ヘルスケア業界、11個の課題

対策が今なお十分とは言えない、ヘルスケア業界の11個の課題とは?女性の健康を守るために、そして激変する日本社会とヘルスケア産業の健全な発展のため、業界全体で取り組みたい課題をピックアップ。女性生活者の隠れたニーズや不満、そしてマーケティングのヒントが見えてくるはず。(最終更新:2019年6月 ヘルスケア課題は随時追加します。「こんな現状もヘルスケア課題として、業界で共有すべきではないか?」といった情報提供をお待ちしております。こちらから。)

【課題1】企業の商品・サービス・情報が原因 早急の代案が必要

企業が販売する商品・サービス、情報が原因となって、生活者の健康が損なわれるケースは少なくありません。

【課題2】貧困層の健康をどう守る?非正規雇用シングル女性、単身高齢女性、シングルマザーが顕著

収益を考えるなら当然、ヘルスケア企業がターゲットとするのは貧困層ではなく中間層・富裕層です。これまで女性マーケティング支援事業や講演を通し多くの企業様に「単身貧困層と単身富裕層は、まだまだ競合が少ない空白の市場だが、どちらを狙う?」と尋ねてみましたが、ほぼ全社が「後者」と答えます(1社のみ「貧困層を狙いたい」と回答)。となると取り残されていくのは「貧困層の健康」。貧困と罹患率、貧困と健康行動には相関関係があることはさまざまなデータが示しており、広く知られている事実です(富裕層ほど健康行動に時間やお金をかけるが、貧困層は時間やお金をかけない・かけられない傾向にある)。

今後さらに二極化が進む社会で貧困層の健康問題はより顕著になっていくと考えられ、特に「非正規雇用のシングル女性「単身の高齢女性」「シングルマザー」において貧困問題が浮き彫りになっています。「薬を買うお金がないから通院を途中でやめた」「健康に良くないと分かっているが野菜や果物は高いので、ご飯やカップラーメンなど炭水化物中心の食事でしのいでる」といった彼女たちの健康を、収益とのバランスを考えながらどのように企業がサポートできるのか?難しい課題です。

【課題3】働く女性の健康課題は山積み

働く女性が増加したことで新たにスポットが当てられるようになったのが「働く女性の健康」。専業主婦が当たり前だった時代には浮彫にならなかったこの問題。現在は、「働く女性の健康問題はどんどん増えているが、具体的な対策が分からない、追いつかない、働く女性の健康ニーズが分からない」といった状況です。

2019年1月に弊社が担当させて頂いた展示会講演(ヘルスケアIT/東京ビッグサイト開催)では、「女性の健康経営×ICT ライフステージ&年齢で変化する、職場のヘルスケアニーズと対応策」についてお話させて頂き、その後たくさんのご意見を頂きました。特に多かったのは「働く女性たちが、そのようなニーズや不満を持っていたとは知らなかった」。

 

まずは、働く女性の現状や働く女性を取り巻く環境などについて正確に把握することが課題解決の第一歩なのかもしれません。

【課題4】世界のヘルスケアが優先すべきは「女性」「少女」「希少疾患」「デジタルヘルス」

先進国のみならず、途上国含め世界のヘルスケア問題は多岐にわたりますが、特に私たちが着目したいのは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(略語はUHC。全ての人が適切な予防、治療、リハビリなどの保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態のこと)。以下の動画では次のように述べています。

女性・子ども・思春期の若者は人口の過半数にもなります。特に途上国ではそうです。今まで対応が遅れてきた女性・少女・思春期を優先して人口の大半を占める人々をケアすることがUHCの最初の一歩です。(略)女性や少女の保健医療ニーズが最も大きいのに貧困国では後回しにされる。彼女たちは経済的手段がなく自立して医療費を払えないから貧しいと少額の負担でも命を左右する治療の妨げになります。(引用:Youtube「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)エルダーズの提案 」)

また世界全体で3億5000万人と推定される、患者数が極めて少ない疾患群である「希少疾患」に対するケアも業界全体で考え取り組んでいくべき課題です。「もし、自分自身や家族が希少疾患だったら?」。治療方法が何もないことに絶望的になるはずですが、とは言え、希少疾患は多くの人にとって所詮は「他人事」です。今は元気で何にも罹患していなくても、いつ突然、自分自身や家族が罹患するか分かりません。全ての病気は他人事に見えて実は自分事でもあるのです。

