女性活躍推進法とは?制度誕生の背景と課題、働く女性のニーズ(2/3)

女性活躍推進法の背景と取り組み状況

政府が力を入れる女性活躍推進法の背景には、どのような状況と課題があるのか。「えるぼし認定」の現状を踏まえつつ、同法案が成立するまでに至った歴史的背景から、日本における女性労働者の課題について見ていきたい。

女性活躍推進法が必要とされる背景

女性活躍推進法が成立する前までにも、仕事と家庭の両立支援や、男女での均等な雇用管理の推進を目指してさまざまな取り組みが行われてきた。その取り組みの結果、女性の就業率は上昇したが管理職における女性割合の低さ(以下図)は依然として顕在しており、女性のキャリア形成の十分な支援には至っていない。女性活躍推進法は、その現状を受けてより具体的で包括的な施策として打ち出された。

女性差別・男女格差の現状を知ろう

<女性の社会進出支援をめぐる歴史>

  • 【1981年】多国間条約「女子差別撤廃条約」発効
    公平な女性の権利の為にあらゆる分野での男女同権を目指す
  • 【1985年】「男女雇用機会均等法」施行
    性別による採用で差別の禁止。婚姻や妊娠、出産による解雇の禁止
  • 【1991年】「育児介護休業法」施行
    男女問わず労働者からの育児休業申出の拒否や、解雇な不利益な取扱の禁止
  • 【2005年】「次世代育成支援対策推進法(※)」施行
    次世代を担う子供の健やかな育成のための環境整備を目指す
    (※)女性活躍推進法と同様に、行動計画の策定を行い一定の基準を満たすと、厚生労働大臣より子育てサポート企業として「くるみんマーク」を付与される

その他要因とされる背景

女性活躍推進法が必要とされる背景には「女性の社会進出」の他に、「労働力人口の減少」と「ライフスタイルの変化」もある。

  • 労働力人口の減少
    生涯未婚率の上昇や出産育児における環境の未整備などで出生率の低下が著しい少子高齢化社会によって、労働力人口の減少が不安視されている。出産を機に離職する女性は未だ約5割を占めており、仕事と家庭の両立支援の推進が目指される
  • 日本におけるライフスタイルの変化
    2000年を境に「共働き世帯」は「専業主婦世帯」よりも増加傾向となり、2014年「共働き世帯」は「専業主婦世帯」の倍近くに達した。こうしたライフスタイルの変化は女性の社会進出を背景としており、「女性活躍推進法」はライフイベントの多い女性労働者の働きやすい環境整備の促進に繋がったといえる

課題

今日では加速度的な少子高齢化に伴い、将来的な労働者不足が予想されている。女性も含めた多様な人材の活躍が要されるが、女性が社会で活躍する上では、仕事と家庭の両立をサポートすることが重要になる。しかしながら管理職の女性割合は少なく、職業生活における男女の地位に偏りを感じている人も多いのが現状だ。

世論調査結果

内閣府が実施した世論調査では、職場における男女の地位の平等感について、「男性の方が優遇されている」と回答した人の割合が半数以上を占めている。この結果は10年間であまり変化がなく、「女性の就業率の上昇」と「実際の女性の社会進出」が必ずしも一致しないことを示している。こちらの図は2007年度の「職場における男女の地位の平等感」調査結果。

続くこちらの図は2016年度の「職場における男女の地位の平等感」調査結果。

2つの調査結果を比較すると、さほど変化が起きていないことが明白だ。

  • 2007年度では「男性の方が優遇されている」が60.9%、「平等」が23.9%、「女性の方が優遇されている」が4.5%
  • 2016年度では「男性の方が優遇されている」が56.6%、「平等」が29.7%、「女性の方が優遇されている」が4.7%
  • 10年間で「男性の方が優遇されている」が4.3%減少し、「平等」が5.8%、「女性の方が優遇されている」が0.2%とわずかに上昇するにとどまった

女性活躍推進法の取り組み状況

ここ10年間の「職場における男女の地位の平等感」はさほど変化がないが、一般事業主による行動計画策定届の届け出数は上昇傾向にある。2018年6月末は301人以上の事業所の提出数は15,983件、300人以下は4,711件となり301人以上の事業所の届け出率は98.1%と高い水準を記録した。民間企業にとって女性社員の積極的な登用が推進されていることが窺える。また同時に「えるぼし認定」の取得企業数も上昇傾向にあり、行動計画の策定と取組が努力義務とされる300人以下の事業所でも認定取得は広まりつつある。

  • 【えるぼし認定企業数】
    ・2016年6月末:105件(段階1が0件、段階2が27件、段階3が78件)、300人以下の認定企業数7件
    ・2018年6月末:630件(段階1が2件、段階2が212件、段階3が416件)、300人以下の認定企業数147件
    ※参考:厚生労働省「平成29年版働く女性の実情」

「えるぼし認定」を取得した企業数はわずか2年で6倍となり、3段階評価となる段階別企業数で見ても最高位となる段階3となる企業数は全体の半数以上を占めている。国をあげて取り組む女性活動躍進法の成果が如実に表れた結果ともいえよう。

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