【2022年トレンド④】自宅で簡単・本格的に、2次予防ソリューションが活況

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ウーマンズが毎年2月に発表する恒例の「女性ヘルスケア市場のトレンドキーワード」。2022年は8つのキーワードを発表した(下記)。本稿では「自宅で簡単・本格的に!2次予防のヘルスケアサービス」について解説。

図らずも、コロナ禍による生活変化が後押しとなり需要拡大の期待が高まっているのが、自宅で本格的なヘルスケアができる高度なサービス。これまでは医療機関や専門施設に出向かなければ利用できなかったサービスを自宅で手軽に受けられる点が、今の生活様式にフィット。わざわざ外出する必要がないので行動変容が起きやすく、医療機関の受診などに感じる心理的ハードルを押し下げている点も二重丸。まだまだ需要喚起が必要な新市場だがユーザーのベネフィットを並べてみると納得、着実な成長を期待できる。事例を見ていこう。

  1. ジェンダード・イノベーション発想のヘルスケアソリューション
  2. 関心層にも無関心層にも、意識させないヘルスケア
  3. 病気と共生する時代へ、商機は3次予防ソリューション
  4. 自宅で簡単・本格的に、2次予防ソリューション(◀︎今回はココ)
  5. マジョリティは高齢者。エイジテックの急伸
  6. デジタルウェルビーイング
  7. 加速するアクティブ・エイジング
  8. ヘルスケア消費の基準は「心をときめかせるウェルビーイング

「女性ヘルスケア市場のトレンドキーワード2022」をウーマンズより発表(2022年2月)。ヘルスケア業界人が集まる、毎年恒例の人気講演です。

自宅でできるようになった2次予防

自宅でできるヘルスケアと言えば、健康食品、エクササイズマシン、健康測定器(例:体重計、塩分計、血圧計など)、健康管理アプリ、ウェアラブルデバイス、バスグッズなど以前からすでに多種多様にある。

では最近の”自宅でできるヘルスケア”は何が新しいのか?それはカバーしている予防医療の領域だ。既述したような従来のヘルスケア商品は主に1次予防領域であるのに対し、昨今は2次予防領域のヘルスケアサービスのローンチが相次いでいる。2次予防の定義である「早期発見・早期治療」に寄与するソリューションで、代表的な事例が検査キット。かつては医療機関や専門施設に出向いて利用するのが一般的だったサービスが、今はオンラインで簡単に入手・利用できるようになった。

 

需要拡大を期待できる理由 〜ユーザーベネフィット〜

自宅で利用できる2次予防ソリューションの需要拡大が期待されている理由を、ユーザーベネフィットの視点から考えてみよう。

1.コロナ禍の消費行動やニーズの変化に対応

コロナ禍では人々の価値観・生活様式・消費行動が激変し、様々な変化をもたらした。例えば感染不安による受診控えや、その代替策として需要が伸びた電話診療・オンライン診療の利用やセルフメディケーション。3密回避、非接触ニーズ、緊急事態宣言や蔓延防止措置による行動制限を背景に活発になったオンライン消費など(ネットショッピングの利用率はコロナ禍で高まり、2020年3月以降で急増<令和3年版 情報通信白書,総務省>)

コロナ禍によるこういった意識変化や消費行動の変化が、自宅で利用できる2次予防ソリューションの認知を引き上げユーザー数を伸ばしている。新型コロナ感染を判定する検査キットが普及したことも、もちろん一因として大きい。

2.健康行動を起こさない2大要因を払拭

健康行動を起こさない現代人の最たる理由は「忙しいから」と「面倒だから」(調査結果詳細は以下の記事に掲載)。とりわけ緊急性の低い健診・検診でこの理由が当てはまりやすく、未受診者の行動変容促進は未だ課題だ。この2大要因を払拭するのが、自宅で利用できる2次予防ソリューション。オンラインで商品・サービスを調べたり口コミを確認する作業にある程度の時間は要するが、それでも外出するよりは時間をはるかに節約できる。時間的制約や家族のケアワークのために外出が困難な人、あるいは地理的な問題から専門サービスを受けられない人たちに特に刺さりやすい。

3.心理的ハードルの軽減

医療機関の受診で女性にとって最も心理的ハードルが高いのは産婦人科だろう。産婦人科医は男性が圧倒的に多く、診察室で下着を脱いで股を開くのは女性なら誰もが抵抗を感じる。内診で何をされるのかわからない不安や痛みへの恐怖、また、予期せぬ病気を宣告されるかもしれない恐怖もある。そういった心理的ハードルから産婦人科を受診しない女性にとって、自宅でできる2次予防ソリューションは救世主。ストレスも大幅に軽減される。

4.女性特有のケアニーズに対応

フェムテックのブームがやってきたことで、自分の体と積極的に向き合う女性が増えている。国内全体で見るとフェムテックの認知はまだ一般的とは言えないが、これまでタブー視されてきた「生理・PMS」「妊活」「更年期」「セクシャルウェルネス」といったトピックをマスメディアやフェムテック企業が堂々と取り上げるようになったことで、女性たちのマインドは徐々にオープンに。女性特有の健康リスクやケアに関する情報にアクセスしたりSNSで情報発信をする女性が、この2年ほどで随分と増えた。フェムテックブームによる健康課題の自分ゴト化やケアニーズの顕在化も、2次予防ソリューションの需要拡大を見込める理由だ。

