2021年 女性の消費トレンド(4/6)

7.カジュアル&エフォートレス

エフォートレスとは「努力を要しない」との意味で、数年前にファッションやビューティ業界で広がった言葉ですが、ここでさすエフォートレスは、ファッション・ビューティに限定せず「生き方全体」を指します。ジョージアのCMをご覧ください(2020年現在はすでに削除されています)。

「頑張るって古いのかもな…」というセリフはまさに今の時代の「カジュアル&エフォートレス」を象徴している言葉です。昭和の頃のようなモーレツな努力だったり、ストレスと闘いながらガムシャラに生きたり、命がけで借金をし起業するといった ” 重々しさ ” は今は敬遠され、全ては楽しく、らくちんに、という概念が特に若い世代を中心に広まっています。

Googleトレンド「頑張らない」

例えば、少し前なら稼ぐのは大変なことでしたが、今はブログやユーチューブ、メルカリ、副業などを通して誰もが簡単にお金を稼げる時代です。実際に、パソコン一つで、ひと月で数百万円の収入を実現する人はたくさんいます。

自己実現も今はライトです。有名人になりたいと思ったらティックトックやインスタ、ユーチューブを使って情報発信。幸運なケースだとごく短い期間のうちにたちまち有名人の仲間入りを果たせます。

ファッションもカジュアル化が進んでいて、国がスニーカー通勤を推進していることも影響し、通勤にリュックやスニーカー、脱スーツを推奨する企業が増えています。

エイジングに関しても、過度な整形やエステで涙ぐましい努力をして若さを維持するよりも、加齢を受け入れる考えが世界的に広がっています。子育てに関しても以前までは、各女性誌がこぞって、仕事もママ業もカッコよくこなす女性像を打ち出していましが、最近は「ママも手抜きを」「頑張らない子育て」などを提唱。オフィスで働く女性向け情報誌シティリビングも先日、「全部しっかり、きちんとからの解放~いい加減を目指しませんか~」という特集を組みました。

冠婚葬祭も、スマ婚に代表されるように重々しいものからライトなスタイルへと変化。ギフトについてはお歳暮市場は縮小傾向にありますが、プチギフト市場は拡大してます。

高級バックや高級車はかつては努力の結果獲得する成功者の証でしたが、今や、誰もが庶民価格で高級バックや高級車をシェアやレンタルで気軽に使えます。

デザインも、重厚系よりも今はアップルやユニクロのようなライト系・シンプル系が好まれています。このようにあらゆるシーンでカジュアル&エフォートレス化が進んでいます。

企業は、ヘビー感を避けライトなコンセプトを掲げると良いかもしれません。例えば、「重々しくて買い物しづらい苦手な場所」と敬遠されがちな百貨店型の過剰接客はしない、大げさな過剰包装はしない、冒頭ご紹介した医療福祉イベントを手掛けるウブドべのように、イベントや啓蒙活動はテーマやコンセプトを重くしすぎないなど。見なおしてみると、確かに時代の流れにそっていないマーケティングは未だにあちこちに散らばっています。コスメ業界ではミニサイズコスメが注目を集めていますが、その理由は、女性たちに「よし、この10,000円の化粧水を買おう」という大きな決断をさせない点にあります。お手頃価格で新しいコスメをサクッと使える「ライト感」が支持されています。カジュアル&エフォートレスの空気が広がりを見せる中、購入において「大きな決断をさせない」という視点で戦略を考えてみるのも良いかもしれません。

8.ライフデザイン

本日のキーワードの中で、女性市場トレンドに最も大きな変化を与えるキーワードです。昨年は多くのメディアが取り上げたこともあり、人生100年時代を誰もが意識するようになりました。続く2019年は、一歩踏み込んで、100年時代を見据えた「ライフデザイン思考」が進むと考えられます。

お金と健康に関しては、人生100年時代に対する備えとして当たり前のコトですが、今、新たに女性たちが関心を寄せているのは「リカレント教育」と「生き方」です。人生100年もあるなら、もっといろんなことを学んだり知識のアップデートをして生き抜くスキルを身に着けたいと、生き方をより深く真剣に考えるようになっています。未婚女性は年々増え、さらに女性の方が男性よりも長生きするわけですから、女性にとって100歳まで生きることは、考え方や行動、将来設計に大きな影響をもたらすのは当然です。

昨年、イギリスのBBCが発表する「人々に感動や影響を与えた世界の100人の女性」に、日本の90代女性「高見澤摂子さん」が選ばれました。高見澤さんは2020年のオリンピックで通訳をしたいとのことで、孫とラインを使った英語の勉強を始め、その様子が話題になりました。90歳を超えてラインを使って英語の勉強をする。まさにリカレントです。

以前は、長生き対策は中年期以降に取り組むものでしたが、今は、20~30代の若いときから100歳まで生きることを想定してライフデザインを描く女性が増えています。このライフデザイン思考は、生活・価値観・行動などあらゆるシーンに変化をもたらし始めています。次に紹介するのは、いずれも人生100年時代を見据えた女性たちの行動です。

  • 残り半分の人生は自由に生きたいので卒コン(50代 専業主婦)
  • 残り20~30年間を支え合うパートナーを探すために婚活(70代)
  • ロコモ対策としてトレッキングを趣味に(30代 会社員)
  • 会社に縛られストレスフルに数十年間生きるよりも、自分の好きなことで生きていきたいので退職して海外移住(20代 シングル)

子育て・介護・夫の転勤についていくなど、何かと「人に尽くす側」になることが多い女性ですが、人生100年時代の概念が広まったことで、「他人や家族ではなく、自分自信の人生に尽くす」意識が女性たちに芽生え始めています。妥協して生きる、何かの犠牲になって生きる、という考えは薄らぎ、自分の幸せや自分の将来を真剣に捉えるようになったとも言えます。

人生100年時代を意識したライフデザイン思考が、今後女性の価値観・生活行動・購買変化にどのような変化をもたらすのか?」。これを常に予測しながら新しいマーケティング施策を実施していく必要があります。

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