健康行動に取り組んでいない女性6割、なぜ無関心?(2/3)

なぜ健康行動していない?8つの理由

女性の半数は健康を目的とした食・運動行動をしていない。だがこの調査結果は、”未行動層”にいる女性たちの健康行動を起こすことができればポテンシャルは大きい、という見方もできる。健康行動が起きればヘルスケア消費が活発になるので、期待大のクラスターだ。

だが、一般的に知られる行動変容技法だけで健康行動にスイッチを入れるのは、そう簡単ではない。理論や技法の前にまず知るべきは、そもそも論、「なぜ健康行動を起こさないのか?」。各種調査結果をリサーチして、その理由を探ってみた。

1.仕事・家事・育児で忙しい

国民健康・栄養調査では、健康な食習慣の妨げになっている理由についても聞いている。それによると、未行動者が理由に挙げた中で多かったのは「仕事・家事・育児が忙しくて時間がない」だった。

この理由を挙げたのは特に育児・子育て世代である30〜40代で多く、食習慣改善の意思別に見ると、関心期・準備期層にあたる「改善するつもりである」と回答した人たちだった。

運動習慣の妨げになっている理由についても同様の結果が出ており、仕事・家事・育児の忙しさを理由に挙げる人が、特に関心期・準備期層に多かった。

明治安田生命が実施した「健康に関するアンケート調査(2019)」でも、参考になる回答が得られている(対象:全国の20〜70代の男女)。健康づくりの取組に挫折した経験がある人に理由を聞いたところ、最多はやはり「仕事や家事が忙しかったから(37.3%)」だった。

これらの調査結果からは、健康行動を起こしたい気持ちはあるのに”時間貧乏”であるために行動を起こせずにいる女性たちの存在が見えてくる。このジレンマは、当社ウーマンズで実施している日記調査でも明らかになっている。

未就学児のワーママを対象に調査を実施したところ、彼女たちは、仕事と育児の両立をこなしていくために必要な最低限の健康維持に努めるのに精一杯で、さらなる健康増進を目的にした健康行動は、時間がないことを理由に全くできていないことがわかった。

“仕事・家事・育児”と”健康行動”はトレードオフ。この意識から健康づくりを断念している人は、特に現役世代・子育て世代に多い。課題解決策の提案が必要だ。

2.自分も身近な人も健康

健康行動が起きない理由として、自分や家族など周囲の人が健康であることも挙げられる。自分や周囲の人が健康問題を抱えていなければ、不調や病気はあくまで他人事。健康行動を起こす必要性に迫られない。

ではこのような人たちは、どのようなタイミングで健康行動が起きるのか?行動変容が最も起きやすいのは病気による余命宣告をされた時だと言われているが、自身の死期を間近に感じること以外にも、行動変容が起きやすいポイントがある。

それは、自分・家族・友人の病気だ。明治安田生命が実施した調査で「健康に気をつけるようになったきっかけは何か?」という質問に対し、女性(20〜70代)の回答ランキングは以下だった。トップ3を見ると、自分自身や周囲の病気が健康行動のきっかけになっていることがわかる。

  • 1位:自分が病気をしたから(27.4%)
  • 2位: 家族や友人が病気をしたから(25.0%)
  • 3位:定期健康診断結果や、医師などの勧めがあったから(20.8%)
  • 4位:新聞・雑誌・テレビなどの健康記事や番組を見たから(17.4%)
  • 5位:家族や友人の勧めがあったから(6.3%)
  • 6位:その他(3.7%)

年代別に見ると、自分や周囲の影響がきっかけになっているのが顕著なのは40代以上。自分自身を含め、親・義親、夫、同世代の友人など、年齢的に病気を患う人が周囲に増えてくるからだと考えられる。

3.お金がない

ある程度の経済的余裕がなければ、十分な健康行動の維持は難しいのが現実だ。もちろん「ウォーキング」や「お菓子を食べない」「自宅内で自重トレーニング」など、お金のかからない健康法はいくらでもある。

だがある程度のコストを必須とする健康行動もある。例えば1汁2〜3菜の食事を毎度揃えようとすると、野菜やタンパク質系食材が必要になってくる。だが、毎日・毎食続けようとするとそれなりにお金がかかる。

当社ウーマンズが女性生活者から収集した食事日記調査でも明らかになっており、世帯年収が低い女性の食生活はカップラーメンやご飯のみ、という主食完結型の食事が多い。聞くと「野菜やタンパク質は高くて買えない。カップラーメンなら1食100〜200円程度で済むし、お腹も膨れる」とのこと。

他にもコストを必要とする健康づくりがある。その代表例は検診だ。検診代が高いことを理由に受診しない女性は一定数いる。健康経営に関連した調査だが、「どのような特典・サービスがあれば健康増進の推進がより図られると思うか?」と聞いている調査結果がある明治安田生命。上位に上がったのは金銭的なことで、「健診・検診受診やスポーツジムの利用に補助金が出ること(あるいは無償化)」を望む声が多い。

  • 1位:人間ドッグ含め健診に対する補助金(無償化含む)(52.2%)
  • 2位:健康になると特典(金銭的なメリット含む)が受けられる商品・サービス(37.3%)
  • 3位:スポーツジム利用に対する国や自治体からの補助金(33.0%)
  • 4位:健康器具購入に対する補助金(18.1%)
  • 5位:運動機会の提供(運動施設の拡充や参加型イベントの開催など)(16.5%)
  • 6位:医療費の自己負担額増(15.5%)
  • 7位:禁煙に対する国や自治体からの補助金(13.3%)
  • 8位:健康セミナーの開催(12.4%)
  • 9位:その他(4.9%)

なお経済的余裕があったとしても、女性の場合、そのお金が必ずしも健康消費にまわるとは限らない。女性は健康と同様に美容にもお金をかけているし、今よりもさらにお金をかけたいと思っている。

年齢、可処分所得、持病・不調の有無などによって美容と健康の消費割合は個々で異なるが、「仕事・家事・育児」と「健康づくり」のトレードオフと同様に、「美容」と「健康」のトレードオフも女性たちは常に考えている。

4.環境が整っていない

健康行動を起こしたり継続するには、環境も重要だ。例えば次のような環境にいる場合、健康行動の継続は簡単ではない。

  • 私は減塩・低カロリー・低糖質メニューを毎食続けたいのに、家族は濃い味付けの高カロリー食が大好き
  • 夫は健康意識が低く夕食後にいつもお菓子を食べる。それを見ていると我慢できずに私もつい食べてしまう
  • 1kの部屋で一人暮らし。自宅内で運動をするスペースがない
  • 日中は忙しいので夜にウォーキングをしたい。でも自宅周辺は人通りが少ないので夜は外出が怖い

具体的な目標・計画の策定も、健康行動の環境を整える上で大切だ。「健康づくりに挫折しないために必要なこと」に関する調査では、「目標・計画の策定」が最多だった。続いて、一緒に頑張れる仲間や周囲からの励ましの声を求める声も多い明治安田生命

  • 1位:目標、計画の策定(38.5%)
  • 2位:一緒に健康増進に取り組む仲間(25.0%)
  • 3位:家族・友人からの励まし・声かけ(%)
  • 4位:友人や家族に宣言する(11.9%)
  • 5位:お金をかけ、挫折しない状況を作る(10.8%)
  • 6位:その他(4.2%)
PAGE TOP
×