女性の健康問題、一覧(思春期~老年期)(2/3)

性成熟期後半(30〜45歳)の健康問題

30代〜40代は結婚・妊娠・出産を機にライフコースが目まぐるしく変化する時期。働く女性の増加を背景に晩婚化・晩産化が進んでおり、今の女性の平均初婚年齢は29.4歳(2017年)、平均初産年齢は30.7歳(2017年)。

高齢出産と定義されている35歳以上で出産する女性は全体の約3割を占め、40歳以上で出産する女性は年間で約55,000人(2016年)ほどいる厚労省「人口動態統計」

今は30歳以降で結婚・出産をするのがスタンダードといえる時代だが、同時に晩産化による健康問題が出てきている。また出産をきっかけに改善される病気もあればリスクが上がる病気もあり、女性の健康問題は出産経験の有無によるところも大きい。そこで、妊娠・出産のピーク世代である30〜45歳については、子の有無別で女性の健康問題についてまとめた。

30〜45歳の健康問題(子なし)

性成熟期(30〜45歳,子なし)の健康問題
月経痛 月経痛のうち、体に異常はないが体質で症状が起こる「機能性月経困難症」は10〜20代に多いが、個人差がある。特に、月経が改善・消失するきっかけになる妊娠・出産の経験がない女性の場合は、年齢に関係なく30代・40代でも月経痛がある。なおこの年代では、子宮筋腫や子宮内膜症などの病気が原因の月経痛「器質性月経困難症」が多くみられるため、どちらによる痛みなのか見極めが必要。また、月経痛はストレスの有無も関係しており、ストレスのある女性の44%は強い月経痛が見られたが、ストレスが軽い女性は22%という調査結果も。(参考:武谷雄二「働く女性と健康」,女性の健康とメノポーズ協会「女性の健康と働き方マニュアル」)
PMS、PMDD PMSは月経のある女性のうち70〜80%に見られる。ストレスや性格も影響するため、個人差が大きい。PMDDの症状はうつ病と似ているため見極める必要がある。(参考:日本産婦人科学会
排卵痛 排卵期前後で月経痛のように下腹部痛を感じる。月経痛ほどは多く見られず女性たちの認識は低いが、排卵期前後で痛みを感じる女性、排卵期にPMSと同様の不調(眠気、イライラ、不安など)を感じる女性、排卵期から月経が始まるまで心身の不調がずっと続く女性など、個人差が大きい。
月経異常 ■無月経:この年代で気をつけるべき無月経は、普段は正常にある月経が止まってしまう「続発性無月経」。ストレス、激しい運動、過度のダイエット、過度の肥満、過労、糖尿病、甲状腺疾患、アルコールの過剰摂取、精神疾患関連やホルモン剤などの薬剤の服用などが影響。

■月経不順:月経周期が25日未満で出血を繰り返すタイプは「頻発月経」、月経周期が39日以上3ヶ月以内の場合は「稀発月経」。ストレス、激しい運動、過度のダイエット、過度の肥満、過労、糖尿病、甲状腺疾患、アルコールの過剰摂取、精神疾患関連やホルモン剤などの薬剤の服用などが影響する。(参考:武谷雄二「働く女性と健康」日本女性心身医学会

早発閉経(POF) 卵巣機能が低下して40歳未満で無月経になった状態を指し、更年期と同様の症状があらわれる。40歳未満の1%に見られ、無月経患者の5〜10%を占める。(参考:日本内分泌学会, 女性の健康とメノポーズ協会「女性の健康と働き方マニュアル」)
不妊症 不妊症は妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間(1年程度)妊娠しない状態のこと。不育症(9.9%)よりも不妊症(77.8%)に悩む女性が多い。特にひとり目の不妊に悩むケースが多い。(参考:ウーマンズラボ「不育症とは?悩む女性たちの実態と女性を支える医療・自治体・情報
不育症 不育症は、妊娠はできるのに赤ちゃんがお腹の中で育たず、流産・死産を繰り返してしまう状態のこと。毎年妊娠する女性のうち数万人が不育症の可能性がある。年齢との関係が指摘されており、母体年齢35〜39歳で流産率25%、40歳以上で51%との海外の報告がある。(参考:ウーマンズラボ「不育症とは?悩む女性たちの実態と女性を支える医療・自治体・情報」,国立研究開発法人 日本医療研究開発機構委託事業 成育疾患克服など総合研究事業 フイクラボ
子宮内膜症 月経がある年齢で起きる病気で、特に20〜30代での発症が多くピークは30〜34歳。出産経験がない、あるいは少ない女性は発症しやすく症状も悪化しやすい。不妊の原因になりやすい。(参考:日本産科婦人科学会)
子宮筋腫 性成熟期の女性に多く、30歳以上の女性の20〜30%に見られる。婦人科の病気の中で最も多く、子宮摘出手術の理由として最も多い病気。不妊や流産、早産の原因にもなる。閉経すると筋腫は小さくなっていく。
(参考:日本産科婦人科学会,武谷雄二「働く女性と健康」)
乳腺症 女性ホルモンの変動によるもので、月経前に乳房にしこりや痛みの症状が出て月経後は症状が落ち着いていく。30〜40代に多く見られる。良性だが、しこりができるため乳がんと判断がつかず不安になる女性が多い。(参考:女性の健康とメノポーズ協会「女性の健康と働き方マニュアル」)
乳がん

