生活意識・購買意識を地図上に可視化、「サイコグラフィック」×「地図情報システム」という新しいマーケティング視点
デモグラフィック(年齢・性別・家族構成などの人口統計学的属性)、サイコグラフィック(価値観・ライフスタイルなどの心理的属性)、そしてジオグラフィック(居住地・地域などの地理的属性)。この3つを掛け合わせることで、生活者理解の解像度は大きく上がるといいます。生活者の価値観やライフスタイルを地図上で可視化する手法は、ヘルスケアマーケティングや女性マーケティングにどのように活用できるのでしょうか。技研商事インターナショナルが解説します。
価値観を“地図化”するという発想
マーケティングでは、性別や年代、家族構成といった「デモグラフィック」属性を軸に顧客を捉えるのが基本です。しかし近年は、価値観やライフスタイルといった「サイコグラフィック」要素も分析軸として定番化しつつあります。ヘルスケアや美容領域のマーケティングでも、「誰が」だけでなく「どんな意識で健康や美容と向き合っているか」を捉える視点が欠かせなくなっています。
デモグラフィックが年齢・性別・年収・職業といった客観的な属性を指すのに対し、サイコグラフィックは価値観やライフスタイル、購買意識など主観的・心理的な属性を指します。同じ「30代・単身」でも、キャリア志向か子育て優先かで響く商品もメッセージも変わり、デモグラフィックだけでは「なぜ買うのか」という購買動機まで説明しきれません。
サイコグラフィックは本来、アンケート調査などで個人単位に把握されるデータですが、これを地図上、つまりエリア単位で可視化・分析する手法があります。本稿の図版は、当社のGIS(地図情報システム)「MarketAnalyzer」を用いて、サイコグラフィックデータをエリア単位に集計・地図化したものです。「どのような価値観を持つ生活者が、どのエリアに多く住んでいるか」が見えることで、出店戦略や販促エリアの選定、広告配信先の精度を高めることができます。たとえば「いつもキレイでいるために、毎日手間暇をかけることはいとわない」という一つの意識項目を首都圏地図に落とし込むだけでも、価値観の高いエリアが特定の沿線・駅に偏って分布している様子が浮かび上がります(図1)。
エリアで見る「バリキャリ」と「子育てママ」
中目黒、恵比寿、吉祥寺、自由が丘、武蔵小杉、二子玉川、流山おおたかの森。MarketAnalyzerで集計した7駅・徒歩10分圏の商圏データを、デモグラフィックとサイコグラフィックの2軸で整理すると、興味深い対比が見えてきます。
恵比寿・中目黒・自由が丘・吉祥寺の4駅は、単身世帯比率や年収1500万円以上比率が高い「高所得・単身/DINKs」型のデモグラフィックが共通します(詳細は図2)。しかしサイコグラフィックでは、恵比寿は「キャリア・自己投資」、中目黒は「感性・自分らしさ」、自由が丘は「上質・こだわり」、吉祥寺は「個性・カルチャー」と、同じ高所得層でも重視する価値観がはっきり分かれます。
一方、武蔵小杉・二子玉川・流山おおたかの森の3駅は、子育て世帯や若い年齢層が厚いデモグラフィックが共通します(詳細は図2)。サイコグラフィックでは、武蔵小杉は「効率・両立・利便性」、二子玉川は「質・教育・ブランド」、流山おおたかの森は「子育て・安心・タイパ」と、同じ「子育てママ」層でも優先順位が微妙に異なります。
2駅を詳しく比較する、恵比寿×流山おおたかの森
対比が最も分かりやすい2駅として、「バリキャリ」の象徴である恵比寿と、「子育てママ」の象徴である流山おおたかの森を詳しく見てみます。恵比寿は単身世帯が66.9%を占め、共同住宅、中でも高層マンションが目立つ「単身・DINKs」の街です。「ネームバリューのある地域で暮らしたい」という意識は全国平均の1.85倍、中食利用も1.59倍と高く、キャリアと時間に投資する生活者像が浮かびます。
対して流山おおたかの森は、3人・4人世帯が合計46.2%を占め、0〜9歳人口比率も21.9%と高い、平均年齢32歳の若いファミリータウンです。教育費支出は県平均の1.38倍、「子どもと過ごす時間」を大切にする意識も1.19倍と、子どもへの投資が生活の中心にあることがうかがえます。ネームバリュー意識も1.18倍とあるものの恵比寿ほど突出せず、ブランドよりも実利や家族時間を優先する街だとわかります。
同じ「高所得エリア」でも、お金と時間の使い道がまったく異なることが、MarketAnalyzerのデータからも明確に見えてきます。
ヘルスケア・美容領域への応用
サイコグラフィックデータには、健康意識や美容意識、購買時に何を重視するかといった項目も含まれます。これをエリア単位で可視化できれば、「どのエリアに、どのような健康・美容意識を持つ生活者が多いか」が具体的に見えてきます。店舗立地の検討はもちろん、エリアごとの販促メッセージの出し分けや、生活者の意識に合わせたメディア選定にも応用できる視点です。
デモグラフィック、サイコグラフィック、そしてジオグラフィック(地理的要素)。この3つの軸を掛け合わせることで、生活者理解の解像度は大きく上がります。「誰が」「どんな意識で」「どこに」暮らしているのか。これを立体的に捉える視点は、これからのマーケティングにますます求められていくはずです。
【編集部おすすめ記事】
■ヘルスケアマーケティングで強化したい、3つの施策
■女性の注目を集めた、マーケティング事例41選
■女性の健康意識・健康行動・ヘルスリテラシーがわかる調査記事、63選
■女性の消費行動を性差視点で分析 マーケティングに反映できる記事5選
■女性ヘルスケア白書 市場動向予測2026 健康トレンド・業界動向・女性ニーズ



























