女性を解放するマーケティングの新概念、止まない「自己肯定感ブーム」から見えてくるもの (2/3)

自己肯定感への関心が急速に高まっている理由

今まさに「自己肯定感」はトレンドキーワードだが、しかし、日本人の低い肯定感はこの数年で始まったわけでもない。ではなぜ、ここ最近になりこんなにも注目されているのか?

「自己肯定感」という言葉がメディアを通じて広く認知されたことがもちろん一番の理由だが、もう少し掘り下げると、社会環境の急速な変化で自己肯定感がこれまでになく揺らぎやすくなっているタイミングで認知が広がったことが背景にあると考えられる。自己肯定感への関心を高めている主な社会環境の変化は4つ。

1.SNSの浸透により、他人と自分を比較することが増えた

SNSで日本中・世界中の人々と簡単につながるようになった分、他人の外見や他人の人生と自分自身を比べる機会が増えた。容姿が完璧な女性、華やかな私生活を送る女性、いつも最先端のファッションやメイクで完璧なオシャレをしている女性など、いわゆるキラキラする女性と自分を比較してしまう。その結果、自分が劣っていると感じ自己肯定感が低下する。

特筆すべき興味深い点は、画像共有アプリであるインスタグラムの人気の高まりと並行して「自己肯定感」への関心が高まり続けていること。インスタグラムはこの5年ほどで一気に国内で広がったが、自己肯定感への関心が伸びているのもこの5年だ。あくまで推察の域ではあるが、この相関性は無視できないと感じる。

それまで主流だったテキストベースのSNSから画像をベースにしたSNSへと人気が移行したことは、女性たちにとって他人と自分を比較する機会が増大したことを意味している。自己肯定感の低下に少なからず影響をしていると考えられる。

2.生き方・働き方の多様化で、自己肯定感が揺らぎやすくなった

「結婚にはこだわらない」「40代独身」「50代結婚歴なし」「あえて子は持たずDEWKsとして生きる」「好きなことを仕事にする」「華々しいキャリアを捨ててフリーランス転向」「趣味優先でゆるく働く」など、女性の生き方・働き方はこの数十年で急速に多様化した。

働く女性の増加で経済力を身につけた女性が自分らしく生きれるようになったのは喜ばしいことだが、一方で、生き方・働き方の選択肢が増えたことで、他の女性の生き方・働き方と自分の生き方・働き方を比べたり、自分の人生に迷いを感じ続けながら生きる女性も同時に増えた。

その結果、「自分が選択した今の生き方・働き方を肯定したい」「今の自分自身の生活に自信を持ちたい」「新しい人生の選択をする勇気を得たい」などといったニーズが女性たちの間で強まっている。

3.社会環境の変化でストレスが増大

情報過多、働く女性の増加、平均寿命の延伸、晩婚化・晩産化といった社会環境の急激な変化により、人々が心身に抱えるストレスは増幅する一方。女性を疲弊させる現代ならではのストレス要因とは、例えば、育児と仕事の両立、育児と介護の両立(ダブルケア)、介護と仕事の両立、職場での人間関係など。

そして、働く女性の増加で近年社会問題化してきたのが、仕事と出産のタイミング、仕事とPMSの折り合いのつけ方、仕事と更年期の折り合いのつけ方といった女性特有の健康問題。これら女性特有の健康問題の症状は、仕事によるストレスでさらに悪化し、そして症状の悪化により仕事の生産性がさらに低下するという悪循環に陥る。

こういった様々なストレスがきっかけとなり、人間関係の悪化を招いたり、自分の存在意義や自信を失ってしまうことがある。

4.女性のエンパワーメントの向上

ダイバーシティの世界的な広がりで、国内でも女性のエンパワーメントが推進されていることも、女性たちの自己肯定ニーズを押し上げている。これまで、ルッキズム、エイジズム、セクシズムに苦しみ「私は女性だから仕方ない」と黙っていた女性たちが声を上げ、社会に向け女性としての意見や存在意義を主張する動きは今世界各地で起き、国内でも、ジャーナリストや女性起業家、インフルエンサーなどが中心となって声を上げ話題を集めている。

こういった女性のエンパワーメント向上は、女性たちを様々な抑圧から解放し、「他人にどう見られたいのか?ではなく、自分自身は本当はどうしたいのか?どうありたいのか?」と、自分自身と真剣に向き合う機会をもたらしている。

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