 

乳がんは女性の全がんの中で罹患率が最も高い。30代から増え、ピークは40代後半〜50代前半、その後は減少していく。(参考:国立がん研究センターがん情報サービス「乳がん」(参考:ウーマンズラボ「乳がん罹患率(年齢別)」)
うつ病 女性のうつ病患者数は男性の約2倍で、20代から男女差が顕著になる。全年代の中で最も多いのは40代。(参考:ウーマンズラボ「うつ病の男女比・年代別患者数」)
バセドウ病

 

甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気で、女性に多い(男性の4〜6倍)。特に20〜30代の若年層に多く、流産や早産のリスクが上がる。症状の一つに眼球突出があり、美容面における悩みも大きい。(参考:厚生労働科学研究費補助金ヘルスケアラボ「女性の健康の包括的支援政策研究事業」
橋本病 甲状腺に慢性的に炎症が起こる病気で、女性に多い(男性の20〜30倍)。特に30〜40代で多い。進行して甲状腺機能低下症になると、不妊、流産、妊娠高血圧症候群などのリスクになる。(参考:国立成育医療研究センター
子宮頸がん

 

20代後半から増えピークは40代。その後は横ばい。(参考:国立がん研究センター「がん情報サービス

30〜45歳の健康問題(子あり)

性成熟期(30〜45歳,子あり)の健康問題
妊娠中の健康問題 妊娠から出産までの約10ヶ月間の間は、赤ちゃんの成長とともに注意すべき不調や病気が変化していく。流産、つわり、頻尿、便秘、歯周病、虫歯、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、頻尿、尿もれ、むくみ、腰痛など。
マタニティブルー、産後うつ ■マタニティーブルー:症状トップ3は「わけもなく涙が出た」「イライラ」「突然悲しい気持ちになった」。出産後2週間ほどで落ち着く。産後のマタニティブルー有無に関する調査では、67%が「あった」と回答アカチャンホンポ,2020

■産後うつ:産後4〜6週間以内に発症することが多く、産後6ヶ月間で10人に1人がなる。マタニティブルーを経験した女性のリスクが高く、発症率はマタニティブルーがなかった女性の10倍。マタニティーブルーより症状は重く深刻で、自殺に至るケースも。また、キャリアアップの後に高齢出産をする女性も、産後にうつ病になりやすい。妊産婦のメンタルヘルスケアの研究や仕組み作りの歴史はまだ浅く、医療機関や自治体のみならず、民間企業によるケアの重要性が高まっている。(参考:武谷雄二「働く女性と健康」)

