超加工食品リスト なぜ話題に?
週刊新潮が2019年1月に「超加工食品」に関する情報を掲載したことをきっかけに、たちまち「超加工食品」キーワードは広く消費者に知られるようになった。「超加工食品の過剰摂取により癌罹患率が上昇する」とのことで、「食べてはいけない超加工食品リストを知りたい」「死亡リスクが上がるのか?」「発がん性物質が含まれているということなのか?」と不安になる消費者が多い一方で、正しく理解されずに“超加工食品の危険性”が広まってしまっている感を否めない。食業界で今話題の超加工食品とは?
目次
超加工食品とは?
危険視される超加工食品の定義
超加工食品とは、砂糖、油脂、塩分を多く含み、保存料などの添加物も多く、食物繊維とビタミンが少ない高度に加工された食品のこと。具体的には、大量生産されたパン・菓子パン、ケーキ、スナック菓子、インスタントラーメン、炭酸飲料、冷凍食品、常温保存可能で日持ちする加工食品、保存料を添加した肉加工品などがある。ウルトラ加工食品とも呼ばれている。
NOVA分類とは
超加工食品の範囲は、ブラジル・サンパウロ大学の研究者らが提唱した「NOVA分類(WORLD PUBLIC HEALTH NUTRITION ASSOCIATION)」に基づく。NOVA分類では、あらゆる食品を4つのグループに分けている。
NOVA分類について消費生活コンサルタント森田満樹さんは、 “科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体FOOCOM.NET” の中で次のように述べている。
研究者によれば、この分類は「これまでの伝統的な手作りの食事から国際的食料システムの出現によって、高度の加工食品が増え肥満のパンデミックを促進している」という問題意識から2009年に発表したとのことです。「やっぱり手作りのほうがよくて、加工食品はダメだよね」という仮説のもとにつくられた分類と言えるでしょう。(引用:科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体FOOCOM.NET「超加工食品ってなに?食べてはいけないの?」)
フランスの論文でがんのリスクが指摘
超加工食品が世界的に話題になったきっかけは、2018年2月に英国医学雑誌BMJに掲載されたフランスの研究論文(コホート研究,健康なフランス人成人104,980人(男性22%、女性78%、平均年齢43歳)で、2日間の24時間オンライン食事アンケートを少なくとも2回完了している人)。それから1年経ち、日本で「週刊新潮(2019年1月31日号)」が超加工食品について取り上げたことで、国内でも超加工食品が注目されるようになった。
がんの種類別に見たリスク
研究チームが発表した調査データによると、超加工食品の摂取によってがん全体のリスクが上昇するとのこと。同論文によるがんの種類別リスク増加率は以下の通り。
- 超加工食品の割合が全食事のうち10%増加すると、がんのリスクが12パーセント増
- 同上、乳がんのリスクが11%増
- 前立腺がん、結腸直腸がんに関しては、有意な関連性が認められなかった
- 加工度が低い食品とがんのリスクについては有意な関連性は認められなかった
- 生鮮品、最小限の加工食品はがんの低リスクと関連
食べてはいけない超加工食品、実名リスト一覧
週間新潮が特集「食べてはいけない超加工食品実名リスト」
週間新潮は、2019年1月31日号で「食べてはいけない超加工食品実名リスト」を公開。反響は大きく、Twitterには超加工食品に関する投稿が相次ぎ、その後多くのメディアも超加工食品について取り上げた。同誌が取り上げた超加工食品例は以下。
- <超加工パン>
・1位
⇒ふんわり泡とろ~りとけるチーズピザ(山崎製パン)
・2位
⇒スペシャルサンド(山崎製パン)
⇒ランチパックバナナ板チョコとバナナジャム(山崎製パン)
⇒ランチパック スクランブルエッグ からしマヨネーズ風味(山崎製パン)
・3位
⇒スカイベリー いちごのメロンパン(敷島製パン)
⇒ベーコン&ポテトパン2個入り(第一屋製パン)- <超加工冷凍食品>
・1位
⇒【パスタ】大盛り和風たらこ(トップバリュ)
・2位
⇒【惣菜】牛カルビマヨネーズ(マルハニチロ)
⇒【ピザ】ピッツァ&ピッツァ(明治)
・3位
⇒【惣菜】5種野菜のチーズ焼き(マルハニチロ)
一方で各所・各専門家からは「同誌の取り上げ方は消費者の不安をあおるだけで根拠にかける」という非難や、ネガティブな側面だけを切り取って消費者に見せる同誌の表現と、実際の論文の内容に「乖離」がある点を指摘する声も。
論文ではこの結果を説明するために、これまでの研究とも比較したうえで、超加工食品の栄養面の問題や添加物の問題等について仮説を立てています。しかし、いずれも可能性を示唆するもので、確たる結論を引き出すことはできないと観察研究の限界を述べています。また、分類が複雑で誤分類もあるかもしれず追跡機関も短いため、今回はあくまで超加工食品の摂取とがんに関する最初の研究であると位置づけており、さらなる研究が必要としています。つまり、この研究は超加工食品ががんを引き起こすことを証明するものではありません。週刊誌の見出しは、超加工食品でがんが増えると決めつけていますが、論文はそのような書きぶりではありません。(引用:科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体FOOCOM.NET「超加工食品ってなに?食べてはいけないの?」)
「NPO法人食の安全と安心を科学する会(SFSS)」は同誌の記事をフェイクニュースレベル4と判定(『食べてはいけない「超加工食品」実名リスト』⇒「フェイクニュース(レベル4)」~SFSSが週刊新潮記事をファクトチェック!~)しており、業界紙の日本食糧新聞はその判定について2019年2月13日(11834号)でニュースとして取り上げている。
超加工食品の関連書籍、情報
書籍
Dr.白澤の ゆる無添加のすすめ やっぱり心配 添加物と超加工食品
本当は怖い! こんな「長持ち食品」
厚生労働省
食品添加物にはどのようなルールがあるのですか?(厚生労働省)
内閣府
課題は「相反する消費者ニーズにどう応えるか ?」
今回のフランスの研究論文やそれに基づいた週刊新潮の記事に対し、疑問や非難の声が挙がっているとはいえ、便利でおいしい加工食品の過剰摂取よりも、手間暇かかっても自然な食品の摂取割合を増やす食生活の方が健康に良い影響を与えることは明らかで、加工食品に対して改めて消費者が真剣に考えるきっかけにはなったと言える。働く女性の増加や、時短ニーズの高まりで、惣菜やチルド食品、冷凍食品など、加工食品への需要は拡大している一方で、食の安全性に対する情報開示を求める声や、食による健康効果・疾病予防を求める女性、加工食品を購入する際は必ず原材料をチェックする女性は多い。この相反する消費者ニーズに企業はどう応えていくか?業界の今後の課題だ。
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