機能性表示食品の市場規模(2019年)から考える戦略と注目カテゴリー(2/3)

機能性表示食品の展開とヒットのポイント

機能性表示食品の市場拡大は今後も期待されているが、前述の通り、健康食品を謳う商品の爆発的な増加や、業界・消費者からの懐疑的な声が挙がっていることも事実。競争は激化していきながら、売れない商品や撤退していく商品も多く出てくるだろう。これまでは市場投入に一点集中してきた企業も、これから投入を考えている企業も、まずは一度立ち止まり、マーケティングに工夫をこらす必要がありそう。

【1】消費者が求める機能性は?

矢野経済研究所が行った アンケート調査結果では、消費者は以下の機能を持つ機能性表示食品に関心を寄せていることがわかった。

  1. 内臓脂肪対策(24.4%)
  2. 中性脂肪対策(24.4%)
  3. コレステロール対策(18.2%)
  4. 整腸(17.6%)
  5. 疲労感軽減(16.1%)
  6. アイケア(16.0%)
  7. 体脂肪対策(14.4%)
  8. 血圧対策( 13.4%)
  9. 骨の健康維持(13.2%)
  10. ストレス対策(11.9%)
  11. 血糖値対策(11.7%)
  12. 記憶力の向上(11.1%)
  13. 肌の乾燥対策(9.7%)
  14. 睡眠改善、健やかな眠りのサポート(9.6%)
  15. 膝関節対策(6.8%)
  16. 健康な肝機能の維持(6.8%)
  17. 体温(抹消体温)の維持(4.8%)
  18. ほこりやハウスダストによる目や鼻の不快感軽減(4.5%)
  19. 緊張感の軽減(3.9%)

出所.株式会社矢野経済研究所「健康食品市場に関する調査(2017年)」( 2017年1月23日発表)
注.調査時期: 2016年12月、調査(集計)対象:国内在住の30代以上の男女1,193名(男性598名、女性595名)、調査方法:インターネットアンケート、複数回答

期待株①  脳の健康

消費者の関心が圧倒的に高いのは、ダイエット関連の「内臓脂肪対策」と「中性脂肪対策」だが、今後特に需要の伸びが期待されるのは、脳の健康。理由は認知症人口の増加。流行語にもなった「睡眠負債」は、認知症発症につながる可能性があるとしてメディアで大きく取り上げられ、高齢者だけではなく、若い人も脳の健康や記憶力に関する商品やサービスに興味を示すようになった。また、認知症を患った家族を介護する側の心の深刻な健康状態がクローズアップされたことで、認知症に対する危機意識を持つ人が増えている

記憶力の機能を謳った商品には、ロッテの「歯につきにくいガム<記憶力を維持するタイプ>」や、小林製薬のサプリメント「イチョウ葉 〜記憶力を維持する 〜」などがある。このカテゴリーは今後さらに商品数が増えそう。

 【ロッテ】歯につきにくいガム粒(記憶力を維持するタイプ) 

【小林製薬】イチョウ葉  [機能性表示食品]

期待株②  疲労回復、睡眠改善、ストレス軽減、リラックス、集中力

疲労回復、睡眠改善、ストレス軽減、リラックス、集中力。これらは特に働き盛りの現役世代に求められるだろう。働き方改革の推進で、残業を減らす取り組み、テレワークの導入、プレミアムフライデーの実施などが各企業で進められているが、現状の課題として挙げられているのは、「これまでと同じ仕事量を短時間でこなすのは非現実的」「結局家に持ち帰って仕事をしている」「部下を帰らせ、完了しなかった仕事は上司である自分がやる」など、結局は仕事の負担量が変わっていないことだ。

これらの課題が浮き彫りになってきたことで、ワーカーの間で高まっているニーズが「短時間で仕事を集中的にこなしたい」。ただし、それは単純に「体を無理矢理目覚めさせて集中力を高めるもの」であれば良いわけではない。今の消費者は、滋養強壮ドリンクなどで疲れ切った体を叩き起こし、無理矢理眠い目を覚ましてくれる一時的な効果よりも、「疲労回復や睡眠改善、ストレス解消などを図ることで、結果的に日中のパフォーマスが上がる」という、根本的な体質改善・生活改善による効果を期待している。スポーツ関連市場でも、疲れを翌日に残さない「リカバリー」が2019年のトレンドキーワードとなっている。

続く2019年は運動後のリカバリーに注目が集まりそう。2020年のオリンピック効果や健康志向の定着で運動を習慣化した女性が増えたことで、ニーズが「運動の習慣化」から「疲れを翌日に残さない」へ移行しているからだ。働く女性や働くママが増加したことも「疲れを翌日に残したくない」ニーズの高まりに影響している。2019年のスポーツ関連市場では、リカバリー、ストレッチ、コンディショニング、休息、回復などのキーワードをチェックしておきたい。引用:ウーマンズラボ「スポーツ関連市場、2019年は「リカバリー」に期待」

また、スーパーフードトレンド予測の中でも、脳の活性化やリラクゼーション効果がある成分を含む「スマートドラックフード」が挙げらている。

さらに、新たなヘルスケアの概念として注目されている「ヒュッゲ」の広がりも、「疲労回復」「睡眠改善」「ストレス軽減」「リラックス」に対するニーズを高めるだろう。

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