女性の健康問題、一覧(思春期~老年期)(3/3)

更年期(45〜55歳)の健康問題

更年期の女性ホルモン

更年期にあたる45〜55歳はエストロゲンの分泌が急激に減少する時期で、やがて閉経をむかえる。日本人女性の平均閉経年齢は50.54歳(日本女性医学学会)で、この前後5年間(計10年間)が更年期と呼ばれている。

閉経時期は初経と同様に個人差があり、40代前半でむかえる女性もいれば、50代後半〜60代前半という女性も。12ヶ月以上の無月経が続くと閉経と判定される。

更年期はエストロゲンの分泌が急激に減少することで、心身に様々な症状をもたらす。これらを「更年期症状」と呼び、その症状が重く日常生活に支障をきたす場合は「更年期障害」と言う(日本産科婦人科学会による定義)。

症状の有無や度合いは個人差が大きく、理由は、更年期症状の原因がエストロゲンの減少だけによるものではないため。更年期女性にエストロゲンを補充しても必ずしも症状が軽快するわけではないケースがあることから、更年期症状は他の要因も関係していることが知られている。更年期症状の要因には以下3つが指摘されている。

  • 【内分泌学的要因】エストロゲンの減少
  • 【社会的要因】人間関係や仕事などの悩み(親の介護、夫との関係、子どもの進路や独立、義親との関係など)
  • 【心理的要因】真面目、几帳面、完璧主義

更年期の健康問題

45歳〜55歳における最大の健康問題は更年期症状だが、「更年期だから仕方ない」「年齢的なもの」と症状を我慢して放置している女性は多い。

生活に支障をきたすほどであったり、更年期症状以外の重い病気を心配して医療機関を受診する女性もいるが、専門外の医師の場合は更年期の概念が抜け落ちていることもあり、結果的に、原因や解決法がわからないまま様々な診療科を回る羽目になり“病院ジプシー”となる女性もいる。

更年期症状を改善する商品やサービスが市場で不十分であることも、この時期の女性たちのQOL低下を強めている。自身の健康問題に頭を悩まされるのに加え、親の介護問題や将来の経済不安も重なり、生涯の中で体も心も最も負担がかかる時期

更年期(45〜55歳)の健康問題
更年期症状 更年期女性の特徴的な症状は以下(発現頻度の高い順)。

1.肩こり
2.疲れやすい
3.頭痛
4.のぼせ(ホットフラッシュ)
5.腰痛
6.汗をかく
7.不眠
8.イライラ
9.皮膚掻痒感
10.動悸
11.気分がしずむ
12.めまい
13.胃もたれ
14.膣乾燥感
(参考:日本女性医学学会,「女性医学ガイドブック更年期医療編」)

生活習慣病 閉経後はそれまで女性ホルモンで維持されていた健康力が低下するため、50代以降で高血圧、糖尿病、脂質異常症、動脈硬化など生活習慣病のリスクが高まる。
乳がん

 

乳がんは女性の全がんの中で罹患率が最も高い。30代から増えピークは40代後半〜50代前半、その後は減少していく。(参考:国立がん研究センターがん情報サービス(参考:ウーマンズラボ「乳がん罹患率(年齢別)
子宮体がん 子宮体がんの罹患は40歳ごろから増え、ピークは50〜60代。出産経験がないこと、閉経が遅いこと、肥満、糖尿病などが罹患リスクになる。(参考:国立がん研究センターがん情報サービス
卵巣がん 卵巣がんの罹患は40歳ごろから増え、ピークは50〜60代前半で、その後は減少していく。排卵回数が多いことがリスクになると考えられているため、妊娠・出産経験がないこと、初経が早く閉経が遅いことが罹患リスクとなる可能性がある。
関節リウマチ 女性に多い病気で(男性の約5倍)、特に40〜50代に多い。平均発症年齢は50.1歳(2015年)。罹患するとADL(日常生活動作)が低下し、仕事を続けたくても身体的苦痛を感じ休職・退職をする人が多い。QOLが大幅に低下するため精神的苦痛も大きい。(参考:厚生科学審議回疾病対策部会リウマチ等対策委員「リウマチ等対策委員会報告書(案)」平成30年,日本リウマチ友の会「2015年リウマチ白書」
橋本病 甲状腺に慢性的に炎症が起こる病気で、女性に多い(男性の20〜30倍)。特に30〜40代が多い。進行して甲状腺機能低下症になると、不妊、流産、妊娠高血圧症候群などのリスクになる。(参考:国立成育医療研究センター
うつ病 女性のうつ病患者数は男性の約2倍。全年代の中で最も多いのは40代で、さらに細かく見ると40代前半より後半に多い。「母親としての役割」「妻としての役割」「子としての役割」「仕事での役割」など、様々な顔を持って生活していく精神的負担に加えて、更年期症状により心が不安定になっていることが影響していると考えられる。(参考:ウーマンズラボ「うつ病の男女比・年代別患者数」)
睡眠不足 20〜70代以上の全年代の男女の中で平均睡眠時間が最も短いのは「50代女性」で、6時間未満が54%。6時間未満の割合が50%を超えているのは、男女合わせ唯一50代女性のみ。更年期症状の一つである不眠の影響が要因として考えられるが、アラフィフクライシスによる様々な悩みも影響しているのでは。(参考:厚生労働省「平成30年 国民健康・栄養調査」)
飲酒過多 生活習慣病のリスクを高めるほどの量を飲酒している女性の割合は、全年代の中で40代と50代が高い。様々な肉体的・精神的負担からくるストレス解消として飲酒量が多いと考えられる。
(参考:厚生労働省「平成30年 国民健康・栄養調査」)
アラフィフクライシス アラフィフクライシスとは、アラフィフ女性がこの年代特有の様々な問題に直面することで心のバランスが崩れる危機のこと。更年期症状に加え、子どもの進路・独立、親・義親の介護、老後の経済不安、夫や自分の健康不安、エイジングサインが顕著になることで感じる美容不安など、様々な問題が一気に降りかかる。

