認知症・MCI女性の消費市場は8.2兆円、企業に広がる「認知症ビジネス」の商機

\9月は認知症月間/
2040年には、認知症またはMCI(軽度認知障害)の高齢者が約1200万人に達する見込みだ。認知症・MCIの高齢者による消費支出はすでに年間14.7兆円に上り、うち女性は8.2兆円。認知症の増加は社会への影響が大きい上に、当事者が抱える課題は日々の暮らしのさまざまな場面に及ぶため、医療・介護業界にとどまらず、幅広い企業が向き合うべき市場となっている。では、どこに事業機会があり、製品・サービス開発では何を押さえるべきなのか。9月の「認知症月間」に合わせ、市場規模、当事者ニーズ、事業領域、企業の開発事例、ヘルスケアサービスの指針まで、認知症ビジネスを考える上で役立つ記事をまとめた。

2040年、認知症・MCIは1200万人へ

認知症ビジネスを考える上で、まず押さえておきたいのが今後の患者数。厚労省研究班の推計では、2040年に認知症の高齢者は約584万人、MCI(軽度認知障害)は約613万人に達し、合わせて約1200万人に。65歳以上の3割を超える見込みだ。高齢になるほど認知症の有病率は上昇し、80代以降では男女差も拡大。90歳以上では女性の55.1%が認知症と推計されている。

 

認知症の人が見ている世界ってどんな感じ?

認知症を正しく理解する上で欠かせないのが、当事者の視点。認知症に関する情報は医療・介護者側から語られるものが多い一方で、本人が何に困り、どのように世界を見ているのかを知る機会は多くない。シリーズ累計30万部を突破した人気書籍『認知症世界の歩き方』では、認知症の人が見ている世界や、日常生活で感じる不便・困りごとをイラストとともにわかりやすく紹介。家族だけでなく、認知症関連の製品・サービス開発に携わる事業者にも役立つ。

 

認知症・MCI女性の消費市場、8.2兆円

認知症・MCIの人は、支援の対象であると同時に、巨大な消費市場を形成する生活者でもある。日本総研の推計では、認知症・MCIの高齢者による年間消費支出額は2025年に14.7兆円。うち女性は8.2兆円と、男性の6.4兆円を上回る。さらに、認知症になっても使いやすい製品・サービスの市場は、2050年に5312億円まで拡大する見込み。交通・通信、娯楽、家事用品、外食、理美容など対象領域は幅広く、業種を問わず新たな商機が広がっている。

 

認知症ビジネスは15カテゴリー

認知症関連ビジネスの全体像を可視化したのが、「認知症関連サービスカオスマップ」。認知機能チェックやブレインエクササイズといった予防領域から、保険、相続、金銭管理、コミュニティといった生活支援領域、見守りやVRによる認知症体験など、本人を支える家族や介護者に関わる領域まで、15カテゴリーに分類している。認知症を取り巻く課題が生活全般にわたることから、異業種が参入できる領域は幅広い。認知症領域の事業機会を俯瞰できる。

 

当事者とつくる、認知症ビジネスの事例

認知症の当事者と企業がともに製品・サービスを開発する「当事者参画型開発」。認知症の人を「支援する対象」だけでなく、「顧客」と捉え、当事者のニーズを製品・サービスに反映する取り組みだ。リンナイは福岡市の「認知症フレンドリーシティ・プロジェクト」に参画し、認知症当事者と協働でガスコンロを開発した。福岡市が参加企業に求めるのは、CSRやボランティアとしてではなく、認知症の人を「今の顧客、将来の顧客」と捉えること。当事者にとって本当に使いやすい製品・サービスの創出につながると同時に、企業にとっては新たな事業機会にもなる。社会課題の解決とビジネスを両立させる上で参考にしたい考え方だ。

 

認知症のヘルスケアサービスの指針

認知症領域では薬物療法の進化が見られるものの、未だ、認知症発症そのものの対策として十分に効果のあるものは確立されていない。こうした状況を背景に、認知症の予防や認知機能の維持などに用いられる非薬物療法について、エビデンスを整理し、実施の推奨度を示したのが、認知症関連6学会が策定した指針。運動療法や栄養療法、認知訓練、音楽療法などについて、認知機能の維持・低下抑制や認知症発症リスクの低減などに有用であるかを評価している。医療・ケアの専門家だけでなく、非薬物療法を開発・提供する企業も対象としたもので、認知症予防の製品・サービスを開発する際の参考になる。

 

認知症の増加で広がるビジネスケアラー市場

認知症の増加によって需要が広がるのは、本人向けの製品・サービスだけではない。家族の介護を担いながら働く「ビジネスケアラー」への支援も、新たな市場として拡大が見込まれている。ビジネスケアラーの負担軽減には、仕事と介護の両立を支えるだけでなく、介護そのものの負担を減らすことも重要で、そのためには要介護者・高齢者向けの商品・サービスの充実も欠かせない。「ビジネスケアラー支援市場」と「要介護者・高齢者支援市場」は相互に関係しており、認知症の増加に伴って、両市場でさらなる需要の拡大が見込まれる。

 

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