女性活躍推進法とは?制度誕生の背景と課題、働く女性のニーズ(1/3)

アベノミクス「三本の矢」の成長戦略の一つで打ち立てられた「女性活躍推進法」。国をあげた女性の社会進出を推進する同法案は、今日における女性社員や女性労働者のワークライフバランスとキャリア形成を変容させる大きな転換点となったが、果たしてどれほどの効果を発揮しているのか。施行により起こった社会変化と可視化された現状課題について、制度誕生の背景を踏まえながら見ていこう。

女性活躍推進法とは?

「女性活躍躍進法」ではその基本原則のもと詳細な基本方針が設定され、国や地方公共団体、民間事業主それぞれに「推進計画」や「一般事業主行動計画」が義務化された。合わせて推奨される厚生労働省認定の「えるぼしマーク」の詳細やメリットも見ていきたい。

女性活躍推進法の概要

正式名称を「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」とする「女性活躍推進法」は2015年8月28日に成立、続く2016年4月1日より第三次安倍内閣のもと施行された。「すべての女性が輝く社会づくり」を掲げて、すべての女性労働者が自分の個性と能力を発揮して、活躍できる社会を実現することを目的としている。

女性活躍推進法に基づき、常時雇用する労働者の数が301人を超える事業主には、「一般事業主行動計画」として数値目標を含めた行動計画の策定や情報の公表が義務付けられている。また常時雇用の労働者が300人以下の民間企業においてこの内容は努力義務とされる。

女性活躍推進法の基本原則

女性活躍推進法では三本の柱を基本原則と定め、国はその基本原則をもとに、より具体的な施策や取り組みの基本方針を策定しなければならない。また地方公共団体は同基本方針等を勘案した上で「推進計画」を定めることが努力義務とされる。基本原則の概要は以下の通りである。

  • 【基本原則内容】
    ・女性に対して、採用や昇進などの機会を積極的に提供し、その個性と能力の十分な発揮を目指すこと
    ・仕事と家庭の継続的な両立に必要な環境を整備すること
    ・仕事と家庭の両立については、女性本人の意思を尊重すること

性別による雇用差別の撤廃や管理職における女性比率の上昇を目指し、従来の職場の慣行で性別によって固定の役割分担が行われている場合などは、その影響に配慮することが望まれる。また会社と家庭の両立支援については、国が並行して取り組む「待機児童解消加速化プラン」や「放課後子ども総合プラン」などと共に大きな目標として掲げられる。一方、民間事業主は基本原則や基本方針に則った「一般事業主行動計画」の策定から労働局への届出、女性労働者への周知を外部への公表までが義務付けられる。この義務を果たすと、両立支援等助成金として「女性活躍加速化コース」に申請することができる。

  • 【民間事業主の義務】
    ・自社における女性の活躍状況と、課題分析
    ⇒採用の女性比率や管理職の女性割合、勤続年数の男女差、女性活躍についての状況把握など。
    上記の状況把握及び分析をもとに数値目標と取り組み内容を設定、それを含めた行動計画の策定、届出、公表
    ⇒課題を解決するための具体的な数値を公表し、都道府県労働局に届け出て、女性労働者に周知する。
    自社における女性の活躍情報の公開
    ⇒実際の女性社員の労働環境やキャリア状況などを提示する。

えるぼしマークとは

国はさまざまな方法で女性活躍推進法の周知を行っており、その施策の一つに「えるぼしマーク」がある。

「えるぼしマーク」とは女性活躍推進の取り組みをアピールできるマークのことであり、上記の実施状況が優良な企業に限り、厚生労働大臣から「えるぼし認定」を受けることができる。このためには女性活躍推進法に基づき、行動計画を策定して届け出を行うとともに、実施状況について申請する必要がある。また認定後は年一回以上、厚生労働省の該当データベースにおいて、認定基準に関わる実績や取組状況の更新が義務付けられており、満たさなかった場合は認定取消の対象となる。

  • 【認定段階】
    「えるぼしマーク」には3つの認定段階があり、段階に応じてマークの星部分が変わる。その際の認定基準は5つ存在し、そのうちいくつの項目を満たしているかで段階が変化していく。1∼2を満たせば1段階目、3∼4を満たすと2段階目、5つ全てを満たしたときに最高位の3段階目となる
  • 【認定基準】
    ・採用…男女別の採用競争倍率が同程度であるか
    ・継続就業…男女ともに継続して働きやすい環境であるか、勤続年数に過度な男女差が生じていないか
    ・労働時間…労働者の法定時間外労働や法定休日労働時間の合計の平均が各月ごとに45時間以内か
    ・管理職比率…管理職の女性比率が産業毎の平均値を上回っているかなど
    ・多様なキャリアコース…再雇用や非正規から正規への転換など、個人のキャリアに対応した環境があるか
  • 【メリット】
    ・「えるぼしマーク」を取得した企業は、商品、広告、求人票などにマークを使用し、アピールできる
    ・国が発注する工事など税金を使って行われる契約全般を指す公共調達で、加点評価が得られる
    ・日本政策金融金庫を利用する場合、低金利融資を受けられる
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