ビジネスケアラーが仕事と介護を両立できる環境へ、先進企業の取り組み事例
従業員の介護離職を防ごうと、仕事と介護の両立支援に乗り出す企業の動きが本格化する兆しだ。”仕事と育児の両立支援” と比べ “仕事と介護の両立支援”は、これまで社会的にも企業内でも手薄だったが、ビジネスケアラー発生による経済損失額が9兆円に上るとの試算(経産省)が昨年話題になったことが背景にある。今年3月には両立支援に向けたガイドライン(仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン)がまとめられ、民間企業による新たな支援サービスも立ち上がり始めている。例えば、介護と仕事を両立したい転職希望者と、柔軟な働き方ができる企業をマッチングする転職支援サービス(パーソルイノベーション)。まだ事業検証の段階だが手応えは大きいようで、すでに多くのメディアが取り上げている。今後、ビジネスケアラーを支援する多様なサービスが生まれそうだ。
社内における仕事と介護の両立支援体制の整備にあたり参考になるのは、先進企業による取り組み事例。経産省がロールモデルとしてまとめたもので、レポート内では両立支援の具体的な内容や工夫、支援による効果などを掲載している。以下は各社の取り組み概要(仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン 参考資料集)。
- 介護とファイナンシャルプランニング両面の専門家への相談ができる窓口を設置(ソニーグループ)
- 両立支援を行う「産業ケアマネジャー」の相談窓口を独自に設けている(東京海上日動火災保険・東京海上日動ベターライフサービス)
- 介護に特化した支援策と、介護に限らずひとりひとりへのサポートの観点の両面から支援(パナソニック)
- 仕事と介護の両立における知識・情報の充実によって介護を支える風土を醸成(ハウス食品グループ本社)
- 仕事と介護の両立支援宣言を社長名で出し、従業員の理解促進から取組を開始(株式会社白川プロ)
- 介護も含めた休職者が出たときの対応を各職場で話し合い、事業継続の施策を検討(ニッスイ)
- 従業員の家族の状況を把握し備えるとともに、柔軟な勤務体制で細やかに対応(文典堂)
- ダイバーシティ&インクルージョン推進を経営戦略に掲げ、仕事と介護の両立支援に取り組む(アフラック生命保険)
- データの正確な把握と、ライフイベントに対応できる多様な働き方の選択肢 (ANAホールディングス)
- 従業員の現状や不安を把握し、育児休暇への取り組み経験を活かして情報を提供(オムロン )
- 実態調査の結果から取組テーマを検討、情報発信、トップメッセージ発信、制度充実等(大成建設株式会社)
- 経営陣がメッセージを発して助け合える文化・風土づくりと制度整備で社員皆で輝きあう(ディーエスピー)
- 専任担当者を配置し、セミナー実施や相談窓口設置など周知活動を行い認知度増進(はなまる)
- 柔軟な働き方と気軽に悩みを相談できる窓口で働きやすい職場をつくる(ペンシル)
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