若者の恋愛離れは二極化?データと時代背景から読み解く恋愛価値観 

自身で稼いだお金で好きなことを自由に楽しめる女性が増えた今、恋愛は、趣味や娯楽とともに人生を豊かにする、たくさんある選択肢の一つ「one of them」に変化。自身のライフスタイルを描くなかで、あえて恋愛を選ばなかったり、優先しない女性も増えてきた。現実とネットと、昔よりも出会いの場が多様化している今、現代の若者の恋愛事情は二極化し始めている。

データから読み解く若者の恋愛意識

「草食系男子」という言葉が生まれて早10年以上。恋愛への消極的な姿勢はいまや男女問わず見受けられる。ソーシャルメディアの発達で情報化社会はさらに進み、現実での付き合いに加えてネット上での繋がりを持つことも一般化。女性の社会進出や娯楽の多様化もあって、仕事にも趣味にも充実感を得られるようになった女性に恋愛は必須のものではなくなったようだ。若者の恋愛意識は時代とともに変化し、「若者の恋愛離れ」は現在二極化してきている。

恋愛に積極的ではない若者の意識

明治安田生活福祉研究所が行った「男女交際・結婚に関する意識調査」によると、15~34歳の交際経験がない未婚者に行った「交際経験がない理由」の調査結果を見ると、恋愛に強い関心はなく、前向きではない様子がうかがえる。また恋愛経験の少なさから交際に至るタイミングがないこともあげられた。上位に入った理由は以下の通り(調査対象:全国の15~34歳の男女10,304人)

  • 理由第1位:これまでに交際したいと思う人に出会わなかった(35.0%)
  • 理由第2位:どのように男女交際すればよいかよくわからない(26.9%)
  • 理由第3位:告白されたことがなく自分から告白することもできなかった(26.6%)
  • 理由第4位:恋愛に全く関心がなかった(25.9%)
    (参考:明治安田生命福祉研究所「男女交際・結婚に関する意識調査」)

第4位にランクインした「恋愛に全く関心がない」は、年齢の上昇とともにその割合が高くなっていく。年齢とともに恋愛に冷めていく傾向があるようだ。

新成人の恋愛意識、恋愛離れは回復傾向

一方で、こんな調査結果もある。楽天オーネットによる毎年恒例の、新成人に絞った恋愛意識に関する調査「第23回 2018年 新成人の恋愛・結婚に関する意識調査」で、新成人の恋愛・結婚に関する意識は3年連続で回復傾向にあることが分かった。

現在交際相手はいる?

【出典】オーネット「2018年 新成人の恋愛・結婚に関する意識調査」

同調査の結果概要は以下の通り。

  • 今後異性との交際を積極的にしたいか?
    ・全体48.3%(昨年比+5.2%)
    ・男性47.0%(昨年比+7.7%)
    ・女性49.7%(昨年比+3.4%)
    ・男性は約8%近く上昇し、女性は約半分が積極的にしていきたいと回答
  • 現在交際相手はいるか?
    ・全体31.5%(昨年比+0.8%)
    ・男性27.7%(昨年比+3.0%)
    ・女性36.3%(昨年比-1.0%)
    ・全体での停滞や女性の下降傾向はあるものの1996年からの調査結果の推移を見ると、2000年頃から急激に下がっていたところ近年回復傾向に
  • SNSで知り合った人との恋愛もあり
    ・全体40.2%(昨年比+2.9%)
    ・男性41.0%(昨年比+0.3%)
    ・女性39.3%(昨年比+5.3%)
    ・SNSでの出会いをありと考える新成人の割合が上昇。特に女性の上昇が大きくSNSによる出会いや恋愛に肯定的な意見が増えてきている
  • 結婚したい新成人の割合
    ・全体83.8%(昨年比+3.8%)
    ・男性79.0%
    ・女性88.7%
    ・結婚したい新成人の割合は2000年以降急激に下がったが、近年は若干回復傾向に。今回の83.8%は2002年からの16年間で最も高い結果となった。
  • 結婚したい理由
    ・理由第1位:好きな人と一緒にいたい(55.3%)
    ・理由第2位:子供が欲しい(54.5%)
    ・理由第3位:家族がいると幸せだと思う(46.9%)
    ・この項目では、経済的安定や精神的安定よりも自分自身の豊かな人生のために結婚したいと考える新成人が多いことがわかる。また男女別でみると女性は「子供が欲しい」が60.5%でトップとなった。女性の結婚意識には出産も含まれていることが考えられる

 

恋愛離れは二極化?

現在のアラウンド20を堺に、今後恋愛離れは二極化することが考えられる。

アラウンド20は、若者の恋愛離れに終止符を打ち、少しずつ興味を回復か?