乳腺炎 乳腺が炎症を起こす病気で、授乳期に起こりすやい。
月経異常 出産後の月経再開は授乳期間が影響し個人差が大きい。月経が再開し安定するまでに一定期間を要するが、産後の環境変化や育児ストレスなどで月経が再開しなかったり月経不順になる場合もある。
月経痛 妊娠・出産を機に月経痛が改善・消失する女性が多いと言われているが、中には、妊娠・出産前はなかった月経痛が出産を機に始まるという女性も。また、第1子の出産後は何も変化がなかったのに、第2子の出産後に月経痛が始まったなど、月経痛の有無も症状が出るタイミングも個人差がある。(参考:女性の健康とメノポーズ協会「女性の健康と働き方マニュアル」)
PMS、PMDD 妊娠・出産を機に改善・消失するケースが多い月経痛に対し、PMSは出産後にひどくなるケースが見られる。育児のストレスや、仕事と育児の悩みが、PMSの症状に拍車をかけていることが要因として挙げられている。ただし、月経痛と同様に個人差があるため、症状の有無も症状が出るタイミングも、人それぞれ。(参考:日本産婦人科学会
排卵痛 月経痛やPMSと同様に、妊娠・出産を機に症状が改善・消失する女性もいれば、反対に症状が出るようになる女性もいる。
早発閉経(POF) 卵巣機能が低下して40歳未満で無月経になった状態を指し、更年期と同様の症状があらわれる。40歳未満の1%に見られ、無月経患者の5〜10%を占める。(参考:日本内分泌学会, 女性の健康とメノポーズ協会「女性の健康と働き方マニュアル」)
子宮内膜症 月経が起きる間の年齢で起きる病気で、特に20〜30代での発症が多くピークは30〜34歳。出産経験がない、あるいは少ない女性は発症しやすく症状が悪化しやすく、出産を経験することで改善・消失することもあるが、個人差があり、産後の月経再開後にまた症状がでる場合も。(参考:日本産科婦人科学会
子宮腺筋症 出産経験のある女性に見られる。30代後半〜40代前半で診断されるケースが多い。(参考:日本産婦人科医会
子宮筋腫 性成熟期の女性に多く、30歳以上の女性の20〜30%に見られる。婦人科の病気の中で最も多く、子宮摘出手術の理由として最も多い病気。不妊や流産、早産の原因にもなる。閉経すると筋腫は小さくなっていく。(参考:日本産科婦人科学会,武谷雄二「働く女性と健康」)
乳腺症

 

女性ホルモンの変動によるもので、月経前に乳房にしこりや痛みの症状が出て月経後は症状が落ち着いていく。30〜40代に多く見られる。良性だが、しこりができるため乳がんと判断がつかず不安になる女性が多い。(参考:女性の健康とメノポーズ協会「女性の健康と働き方マニュアル」)
乳がん

 

乳がんは女性の全がんの中で罹患率が最も高い。30代から増え、ピークは40代後半〜50代前半で、その後は減少していく。(参考:国立がん研究センター がん情報サービス「乳がん」(参考:ウーマンズラボ「乳がん罹患率(年齢別)
うつ病 女性のうつ病患者数は男性の約2倍で、20代から男女差が顕著になる。全年代の中で最も多いのは40代。「母親としての役割」「妻としての役割」「子としての役割」「仕事での役割」など、様々な顔を持って生活していくことが精神的負担に繋がっており、育児ストレス、育児・家事と仕事の両立のストレスなどがうつ病発症に影響している。(参考:ウーマンズラボ「うつ病の男女比・年代別患者数」)
ダブルケアによる心身の不調 育児と親の介護が同時期にやってくる「ダブルケアラー」は女性に多く、平均年齢は39.65歳。特に40代に入ると、体力の低下や更年期症状により、体力的にも精神的にも疲れ、心身に不調が起きる。産後うつ、介護うつに発展する可能性もある。(参考:ウーマンズラボ「ダブルケアの介護に疲弊する女性たち ケアラーの平均年齢は39歳」
バセドウ病

 

甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気で、女性に多い(男性の4〜6倍)。特に20〜30代の若年層に多く、流産や早産のリスクが上がる。症状の一つに眼球突出があり、美容面における悩みも大きい。(参考:厚生労働科学研究費補助金「女性の健康の包括的支援政策研究事業」ヘルスケアラボ
橋本病 甲状腺に慢性的に炎症が起こる病気で、女性に多い(男性の20〜30倍)。特に30〜40代で多い。進行して甲状腺機能低下症になると、不妊、流産、妊娠高血圧症候群などのリスクになる。(参考:国立成育医療研究センター
子宮頸がん

 

20代後半から増えピークは40代。その後は横ばい。(参考:国立がん研究センター「がん情報サービス
睡眠不足による疲れ 「睡眠で休養が十分にとれていない者の割合」に関する調査では、20〜70歳以上の全年代の中で最多は30代で33.4%、次に多いのが40代で31.4%。この調査は男女計の調査結果で、さらに、子の有無別の調査ではないので推測になるが、30〜40代で休養不足を感じる人が多い理由としては、この年代で子どもがいる夫婦は子どもがまだ小さく、育児と仕事の両立で最も体力が奪われる時期であることが考えられる。
スーパーウーマン症候群 特に、結婚して働きながら育児をしている女性に多い。仕事も家事・育児も完璧にこなそうと頑張りすぎることでストレスがたまり、心身の不調が起きる。

 

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