老年期(55歳以上)の健康問題

老年期の女性ホルモン

更年期の10年間でエストロゲンが急激に減少した後の時期で、生涯を終えるまでエストロゲンが乏しい状態が続く。それまではエストロゲンによって維持できていた健康力が失われるため、様々な健康問題が出現する。

老年期(55歳以上)の健康問題

加齢に加えてエストロゲンの分泌が乏しくなるため、体力や健康力の衰えを実感する時期。また、自身や夫の退職、自身や親近者や同世代の友人の病気・死別、子どもの独立などネガティブなライフイベントが重なる時期で、心の不調も抱えやすいため、老年期においてはQOL向上も重視する必要がある。

女性は男性よりも長生きをするものの、平均寿命と健康寿命の差(※)は12年間と長い。それを目前に控え積極的に健康行動を起こす女性が多いのも、この年代の特徴。心身の充実したセカンドライフを送るために、体・心、両方の健康力を高めるニーズが高い。

老年期(55歳以上)の健康問題
更年期症状 更年期女性の特徴的な症状は以下(発現頻度の高い順)。
1.肩こり
2.疲れやすい
3.頭痛
4.のぼせ(ホットフラッシュ)
5.腰痛
6.汗をかく
7.不眠
8.イライラ
9.皮膚掻痒感(ひふそうようかん)
10.動悸
11.気分がしずむ
12.めまい
13.胃もたれ
14.膣乾燥感
(参考:日本女性医学学会,「女性医学ガイドブック更年期医療編」)
子宮下垂・子宮脱 子宮が正常の位置より下がっている状態が子宮下垂。さらに下がって膣の外まで下がり脱出していると子宮脱。子宮下垂・子宮脱のある女性のうち9割は出産経験者で、閉経後から増えピークは60歳代。(参考:日本女性心身医学会
萎縮生膣炎 更年期以降、女性ホルモンの減少により膣が萎縮して分泌物が減る。それにより膣壁が出血しやすくなったり、膣の自浄作用が弱まり膣炎が起きやすくなる。(引用:日本女性医学学会「女性医学ガイドブック更年期医療編」)
生活習慣病 閉経後はそれまで女性ホルモンで維持されていた健康力が低下するため、50代以降で高血圧、糖尿病、脂質異常症、動脈硬化など生活習慣病のリスクが高まる。
骨粗鬆症 男性よりも女性に多い。閉経を堺に女性ホルモンの減少により骨密度が急激に低下するため、特に50代後半以上で増える。骨粗鬆症が進行すると背骨の圧迫骨折により背中や腰が曲がる他、股関節の骨折などで要介護の寝たきりにもなる。介護が必要になった理由に関する調査では、要介護4、要介護5、ともにその理由第3位は「骨折・転倒」。(参考:ウーマンズラボ「介護が必要になった主な原因 要介護度別トップ3」
ロコモティブシンドローム 加齢による筋力低下や、骨粗鬆症による運動器の機能の衰えにより、要介護や寝たきりになったり、そのリスクが高い状態がロコモティブシンドローム。特に女性は、閉経後以降で骨粗鬆症のリスクが上がるため注意が必要。(参考:日本整形外科学会
肥満 女性の肥満者の割合は40代以降で高くなるが、特に顕著になるのは60代以上。(参考:厚生労働省「平成30年 国民健康・栄養調査」
子宮体がん 子宮体がんの罹患は40歳ごろから増え、ピークは50〜60代。出産経験がないこと、閉経が遅いこと、肥満、糖尿病などが罹患リスクになる。(参考:国立がん研究センターがん情報サービス
卵巣がん 卵巣がんの罹患は40歳ごろから増え、ピークは50〜60代前半で、その後は減少していく。排卵回数が多いことがリスクになると考えられているため、妊娠・出産経験がないこと、初経が早く閉経が遅いことが罹患リスクとなる可能性がある。
