ヘルステック市場規模・企業事例・米国の動向(2/3)
ヘルステック市場で今後注目のサービス
ヘルステックの中でも特に今後市場成長性が高いと期待されている領域をピックアップ。
1.メンタルヘルスサービス
メンタルの不調が企業の生産性低下につながるなど、近年注目されているメンタルヘルス。厚生労働省が2015年から始めたストレスチェック制度もあり、企業では従業員のメンタルヘルス管理・不調改善を外部に依頼するケースが増えている。具体的には以下のようなサービスがある。
- ストレスチェックサービス(日立ヘルスケア)
企業のストレスチェック制度への対応を支援。ストレスの度合いを確認するほか、面接指導、結果の集計などを行うことが可能。企業の人事部門の負担軽減を図る
2.DTC遺伝子検査サービス
ホームページで申し込み後に自宅に郵送され、唾液等の採取後、返送すると結果が得られる手軽さがうけている。疾患リスクが分かるほか、肥満のリスクなどは、ダイエットに関心のある女性にとって興味深い検査項目。具体的には以下のようなサービスがある。
- ジーンクエスト ALL(ジーンクエスト)
300項目以上の健康リスクが解析できる。アルコール体質や肥満の傾向などが分かる。例えば2型糖尿病の発症リスクが高いことなどが分かれば、食や運動など生活習慣に気を付けるなど、対策が可能
3.睡眠改善サービス
睡眠の改善はメンタル不調にも影響を及ぼし、企業にとっては生産性向上に関わる。最近ではウェアラブルによって睡眠の実態が把握しやすくなり、スマホと連動することで情報の可視化、解析もできるようになってきた。生活者の睡眠に対する関心度向上も後押しし、スタートアップ企業をはじめ、多くの企業が提供。具体的には以下のようなサービスがある。
- O:SLEEP (株式会社O: (オー))
従業員の健康を管理するツール。従業員は睡眠に関するコーチングが受けられ、企業の人事部は従業員の睡眠状況が把握できる。不眠改善のための認知行動療法に基づいたAIコーチングを提供する。睡眠改善による生産性向上や不眠によるメンタル不調が原因の退職低減効果を企業にもたらす。同社は経済産業省主催「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2017」で優秀賞を受賞している
4.オンライン診療
パソコンなどを使ってインターネット上で診察や診断を行う「オンライン診療」は、患者の医療へのアクセスを高めることが期待されている。「原則初診は対面診療が必要」「オンライン診療を実施している医療機関がまだ少ない」「デジタルリテラシーが必要」「オンライン診療の保険適用が認められる対象疾患が豊富ではない」など、課題はあるものの、距離的制約や時間的制約を解消するオンライン診療は、今後さらに広がりを見せることが予想される。
5.治療アプリ
モバイルヘルスの中でも特に注目度が高い「治療アプリ」は、患者のセルフケアをサポートすることで、病気の治療につなげる役割を担う。アメリカが先行しており、日本ではこれから市場拡大が予想される。日本初となる「治療用アプリ(ニコチン依存症治療用アプリ)」を2019年5月に厚生労働省に承認申請したのは、ベンチャーのキュア・アップ(東京・中央)。医薬品でも医療機器でもない、第3の治療手段となる治療用アプリは同社の製品を皮切りに今後多くの企業から登場するだろう。
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6.フェムテック
女性特有の健康課題をテクノロジーで解決する「フェムテック」が近年注目されている。例えば、Joylux(米・シアトル)は女性の膣や尿失禁のトラブルを改善するための骨盤底筋ケアのデバイスを開発。メキシコ在住の若き起業家は「乳がん発見IoTブラジャー」を開発。1週間に1回わずか1時間着用するだけで乳がんの早期発見が可能となる。VCのフェムテックに対する投資熱が高まっていることもあり、特にベンチャーを中心にフェムテック参入企業は増えていくだろう。
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7.AIホスピタル
診断や治療にAIを活用する「AIホスピタル」の実現に向け内閣府は2018年7月、「AIホスピタルによる高度診断・治療システム研究開発計画」を発表。AIホスピタルの浸透により、高度で先進的な医療サービスの提供が可能となる。例えば「患者に起こる危険な兆候を速やかに察知」「薬剤の誤投与、画像データ見過ごしなどの人為的ミスの回避」「遺伝子・ゲノム情報に基づく個別化医療の実現」などだ。AIホスピタルは、女性の感情に何をもたらすのか?以下記事に掲載。
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以下は「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診療・治療システム」に関する内閣府公開の動画。