女性ヘルスケア業界、11個の課題(1/3)
対策が今なお十分とは言えない、ヘルスケア業界の11個の課題とは?女性の健康を守るために、そして激変する日本社会とヘルスケア産業の健全な発展のため、業界全体で取り組みたい課題をピックアップ。女性生活者の隠れたニーズや不満、そしてマーケティングのヒントが見えてくるはず。(最終更新:2019年6月 ヘルスケア課題は随時追加します。「こんな現状もヘルスケア課題として、業界で共有すべきではないか?」といった情報提供をお待ちしております。こちらから。)
目次
【課題1】企業の商品・サービス・情報が原因 早急の代案が必要
企業が販売する商品・サービス、情報が原因となって、生活者の健康が損なわれるケースは少なくありません。
- ヒトの糞便にマイクロプラスチック片、日本人でも確認
- ホワイトニング製品で歯にダメージ、米研究で示唆
- 人気の紅麹サプリで肝障害に、米症例報告
- 糖質制限による危険な病気のリスク
- 高齢女性の脳卒中リスク増に、ある飲料が関係
- 食べてはいけない超加工食品リスト なぜ話題に?
- 「レジ横の陳列禁止」で菓子類の消費が減少、買い物客の食習慣に影響
- 子どもの言語発達遅延、マニキュアやヘアスプレーなどが関連か
- 周辺の騒音レベルが高いと心筋梗塞になりやすい?
- シャワーヘッドに大量の細菌、肺感染症の恐れも
【課題2】貧困層の健康をどう守る?非正規雇用シングル女性、単身高齢女性、シングルマザーが顕著
収益を考えるなら当然、ヘルスケア企業がターゲットとするのは貧困層ではなく中間層・富裕層です。これまで女性マーケティング支援事業や講演を通し多くの企業様に「単身貧困層と単身富裕層は、まだまだ競合が少ない空白の市場だが、どちらを狙う?」と尋ねてみましたが、ほぼ全社が「後者」と答えます(1社のみ「貧困層を狙いたい」と回答)。となると取り残されていくのは「貧困層の健康」。貧困と罹患率、貧困と健康行動には相関関係があることはさまざまなデータが示しており、広く知られている事実です(富裕層ほど健康行動に時間やお金をかけるが、貧困層は時間やお金をかけない・かけられない傾向にある)。
今後さらに二極化が進む社会で貧困層の健康問題はより顕著になっていくと考えられ、特に「非正規雇用のシングル女性「単身の高齢女性」「シングルマザー」において貧困問題が浮き彫りになっています。「薬を買うお金がないから通院を途中でやめた」「健康に良くないと分かっているが野菜や果物は高いので、ご飯やカップラーメンなど炭水化物中心の食事でしのいでる」といった彼女たちの健康を、収益とのバランスを考えながらどのように企業がサポートできるのか?難しい課題です。
【課題3】働く女性の健康課題は山積み
働く女性が増加したことで新たにスポットが当てられるようになったのが「働く女性の健康」。専業主婦が当たり前だった時代には浮彫にならなかったこの問題。現在は、「働く女性の健康問題はどんどん増えているが、具体的な対策が分からない、追いつかない、働く女性の健康ニーズが分からない」といった状況です。
2019年1月に弊社が担当させて頂いた展示会講演(ヘルスケアIT/東京ビッグサイト開催)では、「女性の健康経営×ICT ライフステージ&年齢で変化する、職場のヘルスケアニーズと対応策」についてお話させて頂き、その後たくさんのご意見を頂きました。特に多かったのは「働く女性たちが、そのようなニーズや不満を持っていたとは知らなかった」。
まずは、働く女性の現状や働く女性を取り巻く環境などについて正確に把握することが課題解決の第一歩なのかもしれません。
- 非正規雇用女性に課題 治療と仕事の両立で利用している社内制度は?
- 業態によって異なる女性の生活習慣 最も不健康な業態は?
- 「精神障害」男性より多い唯一の業種は?特にストレスケアが必要な女性たち
- 働く女性が「がん」と診断された時に感じる不安とは?
- 「座り過ぎ問題」、対策不足を感じるビジネスパーソン9割
- 20~50代働く女性の3大不調と、不調を感じ始めた年齢
- ワーク・ライフ・バランスとは?基礎知識と現状の課題
- ビジネスパーソン 仕事と治療の両立で苦労すること
【課題4】世界のヘルスケアが優先すべきは「女性」「少女」「希少疾患」「デジタルヘルス」
先進国のみならず、途上国含め世界のヘルスケア問題は多岐にわたりますが、特に私たちが着目したいのは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(略語はUHC。全ての人が適切な予防、治療、リハビリなどの保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態のこと)。以下の動画では次のように述べています。
女性・子ども・思春期の若者は人口の過半数にもなります。特に途上国ではそうです。今まで対応が遅れてきた女性・少女・思春期を優先して人口の大半を占める人々をケアすることがUHCの最初の一歩です。(略)女性や少女の保健医療ニーズが最も大きいのに貧困国では後回しにされる。彼女たちは経済的手段がなく自立して医療費を払えないから貧しいと少額の負担でも命を左右する治療の妨げになります。(引用:Youtube「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)エルダーズの提案 」)
また世界全体で3億5000万人と推定される、患者数が極めて少ない疾患群である「希少疾患」に対するケアも業界全体で考え取り組んでいくべき課題です。「もし、自分自身や家族が希少疾患だったら?」。治療方法が何もないことに絶望的になるはずですが、とは言え、希少疾患は多くの人にとって所詮は「他人事」です。今は元気で何にも罹患していなくても、いつ突然、自分自身や家族が罹患するか分かりません。全ての病気は他人事に見えて実は自分事でもあるのです。
多くの課題があるヘルスケア市場ですが、課題解決策として期待が大きいのはデジタルヘルスの力です。しかしそんなデジタルヘルスにも課題はあり、最大の課題は「社会実装にかかる時間の長さ、つまり生活者の日常に定着するまでの時間の長さ」です。