ヘルスケアトレンド(健康・美容・予防医療)2018(4/4)

【7】人生100年時代の不安を払拭する

キーワード7は、「人生100年時代の不安を払拭する」。女性の場合、更年期症状から始まり、40代半ばごろから様々な不安を抱えるようになる。人生の前半期(産まれてから30代頃)までは、進学・卒業・入社・結婚・妊娠・出産・自宅購入など、様々な「楽しい」ライフイベントが起こるのに対し、人生の中盤~後半期に関しては、全般的に「ネガティブなイベント」も増えてくるようになる。例えば「更年期」「子供の独立」「閉経」「親の介護」「親や夫の死」「退職」「お金の不安」などだ。実際に、女性に行った幸福度調査では、年齢が上がるとともに幸福度が低下する傾向があることが分かっている。

40代半ばころから抱えやすい不安とは

年齢を重ねると様々な問題に直面するようになるため、各調査機関が行う「100歳まで生きたいと思うか?」という調査では決まって「100歳まで行きたくない」と回答する女性が半数を超えるという結果になる。

では、実際に40代半ばごろからどのような不安が起こるのか。40~50代では、老化による見た目変化に対する漠然とした不安・更年期に対する不安。60代からは「身体機能低下不安・介護する側される側としての不安・認知症に対する不安」「現役を離れることになる60代は、社会とのつながりが薄れていく不安」、後期高齢者の頃になると「終末期への不安」「買い物や家事仕事など日常生活をスムーズに行うことができるか?という不安」などが挙げられる。

40代半ば頃から女性は様々な不安を抱えるようになる

不安払拭型の商品・サービスのニーズ 人生後半期から強くなる

これら不安は一部に過ぎず、人生の後半期は様々な不安を抱えながら生きていくことになるため、人生後半期の女性は「不安を払拭してくれる商品サービス」に対するニーズが強くなる。

例えば明治安田生命が昨年12月に発売開始した90歳でも入れる医療保険は、発売直後から好評だという。また阪急交通社が提供しているシニア向けの趣味提案講座、阪急たびコト塾も人気だ。

不安払拭型商品やサービスは、男性よりも平均7年長生きする女性には特に喜ばれやすい。女性は「老後の面倒を夫にも子供にも見られたくない。」という気持ちが男性よりも強いため、今現在夫や子供がいる女性でも「周りに迷惑をかけずに長生きする覚悟、いつかは一人で生きていく覚悟」という気持ちが強い。

覚悟する一方で、当然何歳まで生きるか分からない漠然とした不安も多くあるため、今後急増する高齢女性向けに、各社は「100年生きることを見据えた、不安払拭」をテーマにした商品サービス開発、プロモーションを展開していくことは、大きなビジネスチャンスだ。

不安払拭型市場 4つのポイント

不安払拭型マーケットを攻略するためのポイントが4つあるのでご紹介したい。

ポイント1.更年期関連市場にチャンス

更年期関連市場がおすすめの理由は二つ。一つ目は、人口ボリューム層である団塊世代の子供たち(団塊ジュニア世代)がちょうど更年期世代であるため。そして2つ目は意外に思われるかもしれないが、女性向けヘルスケア商品サービスの中でも、更年期向け商品・サービス情報が、充実していないからだ。そのため、解決策が分からず更年期に関する悩みを放置したままの女性や、買い物難民になっている女性、正しい対策ができずにいる女性は少なくない。

ポイント2.80~90代向けの「普通」のモノコト

80~90代以上の女性向け商品サービス情報というと、医療・介護関連に集中しがちで、いわゆる“普通”の商品・サービス・情報(例:80~90代女性を対象としたコンサート・旅行・テレビ番組・食べ物・飲食店・エンタメ施設・オシャレな服・ネイルサロンなど)が圧倒的に不足している。医療・健康産業の急速な発展で、今後は80代以上でも心・脳・身体が元気な高齢者は増えていくため、80代以上を対象にした“普通”の商品・サービス・情報は、今後充実を図っていきたい市場だ。病気・介護関連のモノコトはすでに多くの企業が参入しているので、狙うべきは80代以上女性たちが「ワクワク・キラキラできる普通のモノコト」関連市場だ。

ポイント3.心の充足・心の刺激

「安心・生きがい・楽しさ・幸せ・未知な体験」といった心の充足・心の刺激に重点を置いた商品サービスプロモーションを行おう。

ポイント4.価値観・状態別のマーケティング施策

一言でシニア世代といっても、60歳と100歳女性では、40年の開きがあり、戦前戦後といった括りを含め生きてきた時代背景も環境も全く異なる。また身体機能の状態、資産状況、消費傾向、生活価値観も個々で大きく異なるため、それら「違い」を考慮した上で、マーケティング戦略を設計すると、ターゲット女性にリーチしやすくなるだろう。

【8】美の価値観の多様化による、パーソナライズ化

キーワード8は、「美の価値観の多様化による、パーソナライズ化」。一昔前までは、多くの女性たちの美の価値観はおよそ同じだった(多くの女性がいっせいに“聖子ちゃんカット”をする、“アムラー”になるなど)。ところが、多様な生き方をし、多様な価値観を持つようになり、そして個人主義化が進むようになった今の女性たちの美の価値観が「人それぞれ」になってきている。例えば、以下のようなケースだ。