うつ病 女性の全年代の中でうつ病が最も多いのは40代で、次に多いのが60代と70代。うつ病はもともと男性よりも女性に多いが、特にその男女差が顕著になるが60代以上で、この年代のうつ病は圧倒的に女性が多い。働き盛りの若い世代のうつ病と老齢期のうつ病は分けて考える必要があり、老齢期のうつ病の原因は、老齢期特有のライフイベントと慢性的なストレス。ライフイベントの例は、夫や親など近親者との死別、自分や身近な人が病気などで生命の危機にさらされること、施設入所や子どもとの同居に伴う転居などで住み慣れた家・地域を離れること、経済危機など。慢性的なストレスは、健康減退、行動力低下、退職などによる社会的役割の低下、家族の介護、社会的孤立、同居家族との問題など。(参考:ウーマンズラボ「うつ病の男女比・年代別患者数」)
睡眠不足 20〜70代以上の全年代の男女の中で平均睡眠時間が最も短いのは「50代女性」で、6時間未満が54%。6時間未満の割合が50%を超えているのは、男女合わせ唯一50代女性のみ。更年期症状の一つである不眠の影響が要因として考えられるが、アラフィフクライシスによる様々な悩みも影響しているのでは。(参考:厚生労働省「平成30年 国民健康・栄養調査」)
飲酒過多 生活習慣病のリスクを高めるほどの量を飲酒している女性の割合は、全年代の中で40代と50代が高い。様々な肉体的・精神的負担からくるストレス解消として飲酒量が多いと考えられる。(参考:厚生労働省「平成30年 国民健康・栄養調査」)
食塩摂取過多 50代以上の女性は女性の中でも特に健康意識が高く、野菜摂取量が他年代と比べて多いが、一方で、食塩摂取量が他年代と比べて多いのが課題。日本高血圧学会が目標に設定している女性の1日の食塩摂取量は6g未満だが、50代以上の摂取量は9gを超えている。(参考:厚生労働省「平成30年 国民健康・栄養調査」)
低栄養 女性は男性よりも低栄養の傾向が見られ、特に85歳以上でその割合が高い。(参考:厚生労働省「平成30年 国民健康・栄養調査」)
加齢に伴う歩数の減少 1日の歩数が減少するのは60代以降。20代〜50代は平均歩数が6,000歩台だが、60代は5,000歩台、70代以上は4,000歩台と少なくなる。歩数減少として考えられるのは、仕事の有無など外出機会が減ることや、身体的不調や病気により歩行が困難になることなど。なお、健康日本21(第2次)の目標で定めている女性の1日の歩数は、20〜64歳は8,500歩、65歳以上は6,000歩。(参考:厚生労働省「平成29年 国民健康・栄養調査」)
オーラルフレイル 60代以上で口腔機能の低下が顕著になる。「何でもかんで食べることができる者と、20本以上の歯がある者」は、60代から大きく減少する。20本以上の歯がある者は、20〜40代は95%前後、50代は86%、60代は76%、70代は68%、80歳以上は55%。(参考:厚生労働省「平成29年 国民健康・栄養調査」)
認知症 認知症有病率は70代までは男女差は見られないが、加齢とともに差が開き80代以降で顕著になる。90代男性の有病率は42%に対し女性は71%。(参考:厚生労働省老健局「認知症施策の総合的な推進について」

 

 

【編集部おすすめ記事】
■女性の美容悩み 年代別まとめ(20〜80代)
女性の健康ニュース一覧
報道各社の「健康の男女平等、ほぼ達成」は本当? ジェンダーギャップ指数2023

 

 

PAGE TOP
×