サントリーウエルネス

*年代バイアスを排除するため、集計値は 60〜70代をベースとしている。
*実感年齢と実年齢の差分を求め、「実感年齢が若いグループ」= 「実感年齢の方が低い上位 20%」と、「実感年齢が高いグループ」=「実年齢の方が低い下位 20%」に分類して集計。前者のn=8835、後者のn=975

 

広告で女性の年齢を表現する時のポイント

調査レポートではあらゆる角度から人々の年齢意識を紐解いているので、ぜひ全文に目を通していただきたいが、女性ヘルスケアの業界人が特に押さえておくべき考察ポイントを以下にまとめた。これらに注意を払い、広告における年齢の表現を考えてみてはどうだろう。

  • 平均寿命の延伸や見た目年齢の若返りを背景に、「おばさん」「おばあさん」「シニア」「お年寄り」といった人称代名詞からイメージする年齢は、一昔前とは変わってきている。今回の調査結果を参考に、人々が一般的にイメージする年齢イメージと自社が表現する年齢イメージに大きな乖離が出ないよう気をつける
  • 「実年齢より自分は若い」と思い始めるのは40代突入前。広告で女性のモデルやイラストを採用する際に、若見えや老け見えの塩梅に特に配慮が必要になるのは、ターゲットがアラフォー以降のケース
  • 幸福度が高い人(ウェルビーイングの状態にある人)をターゲットにする場合は、広告などに採用する女性の見た目年齢を若めに設定してOK。共感されやすい
  • 幸福度が低い人(ウェルビーイングの状態になっていない人)がターゲットの場合は、見た目年齢が若すぎると共感されず自分ゴト化してもらえない可能性あり

以上を念頭にペルソナやマーケティングを設計すれば、昨今の生活者の年齢意識から大きくずれた訴求にはならないだろう。

本稿ではペルソナやマーケティングの設計における年齢イメージについて考察してきたが、最後に、年齢と健康の関連に関するアカデミックなトピックを補足しておきたい。BBC NEWSの報道によると、「実年齢よりも自分は若い」と思えることは、死亡率や病気のリスク低減につながることが研究で示唆されており(以下)、将来的には「患者の主観年齢を下げて健康改善するという治療法が出てくるかもしれない」とのこと。自分を「若い」と思うことができれば健康になれるが、「自分はもう年寄りだ」と思えば病気や死亡のリスクが高まるということだ。「病は気から」という諺にもあるように、自分の年齢に対する評価は健康に大きな影響を及ぼすようだ。

 

実年齢より若く感じていると、うつのリスクを下げるとともに、年を取っても精神的に健康でいられる可能性が高まるようだ。また認知症のリスクを軽減したり、入院の可能性を低めたりと、身体的な健康にも影響している。

モンペリエ大学のヤニック・ステファン博士は、合計1万7000人以上の中年・高齢者を追跡調査した3件の長期研究データを検証した。

それによると、調査に参加した多くは、自分は実年齢より8歳若いと感じていた。一方、実年齢より年を取ったと感じている人の結果は深刻なものだった。教育や人種、結婚歴といった要素を排除しても、主観年齢が実年齢より8~13歳上の人は、対象期間中の死亡リスクや病気による負荷が、通常の18~35%高かった。引用:BBC NEWS「老化を左右するのは実年齢より『主観年齢』 健康にも影響か」2018.10.24

 

 

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