ジビエビジネスの実態・動向・事例

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ジビエ利用・ジビエビジネスが、国の推進が後押しとなり、広がっている。実際に外食や小売をはじめ、農泊・観光や学校給食、ペットフードなど国内での活用事例が増えている。女性たちの間では「低カロリー・高タンパク」という点がダイエットに良いと好評価で、ジビエ女子という言葉も登場。また、新型コロナの影響による外出自粛もあり、ネット通販でジビエを注文する人は増加傾向にある。近年国内でジビエが注目されている背景やジビエ利用の実態と合わせ、レストランの提供メニューや商品などジビエの活用事例を調査した。

ジビエ利用、加速の背景と利用実態

ジビエとは?

ジビエ(gibier)とは、フランス語で「食材となる野生鳥獣」のことで日本語では「狩猟肉」と訳される。「今日はジビエ料理を食べよう」とか「ジビエを食べに行こう」といった使い方がされる。ジビエ料理に用いられる主な野生動物はシカ、イノシシ、野ウサギ、山鳩、真鴨、小鴨、尾長鴨、カルガモ、キジ、コジュケイ、カラスなどで、国内で特に食されているのはイノシシとシカ。イノシシとシカが特に食される理由は、野生鳥獣の被害のうち全体の約6割がイノシシとシカによるもので、この2種の捕獲頭数が大幅に増加しているからだ。

イノシシとシカの捕獲頭数

出典:農林水産省「捕獲鳥獣のジビエ利用を巡る最近の状況」

さらにここ数年で国内におけるジビエの認知が広がり、ジビエ料理を提供するレストランが増加。レストランのシェフが狩猟免許を持ち、自ら狩猟したジビエを提供するというスタイルの店もある。

ジビエ

【画像】Googleトレンド「ジビエ」

 

ジビエが注目されている背景

国内でジビエが注目されている背景には農林水産省の推進がある。農林水産省は農作物被害防止のために鳥獣の捕獲を進めるだけでなく、捕獲した鳥獣をジビエに変え、食材・外食・小売・観光・ペットフードなど、農山村の所得向上につながる地域資源として活用することを期待している。以下は農林水産省が公開している動画。

ジビエ利用の実態

国内のジビエ利用実態について。平成29年度の野生鳥獣のジビエ利用量は1,629トン。食肉として利用されている割合が75.5%、ペットフードとして利用されている割合が22.9%、その他が1.6%。食用として利用されている75.5%の中で、70.3%が食肉として流通販売されていて、そのうちの50%がシカ肉、19.9%がイノシシ肉となっている。

野生鳥獣のジビエ利用量

出典:農林水産省「野生鳥獣資源利用実態調査(平成29年度)」

 

ジビエ利用拡大に向けたこれまでの取り組み

ジビエ利用拡大に向けて政府は、市町村の取り組みを支援するため「鳥獣被害防止総合対策交付金」を実施している(平成24年以降)。これにより特にシカ・イノシシの捕獲数を増やすことや、ジビエ利用量増加を目標としている。

ジビエレストラン 全国マップ

一般社団法人 日本ジビエ振興協会」ではジビエ料理が食べられる、あるいは購入できる店舗を一覧で紹介。消費者は簡単に検索することができる。また農林水産省の「鳥獣被害防止総合対策交付金」による支援を受けているジビエ専門のポータルサイト「ジビエト」においても、ジビエ料理のお店や購入店舗を検索できる。

イベントカレンダー

先に紹介した2つのサイトではジビエに関するイベントも網羅。日本ジビエ振興協会のサイトでは主に「ジビエ解体処理講習会」の日程を掲載。「ジビエト」のサイトでは「ジビエフェア」や「日本猪祭り」など、より消費者に身近なイベント日程を掲載。

ジビエ料理コンテスト

農林水産省はジビエ料理普及啓蒙の一環で、2016年度から毎年1回「ジビエ料理コンテスト」を開催。2018年に開催された「第3回ジビエ料理コンテスト」の結果は以下。

外食ビジネスウィークでPR

毎年東京ビッグサイトで開催されている食産業の総合展示会「外食ビジネスウィーク」において、2017年・2018年に、日本ジビエ振興協会と農水省が共同で出展。飲食店などのバイヤー向けにジビエ料理の魅力をPRし、試食やジビエ肉の取り扱いのポイントに関するセミナーも行なった。2019年度も出展が決まっている。