 

自宅でできる2次予防ソリューション、事例

自宅でできる2次予防ソリューションの事例を見ていこう。共通しているのは、いずれも自宅で簡単・本格的に2次予防に取り組める点だ。

日本初、リモートで視力検査(メガネスーパー)

ネガネ・コンタクトを販売する全国チェーンのメガネスーパーは、コロナ禍の外出不便や不安に応える新たな検査サービス「リモート視力検査システム」を2020年より開始している。来店や通院不要で度付きメガネを作れるようにしたもので、自宅に届けられる専用ポータブル検査キットを、ズーム上でコンシェルジュの指示に従いながら使うだけ。測定した視力をもとにネット上でレンズの注文ができる。コロナ禍の外出に不安を感じている人だけでなく、時間や身体的制約から外出が困難な人や近隣にメガネ店がない人の需要も掴んでいる。

【出典】メガネスーパー

世界初、尿で栄養診断(ユカシカド)

尿で栄養の過不足がわかる検査キットもある。世界で初めて尿から栄養の過不足評価を可能にした「ビタノート」は、尿中の代謝物質を測定し栄養状態を把握する検査で、自宅で採尿して郵送するだけ。検査できるのは20項目で、たんぱく質、ビタミン8種、ミネラル9種、酸化ストレス、サイトカイン。こちらも検査後のアフターケアを用意しており、購入希望者には検査結果に基づいたサブスク型のパーソナライズサプリが届けられる。自分でなんとなく不足していると思っている栄養素をサプリで摂取するのとは違い、明確なエビデンスをベースにしたサプリが届けられるので、納得して継続購入ができる。

フロントエンドは本格的な栄養検査キット、バックエンドはサブスク型のパーソナライズサプリ。マーケティング戦略の視点でも参考になる事例だ。

尿一滴でがんリスクを検査(ヒロツバイオサイエンス)

生物診断研究を行うヒロツバイオサイエンス(東京・千代田)は、乳がん、子宮がん、胃がん、大腸がん、肺がんなど15種類のがんリスクを尿一滴で調べられる検査キット「線虫がん検査 エヌノーズ」を開発・販売。体長約1ミリの生物である線虫の「尿に含まれるがんの匂いに集まり、健康な人の尿からは逃げる」という性質を利用したもので、サービス開始1年で15万人が受検している。ハイリスクの判定が出た場合は看護師などの専門スタッフとオンラインで相談できる体制も整えており、検査のみならず自宅にいながら医療相談ができる点もありがたい。以下は同サービスのTVCM。

日本初、卵巣年齢のチェックキット(ファミワン)

卵巣年齢の検査キットもある。「エフチェック(株式会社ファミワン)」は卵巣に残っている卵子の数の目安である卵巣予備能が何歳相当であるのかを調べるもので、妊娠や不妊治療にかけられる期間がどれだけ残されているかを把握できる。

 

自宅で利用できる2次予防、特に刺さるのは?

国民皆保険制度が充実している日本では国民が医療サービスに対して受動的で、不調や病気になってから健康行動や受診行動が起きるのが一般的。そのため本稿で見てきたような2次予防ソリューションを利用させるのは、例え外出を不要とする自宅内であっても容易ではない。また、こういったソリューションはある程度のネットリテラシーやデバイスを使いこなすスキルも求められるため、スマホやアプリとの連携やズームなどオンライン会議システムの利用がマストの場合は、特に高齢者には敬遠される。医療者や専門家と対面で直接話したい・診てもらいたいという人にも刺さりづらいだろう。

自宅で利用できる2次予防ソリューションの市場が急拡大するとは考えづらい理由はそこにあるが、それでも、コロナ禍が後押しとなり利便性を評価したり関心を持っているユーザーがいるのは事実。特に刺さりやすいのは、「ヘルスリテラシーが高い=学歴や所得が高い人」「健康意識はあるが、仕事や家族のケアワークで時間がない多忙な人」「健康意識はあるが、身体的制約から外出困難な人」「健康意識はあるが、過疎地に住んでいて交通手段がない人」「健康意識はあるが、外出や受診に心理的ハードルがある人」「老齢の親が遠くに住んでおり、通院や外出に付き添えない人」などだろう。

 

ジェンダード・イノベーションEXPO開催(お知らせ)

フェムテックの一大ブーム、性差医療・性差ヘルスケアの急速な広がり、女性ヘルスケア市場へ新規参入する企業の急増などの業界動向を踏まえ、健康業界の展示会として国内最大規模の「健康博覧会」と、女性ヘルスケア市場の分析を専門に行う「ウーマンズ」は、性差を考慮した女性ヘルスケア製品が集まるBtoB展示会「ジェンダードイノベーションEXPO」を開催します。出展ご希望の企業様はお気軽にお問合せください。詳細はコチラ。

 

 

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