働き方改革の推進で今後、家庭やプライベートの時間を重視する生活者は増えていくことが想定される。AI・アニメ・ロボットなどバーチャル恋愛も抵抗なく楽しめる世代なので、バーチャル恋愛とリアル恋愛の両方を楽しむ女性が増えそうだ。

それ以降の世代は、恋愛離れは継続?

一方でそれ以降の世代は、「女性の社会進出」「男女格差是正」「女性活躍推進」「働き方改革」などの社会トレンドの中で経済力を身に着けてきた。女性自身に十分な経済力があれば恋愛や結婚に対するメリットは少なからずは小さくなる。仕事と家庭の両立でキャリアを諦めたり、趣味の時間を削ったり、悩みを抱えたり、忙しくなる女性たちをこれまでにたくさん見てきているからだ。十分な経済力があれば、人生を充実させるモノ・コトの選択肢が多いわけで、「自分一人の自由時間を大事にしたい」「好きなように生きていきたい」と“自分優先”で考えるのは当然かもしれない。

クローズアップ現代(NHK)は「恋人はいらないけど結婚はしたい」という「いきなり結婚族」について取り上げており、その中でタレントの春香クリスティーンさんは、恋愛を「無駄が多い」とコメントしている。

無駄が嫌なんですよね。結婚までのプロセスの間に無駄がいっぱいあるなというか。時間的にも、大人とかでも、何年もつきあって結局駄目だったっていう話を聞くと、やっぱり時間の無駄って嫌だなとか。あと、お金もかかりますし、恋愛って。お金の無駄も嫌だなと思いますし、私の場合、感情の無駄というか感情の起伏、いちいち喜んだり、落ち込んだりする、そういう問題が省けるという意味では(いきなり結婚というのは)利点もあるのかなと思いますね。(引用:クローズアップ現代「恋人いらないってホント?出現!“いきなり結婚族”」)

 

恋愛よりも、趣味やキャリアアップ、友達との時間など「自分らしく生きたい・自由な生き方を大事にしたい」願望が強い女性たちの恋愛離れは継続しそうだ。

 

恋愛離れの原因と恋愛離れ回復の理由

2000年以降、急激に進んだ恋愛離れのそもそもの理由は何なのか。バブルが崩壊し日本経済が不安定ななか生まれた現代の若者たちは、雇用不安や低成長、少子化の加速といった社会環境下で恋愛をしてきた。加えて、ソーシャルメディアが発達し情報がいつでもスマホから簡単に手に入る時代において、”コストパフォーマンス”という考え方も浸透。恋愛や結婚もコスパが重視され、金銭や時間のコストがかかる恋愛に若者は熱中しなくなっていった。現実的でドライな思考を持つ若者が「恋愛離れ」する原因は、社会の変化を追うことで見えてくる。

恋愛離れの原因

1.将来への低い希望が、恋愛・結婚意欲を低下?

内閣府が行った「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」によれば、将来への希望についてのアンケート結果で「希望がある」と回答した日本の若者は61.6%と、海外と比較すると際立って低い。トップのアメリカ(91.1%)とは約30%の差が出ている。将来への希望を見出せないことが、恋愛・結婚に対する消極的な姿勢を生み出しているのかもしれない。

 

2.異性間の社会問題化(DV、ストーカーなど恋愛による女性側のリスク)

DVやストーカーといった社会問題の悪化もあげられる。近年のストーカー事案の相談等件数は高水準で推移しており、平成30年の暴力事案の相談等件数は過去最多(警視庁)。ストーカー事案における加害者と被害者の関係では「交際相手および配偶者」が約半数となり、恋愛のリスクが浮き彫りに。

配偶者からの暴力事案相談状況

【出典】警察庁「平成 30 年におけるストーカー事案及び配偶者からの暴力事案等への対応状況について」

 

3.働く女性の増加で、女性側の恋愛への価値観が変化

女性の社会進出が進み、女性は自身の収入を持ち自立できるようになった。それに伴い男性に依存する必要性がなくなり、趣味や自分の興味関心へ投資できるお金を持てるように。女性たちのオタク消費はその象徴といえる。恋愛より夢中になれることが増え、忙しくて恋愛の時間を捻出できないのに無理してデートの時間をつくろうとしたり、相手に無理して都合を合わせるよりも、自分らしく生きたいという願望が優先されるようになった。厚生労働省が行った「今まで結婚していない理由」を20~30代女性に聞いた調査によると、第3位にランクインしたのは「必要性を感じないから(31.6%)」だった。働く女性が増えたことで恋愛や結婚は必須ではなくなってきているようだ。恋愛離れとともに、結婚離れも進んでいる。

