この春、医療業界で脚光浴びるのは女性薬剤師
医療ドラマと言えば、いつもスポットライトを浴びるのは医師。とりわけドラマチックな決断が必要とされる外科医が主人公の場合は、医療ドラマの中でも特に人気だ。とは言っても、「医療モノ」と「刑事モノ」の制作・放送に極端に偏っている日本のドラマ業界に辟易としている視聴者は大勢いる。この春も例によって新たに医療ドラマが始まり、「またか…」という声が聞こえてきそうだが、フジテレビが4月から放送を開始する「アンサング・シンデレラ」はこれまでの医療ドラマとは少々異なる。
アンサング・シンデレラの舞台は相変わらず病院ではあるが、主人公の仕事は病院薬剤師というこれまでにはない新しい設定。主人公を演じるのは石原さとみさんで、病院の薬剤部で患者の薬の調剤・製剤を行う病院薬剤師を縁の下の力もちとして描いていく。原作は「月刊コミックゼノン」で連載中の「アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり」で、2018年からの人気連載。知られざる薬剤師の奮闘をリアルに描写したヒューマンストーリーとして医療従事者のみならず絶賛の声があがっていることからドラマ化に至ったという。
実際にネット上には「薬剤師が主役って新しい」「日の当たらない部署にいる薬剤師の役を石原さとみさんがどのように演じるのか楽しみ」という意見が並び、話題集めにある程度は成功している様子。「主人公が医師ではないので、いつもの医療ドラマとは確かに趣向が違うが、結局は医療ドラマ。医療ではない真新しいドラマを観たい」という声も見られるが、このドラマ放送にはエンターテイメントとは別の視点で期待できることがある。
それは、視聴者のヘルスリテラシー向上や医療業界への関心の向上だ。普段は深く接することのない薬剤師の業務内容をドラマを通じて知ることで、地域の薬剤師とコミュニケーションが生まれるきっかけになるかもしれないし、ドラマの主人公に何かしら共感することで親近感が出て「真面目に服薬しよう」「健康について相談してみよう」という気持ちになる人もいるかもしれない。ネット上には業界人と思しき人らによる以下のような意見も散見され、業界と生活者の関係性への好影響もすでに感じさせる。
- 「薬剤師は薬を棚から取り出すだけの人」と思われているが、実際は、患者に誤った薬が渡らないようにする最後の砦を担っている。このドラマを機に薬剤師の仕事の重要性や必要性を理解してくれる人が増えてほしい
- 病院で患者を支えているのは医師や薬剤師だけではない。管理栄養士、介護士、福祉や保育など、もっといろんな職種にスポットを当てたドラマを展開してほしい
- かかりつけ薬剤師の地域での活躍が期待されている今、その必要性が理解されるきっかけになれば
実際に放映が始まりどのような反響があるのか?どのような好影響が生まれるのか?そんな、ヘルスケア業界視点でこのドラマを見るのも、一つの楽しみ方になるかもしれない。この春は、全国の女性薬剤師に注目が集まりそう。
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