  • 流行よりも自分に似合う、自分が一番かわいく見えるメイクをする
  • 痩せてる女性が好きな女性もいれば、ふっくらした女性をかわいいと感じる女性もいる(今世界的に少し太めの女性モデルを指す「プラスサイズモデル」が女性に人気だ)
  • 若さ=キレイ・魅力の象徴、という概念が薄れつつある(「美しいと思う人は誰?」というアメリカのある調査で、選ばれた女性たちの平均年齢が、数年前は30歳前後だったのに対し、現在では30代後半になった。最近では80歳のモデルが注目を集める)

このように美の基準が、個々で異なるようになった結果、女性たちが求めるようになったのが「自分だけのための、データにもとづいたパーソナライズ化商品・サービス」だ。パーソナライズ化というと、以前より1:1でトレーニングを教えるパーソナルトレー二ングサービスや、完全オーダーメイドでエステティックのメニューを提供するサービスがあった。“個々にあわせた完全オーダーメイドが価値”として提供されていたため、価格は高く設定されており、特別感・ラグジュアリー感があった。しかし今後はそのパーソナライズ化が“あらゆる場面”で求められるようになり一般的になっていくだろう。いくつか事例をご紹介したい。

(1)自分の唇のコンディションにあわせて選べるリップトリートメント

自分の唇のコンディションにあわせて選べるフローフシのリップトリートメント。自分の今の唇の状態にあわせて、どの商品を選ぶべきか?というのをHP上や店頭で提案している。

(2)99種類のカラーが揃ったアイシャドウ

99種類のカラーがそろった、コーセーのアイシャドウ。99種類もあるため、自分の欲しい・似合うカラーが必ず見つかる。ネット上の口コミには「自分に似合う色を必ず見つけられる!」と好評だ。

(3)1000パターン以上の組み合わせから提案 スキンケアシステム

資生堂のIoTスキンケアシステムは、その日の肌状態や気象条件、気分にあわせて1000パターン以上の組み合わせから、美容液・乳液を提供してくれる、パーソナライズ化スキンケアシステムだ。

(4)個々の体調にあわせてドリンクを提案

ネスレのウェルネス抹茶も、個々の体調にあわせてその日のおすすめドリンクを提案してくれる。サイト上で食事・生活習慣チェックができるようになっているので読者の皆さんも体験してみよう。

他、様々な分野で、パーソナライズ化が進んできている。デジタルマーケティングツールの業界では、以前からパーソナライズ施策が行われていたが、今後は商品サービスそのものが、パーソナライズ化していき、そしてパーソナライズ化商品・サービスが女性たちの基準になっていくだろう。

【9】脳ケア

キーワード9は、「脳ケア」。世界的に脳に対する関心が高まっており、昨年はFacebookが脳で操作するコンピュータ技術開発に取り組み始めたことを発表し、話題になった。

脳に対する関心が高まる中、脳ケアに積極的に取り組む消費者が増え始めている。脳ケアは今のところ主に「疲労・ストレス緩和型」と「機能低下予防型」の2つに大別される。

疲労・ストレス緩和型は、昨年注目を集めて話題になった「マインドフルネス」や、香りからアプローチする脳ケア、デジタルデトックス、脳疲労解消CD、ヘッドマッサージなど様々な商品・サービスが人気だ。

もう一つは「機能低下予防」。東京・恵比寿には、脳を鍛えるフィットネスジム「ブレインフィットネス」が登場。他、脳を鍛える書籍や脳トレ関連のゲーム、公文の「脳の健康教室」、大塚製薬の認知機能の機能性表示食品など、機能低下を予防する商品サービスが各社から登場している。

脳といえば、以前までは「現役世代には全く関係がなく、高齢者のもの」というイメージが強かったが、最近は現役世代の女性たちも、脳ケアに関心を寄せている。

【10】シーンで選ぶヘルスケア

キーワード10は、「シーンで選ぶヘルスケア」。何かヘルスケア行動に取り組むとき、以前までは「どの商品・サービスを使うか?」という選択が真っ先に行われていたが、最近は「その商品・サービスを、どのようなシーンで使うか?楽しむか?」の選択が同時に行われるようになっている。以下に事例を挙げる。

  • 自宅で、テレビや雑誌、映画を見ながら運動やストレッチをしよう
  • ナイトアクティビティの一環で、ナイトランイベントを楽しもう
  • 婚活・恋活で、トレッキング・カヌーを体験してこよう
  • 観光で、ヘルスツーリズムを体験しよう
  • 職場で、簡単にできるエクササイズを習慣化してみよう

なぜこのような流れになってきているのか?これには「女性消費者の無関心化」が大きく関係している。商品サービスが過剰にあふれる今の時代、商品サービスそのものに興味を持ちづらくなっている一方で、「体験」に関しては興味関心が高まっている。単純にヘルスケア商品・サービスを購入するよりも、それをどのようなシーン、つまりどのような体験とセットで使えるか?楽しめるか?を基準に考えるようになっている。

つまり、「商品・サービス」と「シーン」を掛け合わせた提案をしているモノコトの方が、女性消費者に選ばれる率は高くなる、ということだ。開発・企画・プロモーションでは、「商品サービス」に「シーン」を掛け合わせる、という発想もおすすめしたい。

 

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