コト消費・モノ消費・トキ消費とは?企業事例を紹介(3/3)

コト消費の次に来る消費傾向「トキ消費」とは?

ただ、コト消費が急速に生活者の間に広まり各社がコト消費マーケティングを取り入れるようになったことで「ありきたり感」が蔓延し始めていることは否めない。そこで「コト消費」の次の消費スタイルとして注目を集め始めているのが、博報堂生活総研が新たに提案する「トキ消費」だ。

トキ消費とは

トキ消費とは、同じ志向を持つ人とその時間や場所でしか味わえない盛り上がりを共有することで楽しむ消費行動のことを指す。SNSやスマホの普及に伴い、コト(体験)に関する情報が氾濫し始め、消費者はコト体験に既視感を得るようになった。特別感や貴重さが薄れたことで、消費者たちがコト体験の次に価値を見出すようになったのが、トキ消費だ。博報堂生活総研によるとトキ消費の主な特徴は以下3つだという。

  • 非再現性:同じ体験は二度とできない
  • 参加性:参加することが目的になっている
  • 貢献性:貢献していることが実感できる

トキ消費の例

トキ消費は、ハロウィンや音楽フェス、サッカーFIFAワールドカップなど同じような趣味を持つ人が集まるイベントや、コラボカフェやファンミーティング、オンラインサロンなど好きなものがテーマになっている場所が該当する。博報堂生活総研による以下の事例はトキ消費を理解しやすい。

 

酒井:例えば、アイドルグループ「ももいろクローバーZ」の活躍が挙げられます。彼女たちは武道館での単独ライブや「NHK 紅白歌合戦」に出演するという目標を掲げて、ファンと一緒に成長していく姿勢を打ち出して、徐々に人気を獲得するようになりました。まさに同じ“トキ”共有しようという姿が共感を得たのです。

中島:同じように、宮崎駿監督の映画「天空の城ラピュタ」のテレビ放映時に、タイミングを合わせてTwitter上に「バルス!」と投稿して一緒に盛り上がる“祭り”も当てはまるでしょう。その他にも、ハロウィンに仮装して渋谷のスクランブル交差点で見知らぬ人とハイタッチを交わす行動、クラウドファンディングで公開に結びつけた映画『この世界の片隅に』も「トキ消費」と言えます。(引用:HAKUHODO「コト消費」では説明できない。博報堂生活総研が新たに提案する「トキ消費」とは?)

フリマアプリ「メルカリ」のライブ配信は、出品者とファン(または購入者)がリアルタイムで交流ができ、ファンが画面を通してスタンプやメッセージを送ると、出品者から「〇〇ちゃん、メッセージありがとう!ぜひ買ってね!」などと話しかけてもらえる。人気の出品者の場合、同時に200人以上がライブ配信を視聴しているのだから、その中から自分だけに話しかけてもらえる体験は特別な感動がある。ただの購入者としてではなく、ファンとして出品者の活動を応援していることも多く、これもトキ消費の一つと言える。

モノ消費、コト消費、トキ消費 を使い分ける

3つの消費スタイルをご紹介したが、決して「モノ消費」を基点にしたマーケティング戦略がNGというわけではない。自社商品・サービスのフェーズ、ブランドイメージ、顧客層などによって戦略を使い分ける必要がある。スマートスピーカーを例に考えてみよう。今までの市場にはなかった商品・サービスで斬新性が高い場合は、「機能性」のみで売り込んでいく、つまり「モノ消費」基点のマーケティング戦略が有効。実際スマートスピーカーは、登場当時は斬新性の高さから注目度が高かった。しかし各社から類似商品が登場すると「機能性」だけをアピールして売ることは当然難しくなる。

そこで「コト消費」を基点にしたマーケティング戦略が必要になってくる。例えば、スマートスピーカーのある暮らしを住宅メーカー&自動車メーカーと協業し、ドライバーやその家族に1カ月間体験してもらうイベントはどうだろう。「海辺の豪華別荘とベンツが1カ月間、あなたのものに!スマートスピーカーがあなたの暮らしを豊かに彩ります」と題したイベントへの参加を通じて、スマートスピーカーに関心を持ってもらうという仕掛けだ。

しかしやがていつかはイベントのインパクトは薄れ、既視感が蔓延すると消費者の興味関心をひけなくなる、つまり消費意欲を刺激することがだんだん難しくなる。そこで次に必要になってくるのは「トキ消費」を基点にしたマーケティング戦略だ。

あるいは、上記のように3段階を踏まずとも、「コト消費」と「モノ消費」をセットにした戦略も考えらえるし、「コト消費」と「トキ消費」をセットにした戦略も考えれる。大事なのは「単純に広告を出して売る」だけのマーケティング戦略ではなく、今の生活者の消費スタイルにあわせたマーケティング戦略の発想だ。

今の女性消費者が大事にしている”コト”を理解する

消費意欲が低下している女性消費者たちに自社商品・サービスに関心を持ってもらうには、彼女たちの興味関心がどこにあるのかを確認しておきたい。

8つの新しい価値観

コト消費、トキ消費で女性消費者の関心を惹き付けるのに、ジェイアール東日本企画の調査結果「生活者の新しい8つの価値観」が参考になる。

豊かな暮らしに最も重要だと思うコト・モノ

消費者庁が実施した「消費生活に関する意識調査」の「豊かな暮らしに最も重要だと思うこと・もの」からは、「コト消費」重視型の消費傾向・価値観傾向が見られる。

  • 若年層ほど「家族や友人とのつながり」「時間」を重視
  • 年齢の上昇とともに「健康」を重視する割合が急増
  • 結婚、出産、家や車の購入などライフイベントが増えることで消費が活発になる20~30代は「お金」を重視する傾向が一時的に高くなるが、ある程度のモノが手元にそろってくる40代を境にお金の重要度は低下する

中間層女性と富裕層女性

なお、女性の興味関心ごとは、その女性が歩んでいるライフコースによって大きく異なる。女性マーケティングを専門とする当社ウーマンズの分析ではライフコース視点で女性を分類した場合、「20~70代の中間層女性」は20クラスター、「富裕層女性」は8クラスターに分類される。詳細はレポート「20~70代の中間層女性・富裕層女性のクラスター」に掲載しているのでご参照頂きたい。30代女性

訪日観光客もコト消費へ

観光庁が発表した訪日外国人消費動向調査によると、2018年の累計訪日客による旅行消費額(2019年3月発表)は4兆5,189億円で過去最高を更新した。

国籍・地域別の訪日外国人旅行消費額と構成比

訪日外国人旅行消費額の費目別構成比

訪日外国人旅行者の消費額を費目別で2017年と2018年を比較してみると消費動向の変化が見られる。

  • 買物代が減少
  • 娯楽等サービス費が増加
  • 飲食費が増加

中国人による爆買いは落ち着きを見せ、訪日観光客によるインバウンド消費もモノ消費からコト消費へと消費傾向がシフトし始めている。国内客による国内消費だけでなく、訪日観光客による消費を今後更に盛り上げ、集客力を上げるためにも新たな“打ち手”として、コト消費やトキ消費のマーケティングが必要だ。

 

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