機能性表示食品の市場規模(2019年)から考える戦略と注目カテゴリー

近年の健康食品の急速な増加で、今や健康効果を期待できる商品は消費者の間で目新しさを感じなくなり始めている。いつでもどこでも誰もが手軽に購入できるようになったことは要因として大きいが、それ以前に健康食品の正しい区分・選び方を理解できないままに健康食品の商品数が爆発的に増えたことで、「何がどう違うのかわからない」「どれも同じ。どれを選べば良いかわからない」と、消費者を難民化させてしまっていることも見逃してはならない。

2015年に始まった機能性表示食品制度の活用で差別化を図ってきた・あるいはこれから図ろうとしている企業にとって市場の拡大は嬉しい反面、「想定していたほどは売れない」「類似商品が増えたことで差別化が難しくなった」など、苦戦する企業も増えている。今後市場に求められる機能性のカテゴリーと、今の消費者に振り向いてもらうための工夫について考えてみよう。

機能性表示食品の市場規模(2019年3月発表)

2019年3月発表の矢野経済研究所の調査によると機能性表示食品の市場規模は2017年度が1,788憶6,000万円(前年度比31.1%増)、2018年度は1,895億2,000万円(同6.0%増)。市場の拡大が続くものの、2018年度は成長がやや緩やかに。

受理品目が増加する一方、競合激化や販売不振から終売する機能性表示食品も散見され、特に菓子や清涼飲料など、嗜好性の強い一般加工食品においてその傾向が見られる。また、スーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアなど、多くの商品が陳列されている売場において、機能性表示だけでは目立ちにくく、消費者の視認を得ることは難しいことから、ターゲット層に対して、機能性表示を活用したコミュニケーション戦略が売上を大きく左右する傾向が強まっている。通信販売においても、積極的な販促活動を行っていない機能性表示食品は、売上が伸び悩む傾向にある。(引用:矢野経済研究所「拡大が続く健康食品市場」)

機能性表示食品に懐疑的な声も

消費者の健康意識の向上や少子高齢化で、今後も機能性表示食品市場は伸びると予想できるが、実は、機能性表示食品の届け出数に関しては鈍化している(消費者庁)。

  • 2015年度  310件
  • 2016年度  620件
  • 2017年度  314件(2018年1月までの届け出数)

機能性表示をうたっていない商品がヒットを飛ばすと言った事例が出てきたことなどが影響していると、週刊ダイヤモンド(ダイヤモンド社)は指摘。「機能性表示食品ではなく機能性食品でも十分では?」という声が業界からは上がっているようだ。

企業が、コストを掛けて科学的根拠を用意し、トクホや機能性表示食品を取得するのは、言わずもがな自社商品を売るためだ。健康志向の高まりに加え、”おいしさ”で他社商品との差別化が難しくなっている昨今、トクホや機能性表示食品が自社製品の付加価値になると期待したのである。しかし、その期待は裏切られたといっても過言ではない。

機能性食品の代表格、ヨーグルトを見てみると、最も売れているのは、トクホでも機能性表示食品でもない、明治の「プロビオシリーズ」。「強さひきだす」「プリン体と戦う」など薬機法に抵触しないギリギリを狙った巧みなキャッチコピーが大成功したことで、「機能性表示って意味あるの?」という空気が業界に流れ始めている。(引用:野村聖子「乳酸菌ブームは3年目へ」,『週刊ダイヤモンド』2017年12月30日号,p.167,ダイヤモンド社)

消費者からは「区分によって何がどう違うのかよくわからない」「どの商品も健康効果は似たり寄ったり。何がどう違うの?」「本当に効果があるの?」という懐疑的な声や不満も聞かれる。機能表示が認められている保健機能食品(トクホ、栄養機能食品、栄養機能表示食品)。機能表示は認められていないが「健康に良い」と認識されている、いわゆる健康食品。健康オタクではない限り、消費者にとってはややこしい区分だ。

機能性表示食品の市場規模

出典:厚生労働省 健康食品の正しい利用法「日本における健康食品の大まかな分類」

機能性があっても、一般商品との差別化が難しいのが現状

他の保健機能食品(トクホと栄養機能食品)と機能性表示食品の違い・見分け方、機能性食品と機能性表示食品の違い・見分け方、似たような機能性を謳っている商品の違い、などの理解が曖昧であれば、消費者にとってこれらは差別化ポイントになるどころか商品選択に迷うだけだ。そうなると結局、機能性を持っていたとしても、価格や認知度、プロモーション規模が購入決定に影響を及ぼすという、一般的な商品と同じ結果に陥る。

