女性が商品・サービスを買わなくなる理由

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女性が商品・サービスを買わなくなる理由はさまざまだが、今回は「細部までの配慮の有無」に着目して考えてみたい。「細部までの徹底した配慮がなかったから購入をやめた」というケースが実に多いからだ。

細かい部分まで気が付く女性たち

プライベートでも仕事でも、女性は細かいことまでよく気が付くものだ。男性読者の皆さんも日頃からそのように感じることが多いのではないだろうか。女性支配人を積極的に登用し社長も女性、という東横インの以下の言葉は的を射ている。

「東横インでは先代の社長が女性支配人の登用を始めており、これは『女性のこまやかな心遣い、綺麗好きなところ、近所付き合いが上手なところ、家計のやりくり上手なところ、こうしたところはすべて女性の気質であり、女性の感性がホテルづくりには大切』という考えからだという。支配人のうち97%が女性という数字からも、同社での女性の活躍ぶりがうかがえる。」(詳細:東横イン成長の鍵は、女性社長の「女性視点」「気遣い力」)

これをマーケティング視点で考えてみると、つまりは「女性は、商品・サービス・企業に対しても細部までをチェックしている」ということだ。どういうことか?例えば以下の事例が挙げられる。

例.1 居心地の悪い飲食店

飲食店に行ったら、前/隣の客と自分の間に間仕切りがない、あるいは距離がとても近い。店舗側としては少しでも席数を増やして売上につなげたいのだろうが、女性客側としてはとても居心地が悪い。特に男性客が多い店舗だとなおさら!その飲食店が提供するメニューは好きでも、居心地の悪さから再来店することはないだろう。

例.2 固い調味料のフタ

ある液体調味料のフタは、開けるのも閉めるのも堅い。開けようにも、出っ張りが小さいために開けにくい。フタを閉めようとしても閉まらないので、こぶしで思い切り上からドン!とたたくと、注ぎ口に残っている液体がぴしゃっと自分に飛んでくる。洋服が汚れることもある。商品の質は問題ないが、使い勝手の悪さから次回からは他社商品を購入するようになるだろう。

例3. 大量に配信される通販サイトのメルマガ

ある大手通販サイト。一度買い物をすると大量にメルマガが配信されてくる(このスタイルに不満を漏らすユーザーはとても多いのに、一向に改善しない企業姿勢には疑問を感じる)。中には、あえて解除方法を複雑にしているケースも。別の通販サイトは、商品を購入しても大量にメルマガが届くことはないし、売り込みもない。次回からはそちらを利用するようになるだろう。

例4. フードカバーがない惣菜コーナー

食品スーパーの惣菜コーナー。フードカバーやショーケースで囲うことなく焼き鳥や天ぷら、とんかつが並べられている。しかも小さな子どもの目線の位置にあるので、子どもが簡単に触ることもできるし、つばが飛んでいるかもしれない。店内に舞うほこりも付着していそうだ。特にインフルエンザが流行する冬の時期では買う気がうせてしまう。焼き鳥や天ぷらは欲しいが、不衛生という理由で購入されないだろう。

企業が見落としやすい、「いたって基本的なコト」

例1の飲食店。なぜ店舗責任者や店舗スタッフは「この狭さでは客は居心地悪そうだ…」と気付けないのか?例2の調味料のフタ。なぜボトルデザインの担当者は「フタが開けづらいし閉めづらい」ことに気付かないのか?例3の大量配信メルマガ。なぜメルマガ配信担当者は「俺・私だったら、こんなに毎日毎日配信されたら嫌になっちゃう」と気付かないのか?例4のフードケースがない惣菜コーナー。なぜ、店長もスタッフたちも誰も「不衛生だ」と気付かないのか?

企業の各担当者は、一消費者でもある。消費者の立場なら感じることができる不満や不便は、なぜか企業の立場になった瞬間に気付けなくなってしまうから怖い。高度な技術開発や大々的な設備投資、緻密な接客マニュアル、AIなど最先端な取り組みなどに着手せずとも、いたって基本的なコトに立ち返ってみるだけで、改善点、つまり購入者を増やすヒントはたくさん見えてくる。

自社商品・サービスを「細やかな配慮の有無」の視点でチェック

例1~例4の事例でお気づきだと思うが、女性消費者は、些細なことがきっかけで買ってもくれるし、買わなくもなってしまう。女性マーケティング戦略では「細部の細部まで、どれだけ徹底した配慮ができるか?」が重要だ。人気の商品サービスは、画期的だったり他社より圧倒的に安かったりといった目立つ特徴は実はなく、単純に細部までの配慮が徹底されているだけ、というケースが意外に多い。

プライベートでも細やかなところまで気が付く女性たち。つまりは女性消費者たちは、商品サービスに対しても、良いコト・悪いコトどちらもすぐに気づいてしまうということだ。細部までの徹底した配慮がされているわかりやすい事例の王道といえば、ハイブランドや高級ホテル・高級飲食店だ。品質の高さだけではなく、店内空間、清潔感、不快にさせない接客、ブランディング、心地良くさせる買い物体験など、細部までの徹底した配慮がなされているからこそ、多くの人々に長い間、高い満足感を提供できているのだろう。

