ヘルスケアビジネスの市場規模・企業事例・領域(2/3)

ヘルスケアの政策コンセプトは「生涯現役社会の構築」

上記に挙げた現状から見えてくる問題点は、高齢化による労働力の減少と医療費の増大による国内の経済活動の停滞や財政破綻。そこで、この高齢化の進展に対応できる社会経済システムの再構築が急務とされ掲げられたのが、「生涯現役社会(誰もが生涯にわたり健康で自立した生活を送れる社会)」の構築。生涯現役社会によって以下を実現することを目指す。

  • 労働力の確保
  • 医療費の抑制
  • ヘルスケア産業の発展・新産業の創出=社会経済の基盤をつくる

政策概要

生涯現役社会の構築に向け、具体的には以下7項目の政策が進められている。

1.健康経営

企業の健康経営を推進することで国民の健康とQOLの向上を図る。具体的な施策として、健康経営の顕彰制度である「健康経営銘柄の選定」と「健康経営優良法人の認定」が毎年実施されている。自治体独自の顕彰制度も全国で増えている。

2.地域におけるヘルスケア産業の創出

地域の人が病気の予防から治療まで切れ目なく健康サービスを受けられるようにする仕組みの構築が、各地域の「地域版次世代ヘルスケア産業協議会」により進められている。各地域で新しいヘルスケアサービスの創出が求められ、平成29年度は「生活習慣病予防」「フレイル・認知症予防」をテーマにした地域のヘルスケアビジネス10件が支援を受けた(事業総額上限3,000万円、補助率2/3)。支援事業は以下。

3.健康・医療情報の活用

ビッグデータよりもクオリディテータ(品質が担保されたデータ)を重視した健康・医療情報の利活用が進められている。具体的には、IoTデバイスで取得したデータの連携、クオリティデータをもとに医療分野での使用に耐えられるレベルのAI構築、ヘルスケアソリューションを提供するビジネスモデルの構築など。実際に近年はデータの利活用を通じて、医薬品・医療機器などの既存技術やサービスとIoT・AI・ビッグデータを組み回せて新たなヘルスケアソリューションを構築する企業が登場してきている。

4.医療の国際展開

日本のヘルスケア産業のインバウンドとアウトバンド両方の取り組みが進められている。日本の優れた医療技術・サービスの国際展開を通じて、世界的な社会課題の解決に貢献するとともに、世界的なヘルスケア需要を国内に取り込むことを目的に、海外展開するプロジェクトや事業を支援している(アウトバンド)。日本国内での外国人患者の受け入れ体制も整えている(インバウンド)。

5.認知症・介護予防の取り組み

認知症対策として、予防・治療、ケア・介護、実証研究、取り組みが進められており、例えば病院や介護施設などと連携したオレンジプラットフォームなどが行われている。諸外国とも連携。

6.ヘルスケアビジネスコンテストの開催

ヘルスケアの課題解決に挑戦している優れた企業・団体を表彰する「ジャパンヘルスケアビジネスコンテスト」を開催。2016年に始まった。ヘルスケアビジネスの社会への周知とビジネスマッチング、企業・団体の成長を促すことを目的としている。

7.医療機器市場の拡大

医療機器の世界市場は拡大しているものの、日本の医療機器企業の売り上げ規模は小さい。この分野の国際競争力を高めるため国は医療機器産業を支援、海外市場の獲得を目指している。特に重点が置かれているのは以下5分野。

  • 手術支援ロボット・システム
  • 人口組織・臓器
  • 低侵襲治療
  • イメージング(画像診断)
  • 在宅医療機器

 

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