消費者庁が5月31日に発表した消費者1万人を対象とした意向調査によると、機能性表示食品の摂取経験があるのは25%。「摂取したことはないが、今後摂取してみたい」は36.8%だった。機能性表示食品の認知度は、「どのようなものか知っている」が15.8%、「聞いたことはあるが、どのようなものか知らない」が64.8%。特保と混同しているケースもあるとみられ、認知度の向上が今後の課題だ。(引用:健康産業新聞「「機能性表示食品」摂取経験4人に1人、課題は“認知度”」2018.10.16)

機能性表示食品の展開とヒットのポイント

機能性表示食品の市場拡大は今後も期待されているが、前述の通り、健康食品を謳う商品の爆発的な増加や、業界・消費者からの懐疑的な声が挙がっていることも事実。競争は激化していきながら、売れない商品や撤退していく商品も多く出てくるだろう。これまでは市場投入に一点集中してきた企業も、これから投入を考えている企業も、まずは一度立ち止まり、マーケティングに工夫をこらす必要がありそう。

【1】消費者が求める機能性は?

矢野経済研究所が行った アンケート調査結果では、消費者は以下の機能を持つ機能性表示食品に関心を寄せていることがわかった。

  1. 内臓脂肪対策(24.4%)
  2. 中性脂肪対策(24.4%)
  3. コレステロール対策(18.2%)
  4. 整腸(17.6%)
  5. 疲労感軽減(16.1%)
  6. アイケア(16.0%)
  7. 体脂肪対策(14.4%)
  8. 血圧対策( 13.4%)
  9. 骨の健康維持(13.2%)
  10. ストレス対策(11.9%)
  11. 血糖値対策(11.7%)
  12. 記憶力の向上(11.1%)
  13. 肌の乾燥対策(9.7%)
  14. 睡眠改善、健やかな眠りのサポート(9.6%)
  15. 膝関節対策(6.8%)
  16. 健康な肝機能の維持(6.8%)
  17. 体温(抹消体温)の維持(4.8%)
  18. ほこりやハウスダストによる目や鼻の不快感軽減(4.5%)
  19. 緊張感の軽減(3.9%)

出所.株式会社矢野経済研究所「健康食品市場に関する調査(2017年)」( 2017年1月23日発表)
注.調査時期: 2016年12月、調査(集計)対象:国内在住の30代以上の男女1,193名(男性598名、女性595名)、調査方法:インターネットアンケート、複数回答

期待株①  脳の健康

消費者の関心が圧倒的に高いのは、ダイエット関連の「内臓脂肪対策」と「中性脂肪対策」だが、今後特に需要の伸びが期待されるのは、脳の健康。理由はやはり、少子高齢化による認知症人口の増加だ。昨年の流行語にもなった「睡眠負債」は、認知症発症につながる可能性があるとしてメディアで大きく取り上げられ、高齢者だけではなく、若い人も脳の健康や記憶力に関する商品やサービスに興味を示すようになった。

また、認知症を患った家族を介護する側の心の深刻な健康状態がクローズアップされたことで、認知症に対する危機意識を持つ人が増えている

記憶力の機能を謳った商品には、ロッテの「歯につきにくいガム<記憶力を維持するタイプ>」や、小林製薬のサプリメント「イチョウ葉 〜記憶力を維持する 〜」などがある。このカテゴリーは今後さらに商品数が増えそうだ。

 【ロッテ】歯につきにくいガム粒(記憶力を維持するタイプ) 

【小林製薬】イチョウ葉  [機能性表示食品]

期待株②  疲労回復、睡眠改善、ストレス軽減、リラックス、集中力

疲労回復、睡眠改善、ストレス軽減、リラックス、集中力。これらは特に働き盛りの現役世代に求められるだろう。働き方改革の推進で、残業を減らす取り組み、テレワークの導入、プレミアムフライデーの実施などが各企業で進められているが、現状の課題として挙げられているのは、「これまでと同じ仕事量を短時間でこなすのは非現実的」「結局家に持ち帰って仕事をしている」「部下を帰らせ、完了しなかった仕事は上司である自分がやる」など、結局、仕事の負担量は変わっていないことだ。2019年4月に施行される長時間労働の禁止に向け、さらに導入企業は増えていくと考えらえる。

これらの課題が浮き彫りになってきたことで、ワーカーの間で今年さらに強まるニーズが「短時間で仕事を集中的にこなしたい」。ただし、それは単純に「体を無理矢理目覚めさせて集中力を高めるもの」であれば良いわけではない。今の消費者は、滋養強壮ドリンクなどで疲れ切った体を叩き起こし、無理矢理眠い目を覚ましてくれる一時的な効果よりも、「疲労回復や睡眠改善、ストレス解消などを図ることで、結果的に日中のパフォーマスが上がる」という、根本的な体質改善・生活改善による効果を期待している。

