ヘルスケアトレンド(健康・美容・予防医療)2018(2/4)

【1】働き方改革・健康経営支援型の商品サービス

キーワード1は「働き方改革・健康経営支援型の商品サービス」。B to B企業だけではなく、B to C企業にもおすすめのカテゴリーだ。健康経営を行うオフィス内では、次のような商品・サービスの需要が高まっている。

  • 昇降型デスク
  • 仕事をしながら走れるウォーキングマシン
  • 腰痛や肩こり対策のための低周波治療器
  • 健康データ管理システム
  • 従業員向けのヘルスケアアプリやヘルスケアポータルサイト
    など

そして、企業が健康経営を行うことで(健康経営を行っていない場合もあてはまるが)、ワーカーにはこのような需要が生まれ始めている。

  • ワークライフバランスを大事にしたいから生産性を高めて定時で帰りたい
  • 治療と仕事を両立しながら働きたい
  • 心身に過度なストレスを与えてまで仕事をしたくない(健康ファースト)

広がる、仕事と治療の両立

治療と仕事を両立しながら働く人たちを「ながらワーカー」と呼び、最近は公益社団法人ACジャパンが「ながら勤務」をテーマにしたCMを流すなど、治療と仕事の両立が広がりを見せ始めている。今後は「オンライン診療を気軽に受けられるようにしたい」「病院での待ち時間、周りを気にせず仕事ができるスペースをつくってほしい、待ち時間を減らす仕組みを導入してほしい」など、仕事と治療の両立を助ける環境や商品サービスが求められるようになるだろう。

健康経営は、ワーカーのプライベートにも変化をもたらす

社会全体の「健康に働く」という流れは、ワーカーのプライベートにも変化をもたらし始めている。平日の仕事のパフォーマンスをあげるために、日頃から「脳疲労対策」「ストレスケア対策」「疲れ対策」をしようと、個々のプライベートタイムにおけるヘルスケア意識が高まっている。ジョギングを日課にしたり、寝る前にマインドフルネスを実践したり、ヘッドスパに定期的に通ったり、トレッキングに山まで出かけたり、などなど。このような「仕事のパフォーマンスをあげるためのヘルスケア行動」の受け皿として、例えばリラクゼーションサロンやエステティックサロンは「ワーカー向けのメニュー開発」を行うなどすれば、新たな顧客開拓が可能になるだろう。

また「健康に働く」という概念の広がりにより今後、働く時間は総じて減少していくため、余暇市場の拡大も期待される。ワーケーションというスタイルも、健康経営の広がりによるものだ。

見落とされやすいオフィス型ワーカー以外のワーカー

このように見てみると、健康経営を実践する企業の増加に伴い、様々な場面でワーカーがヘルスケア商品・サービスを求めるようになることが分かる。健康経営支援型商品サービスを提供できるのは、B to B企業・データ解析やアプリ開発などのIT関連企業・大手企業が中心と思われがちだが、ワーカーのヘルスケアニーズはオフィス内だけで発生するわけではない。様々な場面でヘルスケアニーズが発生するので、ぜひ「ワーカー向け商品サービス」という視点で新たに開発・プロモーションしてみてはいかがだろうか。

ただ気を付けたいのは、健康経営支援のモノコトを求めるのはオフィス型ワーカーだけではないことだ。工場勤務員、販売員、施設スタッフ、介護病院スタッフ、教師といった、いわゆるオフィス型ワーカー以外のワーカーは「健康経営支援」カテゴリーにおいて見落とされがち。オフィス型以外の職場での女性ワーカーたちのヘルスケアニーズにも着目したい。

女性の産業別就業者数(総務省統計局 労働力調査をもとにウーマンズが作成)

【2】行動変容支援型商品・サービス

キーワード2は、「行動変容支援型商品・サービス」。最近女性たちの間で人気になっているヘルスケア商品・サービスには「行動変容を手助けしている」という共通項がある。

Googleプレイベストオブ2017に入賞したアプリ「みんチャレ」は、行動変容技術とAIを使った習慣化支援アプリ。3日坊主にならないよう、様々な工夫が取り入れられている。LilyというダイエットSNSサービスも人気だ。動画でエクササイズを紹介しており、継続させる・取り組ませる工夫が取り入れられている。“一つのエクササイズを、2〜5分の短時間動画”で紹介するのがLilyの特徴だ。今まではDVDエクササイズに取り組もうとすると30~60分、フィットネスの場合は店舗まで往復する時間や着替えの時間なども含め2~3時間はかかっていたため、時間がハードルになり、継続を諦める女性も多かった。

