女性の心を掴む仕掛け「日本っぽさ」 各社の事例(2/2)

3.「ギフト」ではなく「手土産」。ビジネスシーンに合わせたデザインと表現

丸の内ドットコムは、丸ビル、新丸ビル、丸の内オアゾなど丸の内に並ぶ店舗・施設のショップ情報やグルメ情報が掲載されている情報サイトだ。その中で注目したいのが、「特選手土産」と「特選レストラン」のページだ。ビジネスマンやビジネスウーマンなど大人の街のイメージ、という丸の内の特徴に合わせたコピーと上品で落ち着きのある和のロゴが目を引く。

ファッションやメイク、ライトで派手な食事や飲み会を楽しむ新宿や渋谷など若者が多く集う場所なら合わないコピーとデザインも、ビジネスシーンを連想させる丸の内ならしっくりくる。街の特徴をよく捉えたデザインだ。ギフトではなくあえて「手土産」と表現しているのも、和心を感じさせる。

こちらは特選レストランの紹介ページ。上と同様、ビジネスシーンでの利用を想定。落ち着きのある和のロゴが、「落ち着いて会食ができる」イメージを連想させる。

地域色を前面に出して成功している事例

地域の伝統食をランチメニューに盛り込む、地域独特の習わしを体験出来る宿泊プランの提供、地域のお祭りの魅力を再定義し大々的にアピールする、地域特産品でご当地グルメを開発する、地域特産品を生かしたスキンケア商品を旅館のアメニティグッズにする、など地方を魅力的に見せる方法も様々だ。

地域の魅力を活かすなら、「ここの地域の魅力は何だろう?どんな伝統・文化・特産品があるんだろう?」を再度見直して新たな魅力を発見してみよう。自分たちにとっては当たり前でも、他の地域からは「面白い!」ということは多い。地域資源をうまく活用してPRに成功している事例を見てみよう。

4.地域資源をふんだんに活用 話題を集め続ける星野リゾート

地域資源を活用して常に話題を集めているわかりやすい事例は、星野リゾートが運営する旅館だ。地域の魅力を打ち出す温泉旅館ブランド「界」シリーズからは学べることが多い。界シリーズの一つである「界出雲」は、島根県松江市にある温泉旅館。島根県と言えば出雲、出雲と言えば神が集まる場所。神秘的なイメージは島根県ならではだ。それを活かしたのが「神話滞在プラン」。

  • 出雲鍛造で神話を描いた行燈を部屋で灯すと、壁一面に神秘的な影絵が浮かび上がる
  • 島根の伝統芸能「石見神楽」と呼ばれる神様に捧げる舞は、毎夜鑑賞できる
  • 朝食は、神様とのご縁をより強くする「神饌朝食」。神饌の要素を忠実に再現

青森県三沢市にある青森屋でも、青森ならではの特徴をプランに盛り込み、冬国ならではの過ごし方を提案している。滞在中の様々な場面で「青森」を体験できるので、観光に出かけなくても館内にいるだけで満足度が高い。貸し浴衣は全国でもはや定番しているが、青森屋では灯篭・半纏・湯たんぽを貸し出している。

露天風呂を囲む池にねぶた灯篭を浮かべる冬の風物詩「ねぶり流し灯篭」を見ながら入浴を楽しめる。以下の動画をご覧頂きたい。青森屋に行ってみたくなる読者は多いのでは!

5.域特性を生かした47種類のビールがヒット

昨年5月、キリンビールは都道府県別に47種類の一番搾りを発売、見事に各地で話題を集めてヒット商品となった。実際に見かけた・飲んだ、という読者も多いのではないだろうか?各地域の風土・気質・食文化・県民性などを、味覚、パッケージ、アルコール度数で表現するという試みは各地域で消費者の興味を引き「自分の出身地のビールはどんな味なのだろう?どんな風に表現されているのだろう?」という、一番搾りの新しい楽しみ方も提供したと言える。

同社は地域の特性を引き出すため、都道府県ごとに地元の食や伝統芸能といった専門家や地元情報誌の編集者らとワークショップを開催したり、地域特性に合わせた営業活動やプロモーションを行ったという。

従来の「一番搾り」では全国共通だったマーケティング戦略も、今回の商品では地域ごとの特性に応じてカスタマイズ。TVCMやポスター、新聞広告も地域ごとの商品コンセプトを盛り込んで47パターン制作した。(引用:じゃらんとーりまかし2016年12月号,31p)

6.大河ドラマから誕生した「三成めし」、歴女に人気

2016年の大河ドラマ「真田丸」に登場した石田三成にちなんだ「三成めし」は、出生地である滋賀県長浜市と、隣接する米原市、長浜市限定で食べられる飲食メニューだ。「石田三成のエピソードにちなんだ商品」「石田三成をイメージした商品」「3市のいずれか(または全部)が石田三成ゆかりの地であることがPRできる商品」のいずれかに該当していることが認定基準。

歴史上の人物を活かした菓子や小物類は全国各地でよく見かけるが、人物をイメージした食事ができるのは珍しく、歴史好きにはたまらない。その地域ならではの歴史を紐解き、地域資源を存分に活かして地域をPRした事例だ。

他、放送中には石田三成本人を広告する、滋賀県による動画も制作され視聴回数は140万回を超えている(2017年1月26日)。あまりにも手作り感満載で突っ込みどころも満載だが、そこがまた受けてるようで、コメントは多く話題性は高い。

7.秋田犬をアピール、国外からも注目

秋田県大館市の公益社団法人秋田犬保存会は、同県原産の秋田犬を国内・国外にアピール。東京では秋田犬を連れて散歩するイベンドが毎年開催。昨年は銀座中央通りに秋田犬25頭と男鹿なまはげが登場し、通行人を楽しませながら秋田県をPRした。支部は北米、台湾、ヨーロッパ、ロシアなど海外にも複数あり、近年は外国人の秋田犬ファンを増やしている。同会は秋田犬の保存を目的として設立・運営しているが、秋田犬の愛くるしい姿が秋田県のPRに大きく貢献している。

ご当地系はグルメだけではない!ご当地コスメも人気

地方の人気者(物)といえば、ご当地グルメや野菜や菓子など地域特産品だが、今後は女性の間でご当地コスメにも熱い視線が寄せられそうだ。オーガニック志向や、国内の安心・安全な物を肌に使いたいというニーズが高まっていることも後押しとなるだろう。

先日ウーマンズラボでもご紹介したが、人気美容雑誌「美的(小学館)」が、生活雑貨を扱うロフトとご当地コスメを紹介するプロジェクトが始まった。全国各地に眠る希少美容成分に着目しており、各地域資源を生かした商品が揃う。馬肉の生産量日本一の熊本県からは馬油を使用した多機能オイル。秋田美人で有名な秋田県からは、秋田の原産米を原料に、伝統的な発酵技術で製法した米ぬか発酵エキスを配合した洗顔料。他の地域で作られたものより抜群の説得力がある。地域特産品などの地域資源を大いに活用・PRしたご当地コスメはこれからの注目株だ。

 

 

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