地域医療、6つの問題点と今後期待されること(3/3)

高齢化の現状と地域医療構想

日本の高齢化の現状

日本の高齢化は世界でも類を見ないスピードで進んでいる。2017年10月1日時点で、日本国内の65歳以上の人口は3,515万人、総人口に占める割合は27.7%(総人口は1億2,671万人)。2017年に国立社会保障・人口問題研究所が公表した日本の将来推計人口によると、2025年の65歳以上の人口は3,677万人に増えると考えられている。この2025年は「団塊の世代」が75歳以上になる年でもあり、「2025年問題」ともいわれる。

同調査によれば、今後総人口は2030年に1億1,913万人、2060年には9,284万人、2065年には8,808万人まで減少すると予測されている。さらに高齢者の中でも75歳以上の増加は顕著で、総人口に占める75歳以上人口の割合は、2065年には25.5%となり、約3.9人に1人が75歳以上の者となると推計されている。この高齢化によって、医療費や社会保障費の増大は避けられず、これまでの社会制度を維持していくことは困難になると言われている。

地域医療構想とは

そこで行政が推し進めているのが「地域医療構想」だ。超高齢社会にも効率的に対応できる医療提供体制を構築するために、2014年施行の「医療介護総合確保推進法」に基づき制度化された。

日本の超高齢化で将来的に必要となる病床数が足りなくなると予測されているが、この法律に沿って厚生労働省は2015年3月に「地域医療構想策定 ガイドライン」を発出。2016年中にすべての都道府県で「地域医療構想」が策定された。これによって「二次医療圏」を基本に全国で341の「構想区域」ごとに高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4つの医療機能ごとの病床の必要量が推計されている。

ここで算出された病床数は、現在、各病院が担う医療機能とは大きな隔たりがある。しかし、この推計数をもとに病床の機能文化や連携、地域ごとの病床の余剰・不足などが明白化され、現実と将来のニーズとのギャップを埋めながら在宅医療のニーズも含めて、地域ごとに最適な地域医療の実現について協議する「地域医療構想調整会議」も行われている。2025年に必要となる医療体制の実現に向け、医療機関の分化や医療連携、在宅医療の充実化・医療従事者の確保や要請などの施策が地域ごとに進められている。地域医療構想に関する、より詳細な情報は以下で確認できる。

地域医療に今後期待されること

多くの課題があり対策が急務な地域医療。ハードルは高いが、今後地域医療に期待されることは例えば以下ではないだろうか。

  • 地域医療は「効率性」ばかりに焦点が当てられているが、同時に「生活者視点による地域医療の在り方」を取り入れていくこと
  • 生活者一人ひとりの“医療依存”を軽減し、患者を減らすこと(=予防医療への積極的な取り組み)
  • “医療改革”に、子どもや若者世代も巻き込み、地域全体で取り組む仕掛けをつくること
  • 介護施設における医療機能向上で、医療機関の負担を減らすこと
  • 「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」で医療機関が果たす役割が異なることを住民に周知すること
  • より良い地域医療構築につながる情報発信ができる「(イマドキなマーケティング手法である)インフルエンサー」を活用し、地域医療に興味関心が薄い層にも情報がリーチするような取り組みを行うこと

医師の村上智彦さんは著書の中で、地域医療の理想の在り方として都市部の医療機関と地方の医療機関の役割を明確に分けること、としている。

専門的な医療は都市部に集中的に配置して、地方では予防やケアと連携してささえる医療機関にしていくべきです。

(略)例えば循環器の心臓カテーテルの上手い先生が3人いるとします。今の発想では3人の先生方を3か所の病院に派遣して「3か所の医療機関の循環器の医師を充実させた」と言っていますが、本当はこの3人の先生を都市部の1か所に集めて24時間体制で稼働させてでも医師たちが交替で休みをとれるようにすることのほうが大切です。

(略)地域の病院がやるべきことは予防と生活習慣病のケア、高齢者のケアへの連携ではないでしょうか?例えば日本一喫煙率の高い北海道で、いくら循環器の医師や呼吸器の専門医を派遣しても絶対に病気は減らないし、医療費も増えていきます。引用:「最強の地域医療」pp.64-65,著:医師 村上智彦

 

実際にどのような地域医療が実践され、成果を上げているのか?以下の書籍では全国48医療機関における先進的な取り組みを知ることができる。

限界集落化し、医療過疎となっているへき地の多くは、急速に高齢化が進行するわが国の将来の姿を先取りしたものといえる。本書で紹介されている、そのような地域で試みられているさまざまな先進的な取り組みには、わが国の医療の将来を考えるうえで重要な示唆に富むものが多い。その中には立地の不便さを補うためのICTの活用、医療スタッフの長期的な定着を実現するためのワークライフバランスのあり方、認知症の高齢者を地域全体でフォローする新しい「見守りシステム」など、今後の医療のロールモデルとなるものが数多く含まれている。引用:「地域医療はおもしろい!!地域を癒す48の取材記」p.3,編著:北村聖

 

 

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