シニアマーケティング 事例・プロモーション・トレンド(3/5)
シニア女性の消費行動の特徴と興味関心分野
前述の通りシニア女性でもさまざまなタイプに分類されるのでクラスターによって消費行動の特徴は異なるが、シニア女性の消費行動の特徴一例を以下に紹介。
シニア女性の消費行動の特徴と興味関心分野
- 子育て中ママと同じくらい、食に対して安心安全志向が強い
- 子・まごの影響を受けやすい
- 健康、終活、生前整理への関心が最も高い年代
- 運動行動者率が高い
- ブランド重視派が多い(ブランド力=購入するに値する信頼力)
- 他者とのリアルな接触を好む(若者世代はデジタルによる接触重視)
- 60~80代のネット通販利用率は2~3割(消費者庁「平成29年版消費者白書」)
- 60代・70代の6 〜7割が、豊かな暮らしのために最も重要なことは「健康」(消費者庁「若者の消費に対する意識」)
- マスメディアの影響をわりと強く受ける
- テレビ視聴時間が長い
- DMや折り込みチラシをわりとしっかり読み込む
- 商品検討の際、口コミをあまり参考にしない。参考にするのは3割(平成29年消費者白書「若者の消費」)
- 現在お金を掛けているもの(60代):食べること(68.1%)、医療(36.1%)、旅行(31.8%)(平成29年消費者白書「消費者を取り巻く社会経済情勢と消費者意識・行動」)
- 現在お金を掛けているもの(70代):食べること(69.2%)、医療(49.3%)、交際(27.8%)(平成29年消費者白書「消費者を取り巻く社会経済情勢と消費者意識・行動」)
- 60代の連絡手段はスマホ・携帯電話、70代は固定電話(NTTドコモ モバイル社会研究所)
- ICTによる健康サービス利用者はわずか8%、今後使ってみたいは24%(NTTドコモ モバイル社会研究所)
- 自然、文化芸術、歴史に対する興味関心が高い
- 地域への興味関心が高い(地域のイベントなど)
など
他世代との比較
消費行動の特徴を他世代と比較すると、次の違いが見られた(ウーマンズ実施調査)。
- <20~30代>
ユーザビリティよりデザイン重視 - <40代>
効果、利便性、お得感を重視 - <50代>
企業の“消費者に対する姿勢”や“理念”を重視 - <60代>
ブランドを重視(ブランド力=購入するに値する信頼力がある)
シニア女性の不満とニーズ
シニア女性でもさまざまなタイプに分類されるためクラスターによって不満・ニーズは異なるが、以下に一例を紹介。
- 企業や社会が“高齢者扱い”をするから、気持ちが先に老け込む
- 大人の紙おむつのCMは夫と一緒に見ていると気まづくなる
- シャンプーのボトルに記載されている文字が小さくて読みづらい。HPも同様
- 企業への問い合わせ電話。人と直接話したいのに自動音声対応のため、問題を解決できないことが多い
- 店頭でのシニア割引で、販売員に年齢を証明できるものを提示しなくてはならないのが嫌。「女性は年齢を隠したいものなのに、なぜわざわざ年齢を証明できるものを出さなきゃいけないの?」
- 一人暮らしが不安な理由(厚生労働省「高齢社会に関する意識調査平成28年」)
1位:病気になったときのこと(79.7%)
2位:寝たきりや身体が不自由になり、介護が必要になったときのこと(79.1%)
3位:買い物などの日常生活のこと(43.5%) - 一人暮らしで受けたいサービス(高齢社会に関する意識調査「厚生労働省 平成28年」)
1位:通院、買い物等の外出の手伝い(51.1%)
2位:洗濯や食事の準備などの日常的な家事支援(37.5%)
3位:配食サービスの支援(27.9%) - 高齢者の家庭内ヒヤリ・ハット経験(東京都「平成28年度 ヒヤリ・ハット調査」)
1位:リビング・居間(34.2%)
2位:自宅の玄関・階段・廊下(33.4%)
3位:台所・ダイニング(30.5%)
4位:自宅の庭・ベランダ(20.1%)
5位:寝室・ベッド・寝具等(19.9%) - 高齢者向け(80~100歳代)の基礎化粧品、メイクアップ商品がない
