シニア女性のモビリティ意識、「免許返納」と「AIによる自動運転」に対する考え方を調査(50〜87歳)
ドライバーの高齢化や免許返納、公共交通機関の減便などが問題になるなか、AIによる自動運転など先進的モビリティに期待が寄せられている。シニア女性のモビリティ意識を、シニア向けの女性誌『ハルメク』のシンクタンク「ハルメク 生き方上手研究所」が調査した。
シニア女性の移動手段、地域差が顕著に
調査は今年4月に、50~87歳の女性577名に実施。普段の外出先への移動手段を聞いたところ、居住地域によって差が見られた。一都三県では「徒歩」「バス」「鉄道」の利用率がそれ以外の地域を大きく上回った一方で、それ以外の地域では「自動車(自分で運転する)」で移動する割合が高かった。年齢別では、70代の「自動車(自分で運転する)」が50~60代と比べて1割低く、「バス」の利用割合が高かった。
運転状況や運転免許の保有状況別に見ると、日常的に運転している人は、他層(たまに運転する人、ペーパードライバー、運転免許を返納した人、運転免許を持っていない人)と比べ、バスや鉄道などの公共交通機関の利用割合が低く、また徒歩での移動も3~4割低かった。
普段の運転状況や免許保有状況で異なる、免許返納の考え方
免許返納に対する考え方も聞いた。自由回答を集計した結果、回答者の “年齢による差” よりも “運転状況や運転免許の保有状況別による差” の方が大きかった。
自主返納に肯定的な人の割合は「運転免許をすでに返納した人」「運転免許を持っていない人」で4割前後だったのに対し、「日常的に運転している人」「たまに運転している人」では1割ほど。一方「日常的に運転している人」の4割、「たまに運転する人」の5割が「いずれは・時期が来たら」と、返納時期を具体的には定めていない。また「日常的に運転している人」の3割が、返納した場合に生活が不便になることを心配していることがわかった。女性たちからは、こんな声が寄せられた。
- 義父が90歳の時、周りの説得でようやく返納してくれたが、その後急激に認知機能が衰えた。返納は慎重にすべきと考えが変わった(女性56歳・福井県)
- 車を手放すと行動範囲が狭まり趣味も楽しめなくなる。一気に老化が進むのではないかと心配(女性70歳・宮城県)
- 元気なうちは運転して自由に動き回る方が健康的。返納して移動手段が減り、家に引きこもり認知症になってしまっては無意味(女性76歳・埼玉県)
AIによる自動運転の利用意向は2割も、今後に期待
AIによる自動運転の利用意向についても聞いた。「利用したい(すでに利用している+利用したい+まあ利用したい)」は24.3%、「利用したくない(利用したくない+あまり利用したくない)」は34.5%で、「利用したくない」がやや上回った。一方で自由回答では、「もっと進歩して安全になれば」との条件付きで期待する声が6割で、不信や不安を訴える意見を上回った。
- とても良いと思う。「高齢者がブレーキとアクセルを踏み間違えた」というニュースを聞くたびに早く実現すれば良いと思っている(女性60歳・東京都)
- 自動運転はありがたいと思うけれど、自動運転に必要なことを自分が判断できるのか心配になる。機械に弱いし、判断力も衰えてくるだろうから(女性61歳・滋賀県)
- 安全性が保たれるならば、高齢者やさまざまな不自由を抱えた方々の行動範囲が拡大して、大変良い状況が訪れる(女性71歳・神奈川県)
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