【2022年トレンド②】関心層にも無関心層にも、意識させないヘルスケア

ウーマンズが毎年2月に発表する恒例の「女性ヘルスケア市場のトレンドキーワード」。2022年は8つのキーワードを発表した(下記)。本稿では「関心層にも無関心層にも、意識させないヘルスケア」について解説。

ヘルスケア業界のマーケティングの常識と言えば、関心層に絞り込んだアプローチや、あるいは、関心層と無関心層でアプローチ手法を変えるというもの。いわゆる「行動変容ステージモデル」に則った考え方で、健康に対する関心レベルや行動レベルによってマーケティングを変えるということだ。行動変容ステージモデルは業界ではよく知られており、5段階に分けたステージの各定義も、そしてステージ別の効果的な行動変容施策も、どちらも理論として納得している人は多い。だが複雑な人間の心理をそう簡単に操るのは容易ではなく、実際は無関心層は言うまでもなく関心層であっても、健康行動を継続させるのは実に難儀。要は、正攻法ではあっても機能しづらいのだ。

そんななか近年注目を集めているのが、”意識させないヘルスケア”。本人の健康関心レベルやヘルスリテラシーの高低に関係なく、誰もが生活をしている中で意識することなく自然とヘルスケアができるソリューションの存在感が増している。もはや、行動変容ステージを踏まえたマーケティング施策は過去のハウツー?

  1. ジェンダード・イノベーション発想のヘルスケアソリューション
  2. 関心層にも無関心層にも、意識させないヘルスケア(◀︎今回はココ)
  3. 病気と共生する時代へ、商機は3次予防ソリューション
  4. 自宅で簡単・本格的に、2次予防ソリューション
  5. マジョリティは高齢者。エイジテックの急伸
  6. デジタルウェルビーイング
  7. 加速するアクティブ・エイジング
  8. ヘルスケア消費の基準は「心をときめかせるウェルビーイング

「女性ヘルスケア市場のトレンドキーワード2022」をウーマンズより発表(2022年2月)。ヘルスケア業界人が集まる、毎年恒例の人気講演です。

ヘルスケアビジネスのハードル

ハードルは購買行動より健康行動の促進

ヘルスケアビジネスのハードルは、購買行動を促進する前にまずは健康行動を促す必要があること。ましてや生活習慣病やガン、ロコモといった自分ゴト化させるのが難しい予防対策ソリューションや、プレコンセプションケア、更年期ケア、デリケートゾーンケア、GSM(閉経後泌尿生殖器症候群)、性教育など比較的新しいジャンルのヘルスケアソリューションの場合であれば、行動変容を促す前段階として啓蒙・啓発から始める必要があるため、十分な収益化までさらに時間を要してしまう。業界人なら誰もが頭を抱えたことがある、”あるある”の課題だ。

健康行動の難しさを示すデータも出ており、厚労省の調査によると、6割もの女性が健康行動に取り組んでいないことがわかっている。これだけ健康情報や健康商品が世の中に溢れ健康を意識する人が増えているとは言え、結局のところ、健康行動者率は半分にも満たないのが現実だ。

健康行動を起こさない女性6割、なぜ?

では、なぜ6割もの女性が健康行動を起こしていないのか?各種データを紐解いたところ、考えられる理由は次の8つ。

  1. 仕事・家事・育児で忙しいから
  2. 自分も身近な人も健康だから危機意識がない
  3. お金がないから
  4. 環境が整っていないから
  5. 楽しくないから
  6. ヘルスリテラシーが低いから
  7. 考えるのも 、決断も面倒だから
  8. 性格

上記が主な理由として考えられるが、ただしこれらは「健康行動を(自らの意思で)起こさない理由」というよりは、「健康行動を起こすことができない理由」「健康行動を起こす気になれない理由」「健康行動を妨げているもの」という捉え方の方が正確かもしれない。時間や経済的制約や、周囲の環境などが背景にあるからだ。

詳細は以下の記事にまとめているのでそちらからご覧いただきたいのだが、ここで言いたいのは、健康行動を促進するには多様な要因の排除やアプローチが必要になる=健康行動・健康消費を起こすのは一筋縄ではいかない、ということだ。

 

行動変容不要の意識させないヘルスケア、事例

人の健康行動はそう簡単には起こせないー。そんな課題を払拭するのが、意識しなくても健康維持・病気予防・病気の早期発見ができるヘルスケアソリューション。共通しているのは「個々にヘルスケア行動の努力をさせる必要がない」という点。あの手この手を使って行動変容を促したり啓発の手間をかけることなく、普段の生活の中で健康維持・病気予防・早期発見を実現している。昨今の事例を見てみよう。

