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女性検査用パンツ、医療機関で導入広がり20万枚を突破 「社会の意識がようやく追いついた」 日本シーエイチシー

医療機器製造の日本シーエイチシー(東京・中央)が販売する、パンツを着用したまま婦人科検診を受診できる「女性検査用パンツ」。好調に販売数が伸び、今年3月に20万枚を突破した。社会の意識変化が、後押ししたようだ。同社の古川裕祥社長に話を聞いた。

『⼥性検査⽤パンツ』

【出典】日本シーエイチシー(女性検査用パンツ)

 

女性検査用パンツは、下半身に何も着用しないまま婦人科で診察を受ける女性の気持ちに配慮した、使い捨てタイプの不織布製パンツ。股の部分に切り込みが入っているため、露出部を狭くして検査を受けられる。婦人科検診での「恥ずかしい」を軽減して子宮頸がん検診の受診率向上を図ろうと、当時の福島県立医科大学の渡辺久美子助教が2014年に考案。2015年に日本シーエイチシーが医療機関向けに販売を開始した。

だが当時の世間の関心は薄く、全国の医療機関を回って話をしても、導入の必要性を全く感じてもらえなかったという。「医師の方々は、子宮頸がん検診の低い受診率に課題を感じてはいたものの、女性の“恥ずかしい”という気持ちにまで配慮する意識は乏しかった。医師の立場からすれば、検診は病気を発見し命を守るために不可欠なものであるため、恥ずかしさ軽減の重要性を理解するのは難しい。特に男性医師は、女性の“恥ずかしい”に共感しづらいこともあり、導入は全く進まなかった」と当時を振り返る。その後2020年に、個人が直接購入できるよう大手通販サイトで販売を開始するも、コロナ禍による受診控えから需要は掴めず、販売数はここでも思うように伸びなかった。苦戦が続く中、転機がやってきたのは2023年。NHKの情報番組で紹介されると、たちまち話題に。放送後はメールや電話による問い合わせが殺到し、SNSには「こんなものがあったのか」「待ってました」と喜ぶ女性の声で溢れたという。社会の関心が女性の健康に向けられていたフェムテックのトレンドも追い風となり、メディアからの取材も増えた。それからは、個人の購入も医療機関での導入も瞬く間に広がった。最近は、検査用パンツ着用の意義を認める医師が増え、古川氏は「ようやく、社会や医師の意識が追いついてきた」と語る。

現在、同製品を導入しているのは、がん研有明病院(東京・江東)や山王病院(東京・港)、長野市民病院(長野)など、全国約60の病院と約90の婦人科クリニック。検診受診者は、無料または一部料金を負担する形で検査時に着用できる。自治体による無償配布も広がり、2023年9月に愛知県豊明市が全国で初めて導入したのを機に、現在、約10の自治体で導入検討が進められているという。

古川氏が目指すのは、検診時のパンツ着用が当たり前になる社会。「大腸がん検診でパンツ着用が当たり前になっているのと同様に、子宮頸がん検診でも同じ状態になることを目指したい」と意気込む。 「検診受診率が向上することで、少子化という日本の課題にも貢献できる」とし、今後のさらなる普及拡大を掲げる。今後の目標は、「来年の春までに38万枚、2030年に380万枚」。医療機関や自治体での導入拡大とともに、今後は企業の福利厚生サービスとしての提供も進めたいとしている。

 

 

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