農泊シンポジウムの開催

2017年に農林水産省が全国9カ所で開催した「農泊シンポジウム」では、「ジビエの取り組み」として、ジビエ料理が地域のブランド肉になりうる可能性や、農泊も兼ねた村おこしに有効活用できる可能性について、農林水産省の担当者が講演を行った。

ジビエ調理のプロフェッショナル育成

日本ジビエ振興協会は、ジビエ料理を自分の店でも提供したい、というプロ向けに「プロ向け 国産ジビエ 料理セミナー」を全国で無料開催している。ジビエ初心者でも、流通・取り扱い・加熱方法などの知識を習得できる。

国産ジビエ認証制度もスタート

より安心・安全にジビエを楽しむために、農林水産省は平成30年5月から「国産ジビエ認証制度」をスタート。対象は野生のシカとイノシシ。

ジビエ(捕獲した野生のシカ及びイノシシを利用した食肉)の利用拡大に当たっては、消費者から信頼される食品であるために、流通するジビエの安全性の向上及び透明性の確保を図ることが必要です。このため、平成29年度において、捕獲から流通に至る有識者から成る「国産ジビエ認証制度制定に関する専門委員会」において、衛生管理基準や認証体制等について検討を行いました。今般、農林水産省は、同委員会の検討を踏まえ、広く国民の方々からの意見等も募集し検討を重ねた結果、「国産ジビエ認証制度」として制定しました。(引用:農林水産省「国産ジビエ認証制度の制定について」)

その他、利用拡大における取り組みや体制の構築は「流通」「供給現場・処理加工」「安全性・衛生管理」それぞれの領域で進められている。

 

ジビエレストランの事例

「ジビエ」を食べログで検索、5,500件以上(全国)

食べログ内で「ジビエ」で検索すると、全国で5,500件以上ヒットする。フレンチやイタリアン、ビストロでの提供が中心だが、日本料理店での提供も増えている。郷土料理店、炉端焼き、炭火焼きの店でジビエの扱いが多い。

都内・都内近郊にあるジビエ提供店の事例

焼きジビエ 罠(東京、福岡)

(株)夢屋が手がける「焼きジビエ 罠」。八丁堀、五反田、新橋など都内を中心に5店舗展開。企業として「スローフード」「日本古来の文化継承」を掲げているため、その一環としてジビエの普及を目指している。ジビエこそ日本のスローフードと位置づけ、ジビエに精通したスタッフの育成や糸島にジビエ工房を設立するなど本腰を入れている。HP上で「低カロリー 高タンパク 女性の味方」と紹介し、女性にこそジビエ料理を食べて欲しいと訴える。店は混み、店内の女性比率も高い。口コミでは「癖がない味付けで初心者でも食べやすい」という声が目立つ。

一味玲玲3号店(東京・新橋)

一味玲玲では、鴨・猪・鹿・雉・羊の5種類の串焼きが一度に楽しめる「ジビエ焼き串セット」が人気。もともと中華料理店であるが、店で提供する火鍋で使う肉が羊肉であることから、ジビエ焼き串セットも人気に。羊2本とその他の6本セットで1,500円、羊のみの3本セットで980円とリーズナブル。

新宿寅箱(東京・新宿)

串打ちジビエと鰻串 新宿寅箱。ジビエを少しでもリーズナブルに、そしてちょっとずつ、いろいろな種類を楽しんでもらいたい、と考えたオーナーが思いついたのが「ジビエの串打ちスタイル」。焼き鳥のような感覚で女性でもジビエを楽しめる新宿の人気店。

房総獣肉センター(千葉)

主に千葉県内で「ホルモン闇番長」や「モツ親分」といった焼肉店を展開するスピル(株)が運営する飲食店グループのひとつ「房総獣肉センター」。羊・馬・イノシシ・シカはもちろん、他ではなかなか取り扱いのない珍しい鳥獣、ダチョウ、カンガルー、ワニ、スズメなどのジビエも食べられる。ある女性はブログで「経験値が上がった」とコメントしている。

ジビエ通販の事例

「ジビエ」を楽天で検索、約4,000件以上(全国)

