コト消費・モノ消費・トキ消費とは?企業事例を紹介(2/3)
企業のコト消費事例
コト消費に重点を置いたマーケティング戦略は大手企業での施策が目立ち、中小企業はまだ着手していない印象が強い。企業動向を定点観測していると、商品・サービスの単純なリリースやキャンペーンで関心を惹こうとするよりも、「行ってみたい」「買ってみたい」「利用してみたい」気持ちにさせる仕掛け、つまり「コト消費」を提案するケースの方が話題性は高く集客に成功しているようだ。コト消費に力を入れることは新規顧客獲得だけでなく、リピーター(ファン)の獲得にもつながっている。企業各社の取り組みを見てみよう。
【蔦屋書店】本を売るだけでなく、さまざまな体験ができる空間を提供
コト消費の成功事例として度々取り上げられるのが蔦屋書店。一般的な書店は本を陳列販売しているだけだが蔦屋書店はコト消費を促す仕掛けを散りばめており、カフェ、ラウンジ、トラベルカウンター、ペンの名入れサービス、クリニックなどを併設している。来店者は蔦屋書店に行くだけでさまざまな体験ができる。
【ヤッホーブルーイング】ビールを売るだけでなく、ビールのある生活を提案
クラフトビールのメーカーとして多くのファンを持つヤッホーブルーイングの人気を支えるのは「商品=機能性価値」だけではない。同社は年に1回、ファンと同社のスタッフたちが交流するアウトドアビッグイベント「超宴」を開催しており、イベントではワークショップ、音楽ライブ、料理などさまざまなコンテンツを用意。毎回大きな盛り上がりを見せている。
他にも「早く帰れる夜をふやそう」というキャッチフレーズのもと、「定時退社協会」を立ち上げるなど、同社のおもしろい取り組みは多くのファンを楽しませている。
合わせて読みたい記事
【キッコーマン】ワインを売るだけではなくweb上でアッサンブラ―ジュ疑似体験を提供
キッコーマンが2018年11月に開始したのは、ワインの新しい楽しみ方を提案する体験型サービス「ワインブレンドパレット」。アッサンブラージュとは、ワイン原酒を複数組み合わせてブレンドすることを指す。世界の多くのワイナリーで行われているが、専門知識を要するため一般の人はなかなか体験できない。ワインブレッドパレットでは、そのアッサンブラージュをウェブ上で疑似体験できるようになっており、ECサイト上でさまざまな原酒からアッサンブラージュに使うものを選び、それらのブレンド比率を決める。ウェブ上で創作したオリジナルブレンドのワインは1本単位で製造され、後日郵送で届けられる。
【明治】チョコを売るだけではなく、チョコの新しい楽しみ方を提案
明治はVRやビジュアライズドテイスティングでカカオやチョコレートについてさまざまな体験ができるチョコレート体験型施設「Hello,Chocolate by meiji」を2018年11月19日(月)にオープン。VRを使ったカカオ産地ツアーや、映像・音響とともにチョコレートの香味を体感できるビジュアライズドテイスティングを提供する。施設での体験を通してチョコレートに関する理解を促進するとともに、五感を活用することでチョコレートの新しい楽しみ方を提案する。
年々注目度が高まっているヘルスツーリズムもコト消費の提供だ。一般的な旅館やホテルは、「宿泊+食事+温泉」のみを提供するが、ヘルスツーリズム型プランでは、運動プログラムやヘルシーな食事など、「宿泊しながら健康になる」ための健康プログラムを組み込んだプランにすることで、新しい体験や感動、楽しみを提供する。
コト消費戦略を取り入れることで消費者の囲い込みができるだけでなく、競合他社との価格競争や、これ以上の高品質化(アップデート)が難しい「機能性向上による激しい競争」をせずにすむ利点も大きい。