フェムテック市場どうなる?国内外の最新動向・課題・未来予測2021(2/4)

国内市場の動向

国内では女性起業家を中心に、ベンチャー界隈で2年ほど前からフェムテックが盛り上がってきたが、今年に入ってからは動きが急加速。大々的に取り上げるマスメディアが増えたことで一般にも広く知られるようになり、大手の参入も活発化している。現在の国内動向の特徴は3つ。

市場の主役は非デジタル系

フェムテックのプロダクトは国内でも急増しており、その数は2019年の50から2020年には97へ(フェルマータ調べ)。その中で特に集中しているのは、次の4カテゴリー。

  1. 生理ケア
    例:生理吸収ショーツ、月経カップ、タンポン、生理管理アプリなど
  2. 妊産婦の健康
    例:骨盤底筋トレーニングアイテム、妊活・妊娠サポートアプリなど
  3. セクシャルウェルネス
    例:デリケートゾーン専用化粧水、セックストイ、セルフプレジャー、性病郵送検査キットなど
  4. 健康全般
    例:オンライン診療、生理周期に合わせたアロマオイルなど

中でも特に脚光を浴びているのは、生理ケアカテゴリーに入る生理ショーツや月経カップ、そして、セクシャルウェルネスのカテゴリーに入るデリケートゾーン専用化粧水やセルフプレジャーアイテムなど。最先端のデジタルテクノロジーを搭載したものというよりは、非デジタル系のアイテムが国内では目立つ。マスメディアが取り上げるプロダクトがどこも似たり寄ったりであることも影響し、女性たちの間でも特に認知が広まっているカテゴリーだ。

ただ上記のような言い方をすると語弊があるかもしれないので、ここで補足をしておきたい。業界やメディアで今脚光を浴びているフェムテックは非デジタル系が主だが、開発者・開発企業が「フェムテック」と名乗っていない(あるいはメディアに登場していない)だけで、女性に特化したデジタル系プロダクトは国内にもたくさんある。

ヘルステックやメドテック界隈の専門メディアなどを見れば、そういったプロダクトを見かけることはできる。例えばウーマンズラボでも紹介した「LTモニタ」がその例。女性特有がんの手術後に発症しやすいリンパ浮腫に着目した3次予防プロダクトで、どちらかというと「メドテック」のイメージが強いが、こちらも、女性特有の健康問題に着目しているという意味では、フェムテックの範疇に入る。(詳細は以下記事に掲載)

 

主要ターゲットは若年層

上述の4カテゴリーを見てもわかるように、今のところ国内の大方のフェムテックが対象にしているのは、生理・妊娠・出産のある若年層(10〜40代)。更年期女性を対象にしたプロダクトも国内外でぼちぼちと出てきてはいるが、国内では少数。まだ数える程度しかない。人口ボリュームから考えても市場性はあるのだが、ヘルスケア業界全体で知見が蓄積されていない領域であること、また、企業・商品のロールモデルが少ないこと、そして更年期症状は個人差が大きく症状も背景もまちまちで複雑であることなどが障壁となり、新規プロダクトの登場はベンチャー、大手ともに、依然乏しいのが現状だ(ただし、業界内での関心そのものは近年急速に高まっている)。

もう一つ、若年層向けが多い理由として挙げられるのは、国内のフェムテック起業家は若手が多いこと。女性起業家は男性起業家と比べると、自身が経験したことのある領域で起業するケースが多いため、更年期を経験していない若手ではこの領域でのプロダクト開発が難しい。それなら、更年期をすでに経験したアラフィフ世代の女性が開発すれば良いのでは?と思うだろうが、そうなると今度は、この年齢で起業する女性が圧倒的に少ないという問題がある。海外では中年女性が起業するケースは多いが、日本においてはそうではない。

以上の背景から、日本のフェムテックは現状、若年層を対象にしたものが多い。

大手の相次ぐ参入

今年に入り大手がフェムテック領域に参入する事例が相次いでいる。今のところ非デジタル領域が主で、独自の自社開発というよりは、既存のプロダクトや発想を活用するなど、フェムテックブームをうまく活用する形で参入するケースが目立つ。ベンチャーの成功事例の後追い、ポップアップストア誘致、フェムテック企業との業務提携、フェムテックを活用した福利厚生などだ。以下は今年に入ってからの大手の事例一例。

  • 【伊勢丹】
    フェムテック専門店のポップアップストアを誘致(2021.2)
  • 【銀座三越】
    フェムテック専門店のポップアップストアを誘致(2021.3)
  • 【ラフォーレ原宿】
    フェムテック専門店を常設店として誘致(2021.3)
  • 【GU】
    生理用吸収ショーツを発売(2021.3)
  • 【イオン】
    フェムテック発想の骨盤底筋サポートショーツ発売(2021.3)
  • 【丸紅】
    フェムテック領域への参入にあたり、生理管理アプリとオンライン診療システムを活用した福利厚生制度を社内に導入(2021.3)
  • 【ユニ・チャーム】
    月経カップを発売(2021.4)
  • 【SOMPOひまわり生命保険】
    フェムテック企業と業務提携し、実証実験を実施(2021.4)

 

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