2~5分と短時間で、隙間時間を活用して取り組めるLilyは、日々のタスクが多い女性にとっては非常にありがたく、継続のモチベーションにつながる。動画解説のためエクササイズの方法がわかりやすい点や、誰もがアクセスしやすいYouTubeやインスタグラム上で情報を展開するという「情報へのアクセスのしやすさ」も人気の要因と考えられる。

アプリ内ではメンバー同士でグループをつくって励まし合いながら取り組めるようになっており、「コミュニケーション」+「手軽さ」が、飽き性の女性の継続を後押しする。

最近注目されているVRフィットネスも、「行動変容支援型」だ。以下の動画をご覧頂きたい。

面倒で億劫になりがちな運動だが、映像を見ながらゲーム感覚で取り組むことができれば、たちまち楽しみなタスクに変わる。VRフィットネスは「運動のゲーミフィケーション」と言えるだろう。

ヘルスケア関連の類似商品・サービスが次々に登場するが、「行動変容支援」の切り口で差別化を行う商品サービスはまだまだ少ない。一方で行動変容支援型は消費者評価は非常に高いので、ぜひ行動変容という視点で開発・プロモーションを行ってみてはいかがだろうか。

【3】ヒュッゲなヘルスケア

キーワード3は「ヒュッゲなヘルスケア」。ヒュッゲとは、世界幸福度ランキングで常に上位にランクインするデンマークのライフスタイル形式のことで、今世界的に注目され始めているキーワードだ。日本語に直訳できる言葉がないのだが、「居心地いい雰囲気、あたたかい雰囲気」という表現に近い。例えば以下のようなスタイルをヒュッゲなライフスタイルだ。

  • 暖炉の前で炎を眺めながらワインを飲み、家族とゆっくり過ごす
  • テレビやスマホをやめて、もこもこした肌触りの良い毛布にくるまって読書をする
  • 外の落ち葉や花を集めて自宅でアロマキャンドルをつくる

居心地がいい時間・空間で体と心に良いことをする

ヒュッゲの概念は、国や各専門家によってとらえ方は違うのだが、ウーマンズではヒュッゲなヘルスケアの概念を以下と位置付けている。

  • 心にも体にも心地よいことをして人生を味わう
  • 日々を楽しむ余裕を持つことで心と体の健康保つ

少々分かりづらいと思うので、「ヒュッゲなヘルスケア」の概念を具体的な健康行動で解説したい。

  • 以前までは「最近疲れやすい」と思ったときの女性の課題解決方法は「整体やサロンに行こう」「ドリンク剤で栄養補給しよう」などだったが、最近は「毎日忙しいせいかも。週末は家でのんびり読書して過ごそう」という方法に変化
  • 以前までは「最近目がかすむ」と思ったら「目に良いサプリや食材を摂取しよう」「眼鏡を変えてみよう」という行動をとっていたが、最近は「テレビやスマホを見る時間を減らしてデジタルデトックスをしよう」という行動に変化

つまり、何かをプラスαするヘルスケアではなく、「現状の環境で、居心地がいい時間・空間をつくりだし、体と心に良いことをしよう」という考え方にシフトしてきているのが「ヒュッゲなヘルスケア」だ。

過剰なモノコトを手放すシンプルライフを好む傾向

最近の女性消費者は「過剰なモノコトを手放すシンプルライフ」を好んだり、「現状を受け入れ、非日常ではなく日常を楽しみ、日常に幸せを見出す」傾向が強くなっている。このような消費行動・価値観の変化がヒュッゲなヘルスケアの広がりを今後更に後押ししていくと考えられる。

実際にヒュッゲなヘルスケアに関連する商品・サービスは女性たちにとても人気だ。「人間をダメにするソファ」「透明の瓶の中にドライフラワーとオイルを詰め込んだ観賞用インテリアグッズのハーバリウム」「大人の塗り絵コロリアージュ」などだ。他にも最近は脱デジタルをあえて実践する女性も増えており、これもヒュッゲなヘルスケアと捉えることができる。ヒュッゲの世界観を理解するには、「ゆっくり私時間(日本テレビ 金曜)」「ネコのしっぽカエルの手(NHK Eテレ 日曜)」が役に立つ。

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