女性活躍推進法とは?制度誕生の背景と課題、働く女性のニーズ(3/3)

Category: データ分析
Share:

働く女性の潜在的なニーズと女性活躍推進の課題

続いては視点を変えて女性労働者の潜在的なニーズから女性活躍推進法の課題について確認したい。企業側は女性の働きやすい環境づくりを積極的に進めてはいるものの、女性労働者側が実際に恩恵を受けたり働きやすさを実感しているとは言い難く、ニーズや課題はまだ残されたままだ。以下では働く女性たちのにーズと課題のうち、“ほんの”一例を紹介。

働く女性の潜在的なニーズ

1.ライフイベントへの不安の解消

就職後、結婚や妊娠、出産といったライフイベントと仕事の両立を不安視する声は多く見られる。特に20代後半頃から「このままのペースで仕事を続けて、結婚や出産、育児はできるのか?」と、ライフイベントと仕事の両立に悩み始める女性は多い。働き続ける将来のイメージができないために、やがてキャリアアップに消極的になる。女性は出産を機に短時間勤務や不規則勤務など、時間制約のある働き方にシフトすることを希望するが、それによる周囲への負担や周囲の理解を得られるかどうかが不安の種となっている。

2.再就職の選択肢の自由

出産や介護、子どもや自身の治療などを理由に一度離職した女性労働者が再び雇用を望む際に、年齢や性別によって差別的扱いを受けないことが望まれる。離職後、ブランクを経てからの再就職では正規雇用で働くことはハードルが高く、パートやアルバイトとなるケースが高いのが現状だ。非正規雇用者の女性割合が高い要因の一つと考えられる。

「いったん仕事を辞めてしまうと、なかなか希望の仕事がみつからない。子育てに時間を取られて、できる仕事は事務か接客の短時間パートになってしまう(お茶の水女子大卒、40歳)」引用:「働く女性 ほんとの格差」p.171,  著:石塚由紀夫

3.性差のないキャリアデザイン

日本では国際的にみても女性管理職が圧倒的に少なく、女性がキャリアアップを果たすための土壌はまだ発展途上にある。男女ともに自由なキャリアデザインの形成を目指すことのできる企業態勢を構築することが女性の社会進出を後押しすることに繋がる。

他、「ワークライフバランス」「フレックスタイム制」のキーワードからも働く女性のニーズを知ることができる。

女性活躍推進の課題

1.女性管理職のロールモデルが少ない

出産や育児などのライフイベントと仕事を両立するのは難しく、職場でワークライフバランスの取れた働き方を実現できている人は未だ少なくない。

「つわりが重く、やむなく退職した。産休や育休があるのはいいけど、つわり休暇もつくってほしい。大学を卒業してからずっと働いてきたのに、産休・育休にたどり着く前に退職させられ、何のために働いてきたのか全く無駄な気持ちになった(大阪大卒、29歳)」引用:「働く女性 ほんとの格差」p.171,  著:石塚由紀夫

2.女性管理職の育成が不十分

上司の理解不足や、性別による役割分担が(暗黙の了解で)固定されていることもあり、女性が管理職に必要なスキルを獲得しにくい。また、そうした組織風土やワークライフバランスの難しさから管理職になりたがらない女性も一定数いる。

3.男性の育児休業取得率の低さ

2017年の育児休業取得率は、男性で5.14%、女性で83.2%と女性への育児負担の偏りが問題視される。男性が育児休業を取得することで、女性ばかりにのしかかる育児負担が減り、仕事と育児の両立がしやすくなると考えられる。職場や家庭における男性から女性に対する“理解努力” “協力努力”は必須である。育児だけではない。介護に関しても、女性が担うケースがまだまだ一般的で、介護離職は圧倒的に女性の方が多くなっている。男性にも女性と同等の育児・介護参加が求められる。

介護が理由の離職者数

出典:内閣府男女共同参画局「介護・看護を理由とした離職者数の推移(男女別)」

女性活躍推進法の今後の展望

「えるぼしマーク」認定企業数の増加や女性の就業率の上昇など数値的な結果は認められるものの、女性管理職数の停滞や男性育児休業取得率の顕著なまでの低さは、世間や社会全体としての意識改善の不足ともいえる。女性活躍の実質的な推進のためには、施策や支援などの型に留まらない、不安解消に向けた労働意欲や出世意欲を喚起するための可視的な試みと、職場と家庭の両方における男性陣の積極的な理解・協力が必要となるだろう。

 

 

【編集部おすすめ記事】
【働く女性の健康経営】ウーマン社員プロジェクト活動報告 
サバティカル休暇制度への注目加速 日本の事例と海外事例
フレックスタイム制のメリットとデメリット|働く女性のニーズは? 
ワーク・ライフ・バランスとは?基礎知識と現状の課題
女性の平均年収を読み解く マーケターが把握すべきポイントとは?
非正規雇用女性に課題 治療と仕事の両立で利用している社内制度は?

Category: データ分析
Share:
PAGE TOP
×