スーパーフードトレンド予測の中でも、脳の活性化やリラクゼーション効果がある成分を含む「スマートドラックフード」が挙げらている。

さらに、新たなヘルスケアの概念として注目されている「ヒュッゲ」の広がりも、「疲労回復」「睡眠改善」「ストレス軽減」「リラックス」に対するニーズを高めるだろう。

【2】ターゲットの細分化で具体的な訴求を

商品数の増加で、機能性表示食品を始め健康食品に目新しさはなくなったとは言っても、消費者の健康ニーズは確実に高まっている。特にヘルスリテラシーの高い女性は、女性ホルモンによる体調の変化、出産・育児、更年期などを機に健康ニーズが急激に高まる。さらに高齢になれば健康への投資額は上がる。

つまり、きちんと消費者の心に響くものであれば購入はしてもらえるのだ。ただし、市場の供給過剰に加えてさらに多忙を極める人が増えている今、商品選択を「難しい」「面倒」と感じている人も増えている。「これは自分に向けた商品だ」と直感的に理解してもらえるよう、ターゲットを細分化して訴求するのが良いだろう。ライフスタイル、ライフステージ、年齢に合わせた的確な訴求なら、商品を選択しやすくなる。

ワーキングシングルがターゲットの場合

ドリンクを例に考えてみよう。ワーキングシングルを狙うなら、仕事中にバックに入れられるタイプ(軽量、バックに入るサイズ、スリム、蓋がしっかり閉まる、など)が好まれるが、家族と一緒に住んでいる既婚者を狙うなら、自宅で家族全員が一緒に飲める大容量タイプが好まれる。

妊婦がターゲットの場合

妊婦を狙うなら、カフェンレスが良い。それまで愛飲していたドリンクを、妊娠を機に摂取をやめる女性は多い。そんな時に、それまで愛飲していた商品のカフェンレスタイプがあれば、そちらに移行して飲み続けるだろう。

中高年層がターゲットの場合

中高年層を狙うなら、若い人向けに謳うのとは違う効果で訴求したい。同じ「コラーゲン」でも、若い人と中高年層では期待していることは異なる。一般的には美肌を目的に飲む女性が多いが、中高年層では、髪のツヤ、爪の補強なども期待している。

高齢者がターゲットの場合

高齢者を狙うなら、商品のパッケージに記載する文字、ホームページの文字サイズ、広告の文字など、これらは大きく表示するべきだ。本も商品のパッケージも文字の小さいものが多いが、高齢者は、老眼や視力低下の影響で小さい文字を読むのが苦痛だ。当たり前の話だが、必然的に大きい文字で読みやすい商品に目がいく。

流行りのヘルスケアキーワードも避けた方が良いだろう。新しいトレンド情報に常にアンテナを張っている若い人と高齢者では、トレンド変化に対する耐性も違えば理解度も違う。特に横文字のものは馴染みがない上に抵抗を感じやすいので、商品そのものの信憑性さえも疑われる可能性がある。ネットを使いこなす人であればネットで調べるかもしれないが、70代、80代のネット利用率はまだまだ低く、インターネットを「参考情報源」と捉えている人は少ない。

簡単な例だが、このようにライフスタイル、ライフステージ、年齢でターゲットを設定すると、どのような工夫をすれば良いかが明確に見えてくる。

【3】ストーリーテリングで信憑性と興味・関心を引く

機能性関与成分に関する研究レビュー、商品の開発経緯、企業担当者や研究者の市場投入までのエピソードなど、普段は消費者が目にすることのない商品の「裏側」の部分をストーリーテリングで惹きつけるのも、商品を目立たせる手だ。ただし、「エビデンスが数字や難しいグラフだらけで理解が難しく、堅苦しい」というありがちなNG例に陥らないように気をつけたい。小難しい話は女性は好まない。女性が共感するのは「直感的でわかりやすい」ストーリーだ。

【4】商品の周辺情報を充実させる

そもそも論、健康食品の見分け方、商品と自分の相性の見分け方、その商品はどんなシーンで「私」におすすめなのか、商品の効果を高めるための生活習慣提案(例:睡眠改善の機能性食品であれば、就寝前に半身浴で体を温める、睡眠の質を低下させるブルーライトを発するスマホやテレビを見ないなど)、機能性関与成分にまつわる健康トピックなど、商品そのものの情報だけではなく、商品の魅力を高めるコンテンツ作りも織り交ぜると、消費者の目に留まりやすくなるだろう。

 

 

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