着るだけでヘルスケア

アパレル業界で昨今トレンドになっているのが、着るだけでヘルスケアができる衣類。むくみケアの着圧ストッキング、暑さ対策の冷感インナー、骨盤矯正ショーツなど、市場にはすでに様々なヘルスケア衣類が出回っているが、特に近年はテクノロジーの進化により、ヘルスケア業界に進出するアパレルブランドの躍進が目覚ましい。経血吸水、疲労回復、スキンケア、乾癬など、多様な健康悩みやニーズにフォーカスした衣類が登場している(詳細は以下の記事に掲載)。着るだけで良いので、「疲れを取るために〜しなくては」「スキンケアのために〜しなくては」といった、健康行動を起こすためのちょっとした意気込みは無論必要ない。健康行動を意識することなく普段の生活の中でヘルスケアができるわかりやすい事例だ。

住むだけでヘルスケア

住居内の空間・動線設計や、非接触ツール、AIやロボットの活用により、普段通りに生活しながらヘルスケアができる住宅も登場している。例えばパナソニックの「健康に暮らし続けられる家」は、コロナ禍による非接触ニーズを捉え、特別な行動を取らずして感染対策ができる動線設計や非接触ツールを導入。高齢者の自宅内での転倒予防策として、電源コードに足を引っ掛けないようコンセントを高い位置に設置するといった人生100年時代に備えた配慮も。国外では、認知症患者の自律した生活をサポートする健康住宅として、AIとロボット搭載のスマートホームのあり方についても議論されており、「住んでいるだけで健康になれる家」は住宅業界のスタンダートになる気配だ。

排泄するだけで健康状態を確認

TOTOからは、座るだけで心身の状態をモニタリングできるトイレ「ウェルネストイレ」の事例(CES2021でコンセプトを発表)。最先端のセンシング技術を用い排泄物から健康状態を把握・分析し、ウェルネスに関するリコメンドをユーザーのスマートアプリに届けるというもので、特別な健康機器を体に装着したり操作する必要が一切ない。排泄をするだけなので面倒ゴトは皆無。健康意識が低い人や健康行動がなかなか起きない人も、これなら心理的負担なく日々の自分の健康状態を把握できる。

その他

歩く機会を増やすためにオフィス内で動線を確保したり、ストレス緩和を目的としたオフィス内の植栽といった空間設計でワーカーの健康維持・増進をサポートする「健康経営オフィス」、旅先での滞在中に食事や温泉などを通じて心身をケアする「ヘルスツーリズム」、健康関心層だけを対象にした政策から脱却し誰もが健康になれる街づくりを目指す「スマートウェルネスシティ」も、健康行動の意思を個々に持たせる必要が無く、心理的負担も体力的負担も無い。以前からあるものだが、意識させないヘルスケアの代表的な事例だ。

 

環境・暮らしに溶け込ませたソリューション開発を

こういった”意識させないヘルスケア”の概念は、経産省が推進している「ロボットフレンドリー」の考え方に似ているかもしれない。これまでロボット開発メーカーやシステムインテグレーターは、いかにして既存の環境や業務にロボットを適用させるか?というところに苦戦してきたが、ロボットフレンドリーの定義である「既存の環境や業務に合わせてロボット開発をするのではなく、環境・業務そのものをロボットが活躍しやすい状態に変えていく」という手法を取るようになれば、ロボットの普及は一気に加速すると言われている。

これと同様にヘルスケアについても、「商品・サービスに合わせて生活者の行動や意識を変えさせようとするのではなく、商品・サービスそのものを、生活者の環境・暮らし方・行動に馴染ませていく」という考え方にシフトすれば、人々の健康力は簡単に向上させられるはずだ。関心層も無関心層も平等に健康維持増進・病気予防ができるようになり、近年指摘されている健康格差拡大の防止にもつながるだろう。

 

ジェンダード・イノベーションEXPO開催(お知らせ)

フェムテックの一大ブーム、性差医療・性差ヘルスケアの急速な広がり、女性ヘルスケア市場へ新規参入する企業の急増などの業界動向を踏まえ、健康業界の展示会として国内最大規模の「健康博覧会」と、女性ヘルスケア市場の分析を専門に行う「ウーマンズ」は、性差を考慮した女性ヘルスケア製品が集まるBtoB展示会「ジェンダードイノベーションEXPO」を開催します。出展ご希望の企業様はお気軽にお問合せください。詳細はコチラ。

 

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