【2019】化粧品の市場規模と動向 復活の兆し見せる日本と、成長著しいアジア(1/3)

化粧品市場が好調に伸びている。シワ改善の効能効果を取得した製品など、国内の消費者ニーズを取り込んだ新製品投入が活発なほか、インバウンド需要も活況を呈している。今後はこれまで国内市場に依存してきた化粧品業界も、化粧品の需要増加が見込まれるアジアを筆頭に海外戦略もてこ入れしていくとみられ、インバウンド需要への戦略と併せ、海外事業戦略に注目が高まる。

化粧品の市場規模と動向(国内)

国内での市場拡大は頭打ちと言われてきた化粧品市場だが、2015年以降、微増での拡大が続いている。その要因として富士経済は「訪日外国人の消費額拡大の継続」と「日本人のスキンケア・メイクの需要回復」を挙げている。市場規模と合わせて、品目別出荷額ランキンングを見てみよう。

2020年、3兆円市場に成長(富士経済)

国内の化粧品市場規模は堅調に拡大。2018年は前年比4.0%増で2兆7,858億。2020年は3兆円を突破すると予想されている。富士経済のレポートでは特に以下の傾向を示している。

  • 訪日外国人の消費額拡大
  • 時短ケアの根強いニーズ。時短ケア化粧品市場は2018年に1,284億円の見込み
  • 美容意識の高まりで、複数品目を使用したケア・メイクの需要回復
  • 時短ケア商品と化粧下地を併用するユーザーが増加
  • パック効果をうたうアイテム投入が複数みられた
  • 高価格帯市場ではインバウンド需要で高級品が人気
  •  “SNS映え”するアイテムが好調
  •  “しわ改善”の効能効果を持つ医薬部外品の増加
  • 低価格帯においても “ティント”など新コンセプト品が活況
    参考:富士経済「国内化粧品市場調査」

市場を占める化粧品アイテムは? 〜品目別出荷額ランキング(経済産業省)〜

化粧品出荷額からも、市場の拡大の様子が見えてくる。経済産業省の「生産動態統計年報化学工業統計編」によると、2018年の化粧品の国内工場出荷金額は1兆6,941億円。2016年には19年ぶりに最高額を更新し、その後も更新している。

品目別の出荷額ランキングについて見ると、トップは2,085億円の化粧水、次いで1,825億円の美容液、1,396億円のファンデーションが続いている。化粧水は2010年以降、順調に市場を伸ばしている。また、男性のスキンケアニーズの高まりを受けて、最近は男性向けの商品発売も相次いでいる。統計上では「男性用皮膚化粧品」市場は2015年以降、微減傾向で200億円規模だが、2000年には半分の100億円規模の市場であったことを考えると、近年拡大した市場であると言うことができるだろう。品目別出荷額ランキングは以下。

  • 1位:化 粧 水(2,085億円)
  • 2位:美 容 液(1,825億円)
  • 3位:フ ァ ン デ ー シ ョ ン(1,396億円)
  • 4位:染 毛 料(1,037億円)
  • 5位:乳 液(874億円)
  • 6位:シ ャ ン プ ー(832億円)
  • 7位:モ イ ス チ ャ ー ク リ ー ム(810億円)
  • 8位:洗 顔 ク リ ー ム ・ フ ォ ー ム(774億円)
  • 9位:ヘ ア ト リ ー ト メ ン ト(773億円)
  • 10位:ク レ ン ジ ン グ ク リ ー ム(667億円)
  • 11位:日やけ止め及び日やけ用化粧品(611億円)
  • 12位:口 紅(500億円)
  • 13位:ア イ メ ー ク ア ッ プ(470億円)
  • 14位:ま ゆ 墨 ・ ま つ 毛 化 粧 料(459億円)
  • 15位:パ ッ ク(436億円)
  • 16位:お し ろ い(329億円)
  • 17位:ヘ ア リ ン ス(257億円)
  • 18位:ヘ ア ス プ レ ー(216億円)
  • 19位:ヘ ア ト ニ ッ ク(199億円)
  • 20位:男 性 皮 膚 用 化 粧 品(192億円)
  • 21位:リ ッ プ ク リ ー ム(174億円)
  • 22位:ポマード・チック・ヘアクリーム・香油(143億円)
  • 23位:セ ッ ト ロ ー シ ョ ン(142億円)
  • 24位:ほ ほ 紅(133億円)
  • 25位:液 状 ・ 泡 状 整 髪 料(108億円)
  • 26位:ひ げ そ り 用 ・ 浴 用 化 粧 品(90億円)
  • 27位:マッサージ・コールドクリーム(81億円)
  • 28位:つめ化粧料 、除光液を含む(72億円)
  • 29位:香 水 ・ オ ー デ コ ロ ン(49億円)
    出典:経済産業省大臣官房調査統計グループ「経済産業省生産動態統計年報化学工業統計編」

高まる自然派・オーガニック需要、市場は拡大

「自然派・オーガニック化粧品」も市場を拡大している。矢野経済研究所「自然派・オーガニック化粧品市場に関する調査を実施(2018年)」によると、同市場は2017年には1,297億円の市場を形成、2018年には1,350億円に伸びると予測されている。環境問題への意識の高まりも市場を後押ししていると考えられる。さらに、敏感肌を自覚している層の安心へのニーズが、自然派化粧品利用拡大につながっている。

化粧品市場のEC化率

化粧品市場におけるEC化率はほかの産業と比べると高くない。「平成29年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(経済産業省)」によると、「化粧品・医薬品」のEC市場は5670億円でEC化率は5.3%。「生活家電・AV機器・PC・周辺機器」のEC化率は30%を超えていることを考えると、化粧品のEC化率は低い。百貨店、量販店、ドラッグストア、専門店といった実店舗による店頭販売、訪問販売、カタログ通販、テレビ通販と多様な販売チャネルがあることが低いEC化率に影響していると考えられる。コスメ・美容総合サイト「アットコスメ」は低いEC化率について以下のように分析している。

ブランドはチャネル戦略やリソース配分などからまだ市場規模が大きくない国内化粧品ECに注力できていないこと、また消費者にとっては品揃えが少ない化粧品ECに魅力を感じられない引用:ウーマンズラボ「「化粧品・医薬品」の低いEC化率、1日限定コスメ祭りで向上目指す @コスメ」

ただ近年は、若年層を中心にSNSや口コミサイトの情報をもとにECサイトで購入するケースも増えており、ECの存在感は年々高まっている。

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