楽天で「ジビエ」で検索をかけると約4,000件ヒットする。ヒグマやウサギ、海外産のものではあるがカンガルーといった珍しいジビエも簡単に購入できる。レビュー数が多いものや高評価のものは「ボタン鍋セット」「ステーキセット」「BBQセット」など。「ふるさと納税」の返礼品として利用する地域もある。

ジビエのペットフード

ペットも長寿化しているため、オーガニックや無添加、国産のペットフード市場の人気が加熱している。野生のシカ肉やイノシシ肉などは無添加で栄養豊富、そして国産であるため、ペットフードとしても好まれるようになっている。通販で簡単に入手可能。

ジビエのペットフード

出典:農林水産省「ジビエ利用拡大コーナー」

 

ジビエ料理のレシピ

ジビエ料理コンテストのレシピ

過去3回行われたジビエ料理のコンテスト受賞料理、入賞料理などのレシピが閲覧できる。

女性たちが作るジビエ料理のレシピ

クックパッドで「ジビエ」で検索すると233品のレシピがヒットする。臭みをなくすために下処理の仕方を詳しく解説したものや、牡丹鍋で知られる「イノシシ肉」の鍋料理のレシピが多く掲載されている。シカ肉のパテやテリーヌも人気レシピ。紹介されているジビエ肉はシカ肉、イノシシ肉が圧倒的に多いが「タヌキ」や「アライグマ」といったものも。

ジビエに関するお役立ち情報

ジビエ利用拡大コーナー(農林水産省)

農林水産省のジビエ専用サイト。ジビエに関するあらゆる情報が網羅されている。

日本ジビエ振興協会

ジビエを安全な食肉として利用するために捕獲・流通・調理・加工に関するあらゆる情報を提供。また毎年開催されている「日本ジビエサミット」やジビエ肉の講習会なども行なっている。全国ジビエ料理マップやジビエ料理レシピなど一般消費者も楽しめるコンテンツも網羅。

ジビエの歴史

古代から人々にとって貴重なたんぱく源であったジビエが身近なものでなくなってしまった歴史的背景や、ジビエレシピが掲載された1冊。詳細:ジビエの歴史

ジビエ教本

ジビエを極上のフランス料理に変えるための調理法・レシピ集。著書はジビエ料理専門店「ラ シャッス」のオーナーシャフである依田誠志氏。詳細:ジビエ教本: 野生鳥獣の狩猟から精肉加工までの解説と調理技法

ジビエ料理大全

鴨、鳩、雉、鹿、野ウサギ、イノシシなどのジビエ料理のレシピや品質チェック法、栄養学などが網羅されている1冊。詳細:ジビエ料理大全―野鳥獣の特性と調理の秘訣が一冊で学べる

 

ジビエ女子「エコでスローフード!」

ジビエといえば、男性の好む肉というイメージが強いが、最近は「ジビエ女子」という言葉もあり、グルメ好き・肉好き・肉食女子からの人気も高い。赤身がメインで脂質が少なくてヘルシー、鉄分やミネラルなどの栄養素が豊富、ダイエットに良いという理由もあるが、「これぞ肉!といった旨味と食べ応え」、そして「ワインにベストマッチ」するのがジビエの魅力。

また最近はジビエに「エコ」「スローフード」というイメージを持つ女性も増えている。ジビエブームはまだまだ始まったばかり。これまでは高級フレンチで食べるジビエが一般的であったが、ハンバーガー、ラーメン、コロッケ、カレーなど身近な料理でもジビエの扱いが増えれば、ブームはさらに盛り上がりそうだ。

 

女性の健康食品の選択基準は?

小林製薬の紅麹サプリを巡る問題で、健康食品への不信感や動揺が消費者の間で広がっています。特に男性よりも健康意識・健康行動者率が高い女性による “健康食品の摂取控え” が懸念されることから、健康食品を普段摂取している20〜70代女性を対象に、健康食品に対するイメージの変化や、今後の摂取意向、今後の健康食品の選択基準を調査しました。女性たちのリアルな声からは、今後の健康食品の開発・販促・コミュニケーション設計のヒントを見つけることができます。詳細は「紅麹サプリ問題で、健康食品の選択基準に変化 女性消費者分析でわかった88キーワード」へ。

紅麴サプリ問題 女性消費者動向分析

 

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