ジェロントロジーとは?超高齢社会で注目される学問と産業の可能性(2/2)

産業に特化したジェロントロジーの重要性

医療や介護を中心としていたこれまでのジェロントロジーでは、産業分野すなわちビジネス面における知識が不足していた。そこで近年特に注目されているのが「産業ジェロントロジー」。シニア世代の特徴や、産業分野における高齢社会のあり方を、ジェロントロジーの観点から解決することを目指している。

産業ジェロントロジーとは

産業分野に特化したジェロントロジーの取り組みのこと。数あるジェロントロジーの取り組みの中でもビジネスに直結した分野の一つで、世代による精神的・肉体的な差異に着目し、能力開発や労災防止、職場環境づくり、人材育成といった課題に取り組んでいる。産業ジェロントロジーについては、(一社)日本産業ジェロントロジー協会が教育・啓蒙活動を行っている。

産業ジェロントロジーの重要性

高齢化が加速する社会では、将来的に産業ジェロントロジーやジェロントロジーについて学ぶ重要性が高まることが予測される。企業に占めるシニア世代の従業員の割合は、今後増えていくことは必至で、企業の人事部門やマネジメントに携わる管理職は関連知識を備えておく必要があるからだ。シニア世代では、加齢とともに仕事に対するモチベーションや対応力の低下が懸念されるため、今のうちから「シニア世代の力を活かす方法」や「高齢者を含む組織のマネジメント能力」を身に付けておくことが肝心だ。

ジェロントロジーの関連資格とおすすめの本

ジェロントロジーや産業ジェロントロジーには、協会や学会により認定される資格がある。取得方法や特徴について紹介。

ジェロントロジーの関連資格

ジェロントロジー検定試験

  • 【概要】ジェロントロジーの基礎知識や、高齢者の力をビジネスに活用する上で必要な情報が身に付く
  • 【主催】一般社団法人 日本応用老年学会
  • 【受験概要】試験は年1回開催、四肢択一式で50問出題される
  • 【受験料】5000円(税抜き)

産業ジェロントロジー協会認定資格

日本産業ジェロントロジー協会では、「産業ジェロントロジーアドバイザー」「産業ジェロントロジーシニアアドバイザー」「産業ジェロントロジーインストラクター」の3つの認定資格を用意。資格取得後の目的に合わせて選ぶことができる。

  • 【資格名】産業ジェロントロジーアドバイザー
  • 【概要】加齢について正しく理解し、あらゆる世代が共に働きやすい職場づくりを支援し、日常業務におけるアドバイスができるレベルを目指す
  • 【主催】一般社団法人 日本産業ジェロントロジー協会
  • 【受験概要】登録後学習開始、学習で使うeラーニング内にてweb受検
  • 【受験料】33,480円(税込)

 

  • 【資格名】産業ジェロントロジーシニアアドバイザー
  • 【概要】シニア世代が働きやすい職場づくりのための企業内教育、仕組みづくりを担う。研修の企画立案、労務管理の仕組みづくりができるレベルを目指す
  • 【主催】一般社団法人 日本産業ジェロントロジー協会
  • 【受験概要】試験は5月と10月の年2回開催
  • 【受験料】81,000円(税込) ※アドバイザー資格取得者は48,600円(税込)

 

  • 【資格名】産業ジェロントロジーインストラクター」
  • 【概要】同協会の「産業ジェロントロジーシニアアドバイザー」養成講座の講師育成コース。入門講座の開催から始まり、最終的にはインストラクター養成講座を開催することを目指す
  • 【主催】一般社団法人 日本産業ジェロントロジー協会
  • 【受験概要】試験は11月の年1回開催
  • 【受験料】172,800円(税込)

ジェロントロジーの知識が身に付くおすすめの本

超高齢社会におけるさまざまな課題解決のために設立された、東京大学高齢社会総合研究機構によるジェロントロジーの入門書。2030年に予測される社会の実態と、豊かな長寿社会を迎えるためのポイントを紹介している。

2030年 超高齢未来 ―「ジェロントロジー」が、日本を世界の中心にする

ジェロントロジーの観点からシニア人材のマネジメントについて、教科書的にまとめた一冊。企業の人事現場でシニア人材をどう生かすべきか、特徴やコツについて解説している。

シニア人材マネジメントの教科書 ―老年学による新アプローチ

自分らしさがキーワードのジェロントロジー

ジェロントロジーの目的は、生活の質の向上。そこには“自分らしく幸せに”生きることが含まれている。当初、高齢者を介護と医療の視点のみで見ていたジェロントロジーは、現在は多面的に高齢者を捉える学問へと発展した。その背景には「急速に進む高齢社会」「人生100年時代の定着」「社会全体のダイバーシティ化」「クオリティーオブライフを重視するトレンド」など時代の変化がある。年齢だけで区分するのではなく、高齢者の可能性を最大限に広げる社会基盤をつくることこそがジェロントロジーが持つ最大の役割といえるだろう。

 

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