科学的介護とは?官民の取り組み事例(2/3)
科学的介護の実現に向けたこれまでの動き
科学的介護の実現が掲げられてからこれまでの経緯と今後の流れは以下の通り。
- 【2017年6月】
「未来投資戦2017」の中でソサエティ5.0に向けた具体的施策として「科学的介護の実現」を目指すとし、科学的介護に必要なデータを収集・分析するためのデータベースを構築する方針が示された - 【2017年10月〜2017年12月】
厚生労働省が「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」を設置。科学的に自立支援等の効果が裏付けられた介護サービスの方法論を確立し普及していくために必要な事項や、エビデンスの蓄積に必要な収集すべき情報の領域(※)について検討を進めた
(※)栄養、リハビリテーション、(主に介護支援専門員による)アセスメント、介護サービス計画(ケアプラン)、利用者満足度、リハビリテーション以外の介入の情報など - 【2018年1月】
「要介護認定情報・介護レセプト等情報の提供に関する有識者会議」が開かれ、データヘルス改革における基盤として科学的介護データ提供用データベース構築等事業への予算案がまとめられた - 【2018年3月】
介護領域のエビデンス構築のために新たにデータを収集するデータベース「CHASE(Care, Health Status & Events)」 のデータ収集項目を策定。「研究利用の重要性」と「データ利用の可能性」を考慮し設定された項目は265項目に上るが、介護現場へのフィードバックや過去のデータとの連結などを重ねて、随時バージョンアップしていくこととされた - 【2018年6月】
「未来投資戦略2018」で、次の方針が示された。
・自立支援等の効果が科学的に裏付けられた介護を実現するため、高齢者の状態、ケアの内容などのデータを収集・分析するデータベースの運用を平成 32 年度に本格的に開始する。これにより、効果が裏付けられた介護サービスについては、次期以降の介護報酬改定で評価する。
・センサー等で取得できるものも含め、更なるデータ収集/分析については、介護事業所等の負担も考慮し、技術革新等の状況を踏まえ総合的に検討する。
- 【2019年1月】
厚労省の老健局長を支出負担行為担当官として「科学的介護データ提供関連サービスに係るシステム構築業務一式」の入札公告がなされた - 【2019年度中】
夏までに新たな介護データベースとなるCHASEの初期仕様が固められる。また実際の介護現場での実験的なモデル運用が行われ、その結果を受けての改良案が議論される予定 - 【2020年度〜】
データ収集、データベース分析などCHASEの本格的な運用を開始し、科学的介護サービスが国民に提示される予定
科学的介護の実践例
ここからは科学的介護の実例と成果を4つ紹介。
1.「5つのゼロ」と「4つの自立支援」推進(全国老人福祉施設協議会)
「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」にオブザーバーとして参加している(公社)全国老人福祉施設協議会(全国老施協)は、科学的介護を通じ「5つのゼロ」と「4つの自立支援」を推進し活動をしている。
<5つのゼロ>
- おむつゼロ
水分ケア・食事改善・歩行訓練などの総合的ケアによりトレイでの自然排便を促し、おむつの利用をなくす - 骨折ゼロ
施設内の環境整備・転倒因子排除に取り組むことで、高齢者の寝たきりの要因となる骨折をなくす - 胃ろうゼロ
適切なアセスメントと専門職との連携により、本人・家族も望まない胃ろうをなくす - 拘束ゼロ
高齢者の尊厳を損なう拘束をしない - 褥瘡(じょくそう)ゼロ
苦痛と重大な感染症を引き起こす褥瘡をなくす
(出典:全国老人福祉施設協議会)
<4つの自立支援>
- 認知症ケア
認知症の原因疾患別特徴を踏まえたケアの実践で、根拠に基づいた認知症ケアをすすめる - 看取りケア
これからの多死社会において、特養は地域社会のセーフティネットを目指す - リハビリテーション
機能訓練は生活リハビリを中心に行い、寝たきりの生活などで起こりやすい心身機能の低下「廃用症候群」への対策を徹底する - 口腔ケア
歯科医師や歯科衛生士など、歯科専門職との連携・協働でADL、QOlを高めるアプローチに取組む
(出典:全国老人福祉施設協議会)