- テレビや販売員の会話など、早口で聞き取れない(理解できない)
シニアマーケティングの戦略ヒント
ターゲティング
ターゲティングでは、クラスターの策定を始めに行いたい。シニアマーケティングやシニア研究を行う各社がシニアのクラスター分析を行っているので、それらを参考にするか、あるいは自社でクラスター分析を行う。なお、当サイト運営会社の当社ウーマンズでは20~70代女性を20クラスターに分類しているので「20~70代の中間層女性・富裕層女性のクラスター」もご参照頂きたい。
シニアのクラスター分析を行うとき、検討材料として必ず入れたいのは「医療・介護レベル」。
- <医療・介護レベル例>
・特に不調はないクラスター(自立している=いわゆるアクティブシニア)
・持病があり通院しているクラスター(自立している)
・要介護者のうち身体機能低下クラスター
・要介護者のうち認知機能低下クラスター
ペルソナ設定時のポイント
ターゲティングが決定したら、次にペルソナを策定する(マーケティングではペルソナ策定を強く推奨するケースが多いが、ペルソナ策定は必ずしも必要というわけではない)。ペルソナ設定時のポイントは以下。
- 特にシニアの場合、都市在住派か、地方在住派かで傾向が大きく変わることを理解しておく
- ペルソナは定期的な見直しを行い、常に社会情勢やトレンドを反映させる
- シニアマーケティングでは、ペルソナ設定時に「医療・介護レベル」を必ず入れる
- 自社都合の“理想”にならないようにする
- リアリティある人物像を描く
合わせて読みたい記事
デザイン・世界観
シニア向けの商品・サービスのデザインやブランディングは、どうも“年寄りくさい”ものがいまだに多い。そうならないよう注意しよう。例は以下。
- サイトやチラシに採用される写真は、フリー素材写真のような安っぽいもの。よく見かけるのは、「芝生×青空×白髪のシニア」の3セット
- グレーや深緑、黒、茶色など地味な色が多い
- 20~40代女性をターゲットにした商品のような「キラキラ感」を感じさせないデザイン
- 小さくて読めない文字サイズが多い。他、文字×背景色(透明のボトルに白文字を採用するなど)、行間への配慮がない
- 複雑な商品説明で理解しづらい(シンプルに理解できる構成が◎)
など
プロモーション、コピー
シニア女性へのアプローチに悩む企業は多い。若い世代のように活発にSNSやネットを使わないからだ。以下は、コピーやプロモーションのヒントに。
- 長く複雑な文章・コピーよりも、簡潔で理解しやすい文章・コピー
- カタカナや英語、新しい言葉などは使わない(耳慣れた言葉を好み、耳慣れない言葉は避ける傾向にあるため)
- 体験談をもとにしたコピーを使う(チラシなどに掲載される体験談を信頼する傾向が強いため)
- 不快感を与えないよう配慮する(「紙おむつ」「失禁」などダイレクトな言葉はNG)
- イメージコピーよりも、ダイレクトにメリットを伝えるコピーの方が購買意欲を高める
- 〇〇歳の女性におすすめの△△、のような年齢表記が有効な場合もあるが、かえって年齢表記が購買意欲を削ぐこともあるため、年齢表記の有無は要検討。年齢表記をせずに「〇〇歳の女性に購入してほしい」場合は、イメージで伝えるのが◎(例:CMで採用するのは70代の女優にするが、キャッチコピーには「70歳」を表記しない)。
3K不安の払拭
シニアの3K不安とは、「健康」「経済(金)」「孤独」不安のことで、よく、シニアビジネス成功には「3K不安の解消」にあると言われる。3K不安をどう払拭するか?の視点からマーケティングを考える必要がある。
人生の後半期には3K不安を解消しようと「スマート・エイジング」、歳を重ねることによる体と心の変化に賢く対処し、知的に成熟する生き方にシフトしていく。
私たち東北大学では、これまでの医学、心理学、社会学などの知見を統合して、スマート・エイジング実現のためには「運動」「認知」「栄養」「社会性」の4つの条件が満たされる必要があると結論づけた。(引用:日経MJ 2019年4月19日)