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4.コスパ重視世代

さとり世代以下は、あらゆることに対してコスパ重視の世代。恋愛は時間的にもお金的にもコストがかかり、必ずしも結婚まで結びつくとも限らないためコスパが悪い。

5.SNSの浸透で、人間関係に変化

SNSで常につながっている監視社会に生きるため、現代の若者たちは常に気をつかっている。異性よりも同性や同じ興味がある人と一緒にいる方が楽しいと感じ、わざわざ恋愛で余計に気を使いたくないというのが本音。恋愛に対し面倒だと感じている。

6.バーチャル恋愛の充実

アニメ、アイドル、ロボットなど、バーチャル恋愛にはまる女性が増えている。最近ではAR技術の進化によって、デジタルキャラクターが歌や踊り、トークまでこなすライブイベントも開催されている。

 

恋愛離れ回復の理由

しかし一方では、新成人の恋愛離れが回復している現状もある。その理由にはSNS疲れによる癒しを彼氏に求めたり、バーチャル時代だからこそリアルな人との関係に価値を見出したりと、情報化社会が加速した結果、仮想ではない現実空間に安らぎを感じ始めたことがうかがえる。

またSNSでの出会いが広がったことで、より趣味や好みの合う異性を見つけやすくなっていることも理由の一つ。SNSでは共通の趣味をもった人々で集まるネットワークが確立され、希望すればオフ会という形で実際に会うこともできる。出会う前から相手の趣味や嗜好を知ることができ、会社や周りの友人関係とは切り離されたライトな関係性であることも手伝って、“コスパ良く”恋人関係に発展しやすい。近年、多くの女性が安心して使うようになった恋愛アプリは、ネット上でコスパ良く、自分好みの恋人候補を“さっさと”見つけ出して、アプローチできる点が人気の理由となっている。

 

恋愛離れの二極化を、女性マーケティングに反映

恋愛離れを牽引する20代後半以降と、恋愛離れが回復しつつあるアラウンド20。二極化した恋愛離れは、それぞれの消費動向が異なるため、ニーズに合わせた女性マーケティングを実施したい。

恋愛離れを牽引する20代後半以降の今後の恋愛動向とマーケティング施策

晩婚化・晩産化が一般的になりつつある昨今、結婚や出産の“年齢のリミット”は以前よりも上昇している。恋愛意識(あるいは“焦り”)はさらに薄まり、「良い人に巡り合えたら、いつかは」といった受け身の女性は今後さらに増えていくだろう。結果、「おひとりさま」需要と「晩婚化・晩産化」需要が拡大すると考えられる。例えば、晩婚化・晩産化により需要が拡大するのは高齢出産男女向けの妊活市場や、エイジングケア市場、高齢パパ・ママ向け育児市場などだ。

アラウンド20の今後の恋愛動向とマーケティング施策

恋愛離れが二極化する境目となるアラウンド20は、アプローチをしたことも受けたことも少なく「交際したいと思える人に出会えていない」と答えた割合が高い。理想はあるが自信がなく、相手がいても「このままの関係を壊したくない」ために行動に移せないタイプが多いようだ。しかしSNSやマッチングアプリなどでの出会いには肯定的で、メリットがありコスパの良い出会いには積極的。例えば、結婚相談所ノッツェは、遺伝子検査で効率よく相手探しができるよう「DNAマッチングコース」を提供している。遺伝子検査から理想の恋愛・結婚相手を見つける、究極のコスパ恋愛戦略だ。また、バーチャルではなくリアルなコト体験に価値を置く世代でもあるので、体験を共有するアクティビティ型のイベント需要も見込まれるだろう。

 

女性がより自由に生きていける時代へ変化

「自分らしく生きたい」傾向の強い若者にとって、不安要素も多い恋愛は、プライベートの充実において不要なものにも成りえる。つまりこれは返して見れば自分らしく自由に生きられるようになった結果ともいえるかもしれない。恋愛離れをただ悲観するのではなく、女性が自由に恋愛や結婚を選択し、どの道を選んでも納得のいく人生を歩むことができるようになった時代の到来ともいえる。

 

人気商品の分析で明らかに、「女性の健康消費を促す基準」は?

女性たちに人気のヘルスケア商品には、どんな共通項があるのか?ヒット商品を中心に、人気を集める話題のヘルスケア商品のユーザー評価を徹底調査・分析し、各商品の人気を支える「高評価要素」と、「共通項」をリサーチ。共通項からは、女性の健康消費をおこす「マーケティングの新基準」も見えてきましたマーケティング戦略立案のヒント満載ですレポート詳細・お申し込みはこちら

 

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