細部までの細やかな配慮を提供するのは、何も高価格帯を売りにしている企業だけの特権ではない。どんな商品・サービスでもできることはたくさんあるもの。例えば、先述のスーパーの惣菜コーナー。フードケースを導入するだけで女性客はお惣菜を安心して購入するようになる。

チェック項目一例

女性目線で「どんなところに配慮できるか?」今一度、自社商品・サービスを見直してみてはどうだろうか。その際は何も大々的にお客様アンケートやネットリサーチなどを行う必要はなく、自社の女性ワーカーに意見を聞くことから始めるだけでも多くの気づきを得られる。どのような「基本的なコト」が見落とされやすいのか?以下に一例を掲載するので参考にしていただきたい。いずれも本当に些細なことばかりだ。

  • 初回は安く購入できるが2回目以降の購入は価格が高くなる上に、解約ができないという縛りをしてないか?
    ⇒(例)化粧品、健康食品の通販に多く見られがち
  • 会員登録、メルマガ登録の際に多くの情報入力を求めていないか?
    ⇒(例)住所、年収、職種、電話番号、家族構成など
  • 英語表記な上、読みづらい、覚えづらいネーミングを採用していないか?
    ⇒(例)特に化粧品は読みづらいネーミングが多い
  • 顧客対応がぶっきらぼうになっていないか?
    ⇒(例)病院の対応はその代表格
  • 商品説明が複雑になっていないか?
    ⇒(例)車、家電製品、パソコンなどが該当。Apple製品のように直感的に理解できるものは◎
  • HP、使いづらい設計になっていないか?
    ⇒(例)楽天市場は、Amazonと比較して「ごちゃごちゃして使いづらい」という不満が多い
  • 不快な表現を用いたプロモーションを行っていないか?
    ⇒(例)下着メーカーの広告記事、消費財メーカーの動画など、女性に不快感を与えて炎上を招いている
  • 過剰接客になっていないか?
    ⇒(例)百貨店の過剰接客を嫌がる客は多いが、いまだに過剰接客は定番だ。昨年、アーバンリサーチが実施した「声かけ不要バッグ」は話題になった
  • 接客時の「清潔感」を大事にしているか?
    ⇒(例)タクシードライバーの臭い対策、飲食店店員の身だしなみ対策(爪や髪の毛)など
  • 実は客から見えている場所は汚なくなっていないか?
    ⇒(例)小料理屋、ラーメン屋、居酒屋など、調理場がチラリと客から見えてしまう飲食店
  • 専門用語を多用して難しい見せ方になっていないか?
    ⇒(例)医療系メディア、大学や研究機関のリリース(論文など含む)、健康食品のエビデンス紹介パンフレットなど。業界人ですら読み込みに時間がかかるのに、一般消費者はさらに理解に苦しむ
  • webメディアに広告を挟み込みすぎてないか?
    ⇒(例)「広告を消そうと思ったら間違ってクリックして他サイトに飛んでしまった」「広告が多すぎてどこからが記事なのか分かりづらい」「スマホの小さな画面に上にも下にも広告が表示され、肝心の記事が読みづらい」
  • ポイントカードの後付けができないという不便な仕組みになってないか?
    ⇒(例)大抵は数週間~1カ月以内の再来店で後付けしてくれるか、あるいは電話番号検索などでデータ上でポイントを付与してくれるが、後付け不可とする店舗もある
  • 個人宅のポストに大量にポスティングしていないか?
    ⇒(例)不動産、エステ、買い取り、食材の宅配サービスなど、大量のチラシがポスト投函されるが、多くはほぼ見られることなく即ゴミ箱行きだ。住人たちは大量のポスティングに日々うんざりしている
  • 「お手洗いは貸さない」と言っていないか?
    ⇒(例)たまに見かける「お手洗いは貸していません」コンビニ。印象は間違いなく悪い。反対に快く貸してくれる店舗は、ついで買いを期待できるし、「申し訳ないから、飲み物1本買って帰るか」という気持ちにさせる効果も期待できる
  • センシティブなシーンで、男性店員が接客をしていないか?
    ⇒(例)女性専門のアパレル店、リラクゼーションサロン、メイクサロン、美容医療クリニック、ウィッグ専門店など、センシティブな領域に関しては女性が対応してくれる方が「利用しやすい」と安心する女性客は多い
  • 「立ち入り禁止!」「触らないでください!」とやたらダメ出ししていないか?
    ⇒(例)ある帽子屋は店内に本物の車を置き、その車の上にたくさんの帽子を並べている。しかし同時に車の上に置いてあるPOPには大きな文字で「車には触らないでください!」と一言。買いたい!という気持ちに水を差してないだろうか(そもそも触ってほしくないなら、車に帽子を並べる手法はやめた方が良いと思うのだが)。あるカフェでは「長時間の利用は避けてください」「パソコンは開かないでください」「コンセントは使わないでください」と店内のあちこちにダメ出しの張り紙が……。

 

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