多くの課題があるヘルスケア市場ですが、課題解決策として期待が大きいのはデジタルヘルスの力です。しかしそんなデジタルヘルスにも課題はあり、最大の課題は「社会実装にかかる時間の長さ、つまり生活者の日常に定着するまでの時間の長さ」です。

【課題5】女性に多いメンタル疾患

うつ病は女性に多く、男性のうつ病患者数は49.5万人、女性は78.1万人です厚生労働省「患者調査平成29年」。男女別・年齢別にみると、男性は40代が最も多く、女性は40代および60代後半〜70代で多く見られます。うつ病有病率に女性が多い理由は「うつ病の男女比、なぜ女性に多い?」をご覧頂きたいのですが、女性のメンタル疾患ケアは女性のヘルスケア問題の中でも特に重視したい分野です。

【課題6】超高齢社会市場は分からないことだらけ

各国がこれまで経験したことがない超高齢社会における社会の在り方は、多くの国・人にとって分からないことだらけです。そのため世界でもいち早く超高齢社会を迎えた日本は、医療システムや各種政策、ヘルスケアビジネスにおいて世界からその動向に関心が寄せられています。とはいえ、超超高齢社会における各種問題に手探り状態なのは日本も同様で、超高齢社会市場には多くの課題があります。例えば「どのような『介護予防』がピンピンコロリに有効なのか?」「高齢ドライバーの免許返納後の“足”はどうするのか?」「ICT健康サービスの利用を促すにはどうすれば良いのか?」「“医療依存”を軽減するためには、高齢者に対してどのような意識改革や行動改革が必要で、どのような形で医療・福祉連携強化を図るのが望ましいか?」など多岐にわたります。超高齢社会市場は分からないことだらけではありますが、国や各企業から高齢者に関する調査データや研究報告が数多く公開されるようになってきました。現状をまずは把握し、高齢者のニーズや不安、不満を正しく把握することが課題解決の第一歩ではないでしょうか。

【課題7】「老後と死に方」に向き合う時代へ突入

これまでは「QOL(生活の質)」が注目されていましたが、ここ最近広がりだしている言葉に「QOD(死の質)」があります。多死社会を迎えた日本ではQOLと同様にQODに対する関心が急速に高まっていくと考えられます。「人生100年時代」という言葉が定着した今、若いうちから老後を真剣に考える人が増え、さらには「死に方」についても向き合う機会が増えてきました。人生100年時代におけるQOLが高い老後とは?質の高い死に方とは?今の時点で明確な解はありませんが、「長い老後と死の質を向上すること」は全ての人にとって課題です。

【課題8】誰もが病気になる可能性はあるのに、他人事?

「健康は失って初めて、その大切さに気づく」という言葉が身にしみるのは、自分自身が不調や罹患を経験したときです。私たちウーマンズは日頃から女性たちのヘルスケアデータの収集・分析を行っており、その中で頻繁に目にするのは女性たちの後悔の声です。「なぜもっと早く検診に行かなかったのか(乳がんで両胸を失った女性)」「なぜ仕事よりも治療を優先しなかったのか(腎臓疾患で透析になった女性)」「なぜ日頃から食生活に気を付けなかったのか(糖尿病の女性)」。今は健康でも、来月、来年、3年後も健康である保証はどこにもありません。誰もが病気になるリスクを持っているのに、健康だとつい「健康でいるための行動」は後回しになりがちです。健康なときから「健康であり続けるための努力」を個々が行う必要がありますが、なかなか難しいことでもあります。

医療・ヘルスケアの現場で最も難しいとされることの一つが「行動変容を促して、個々が健康行動・病気予防のための行動に自発的に取り組むようにすること」です。最近では行動変容を促すことに特化した商品やサービスが登場し、今後さらに増えていくことが期待されます。例えば女性に人気のダイエットアプリサービス「Lily」は、健康行動継続のポイントを「コミュニケーション」と「手軽さ」としています。

【課題9】男が上で女が下なの?真の男女平等を目指す

先進国であるにも関わらず、日本に今なお残る「男尊女卑」に驚く外国人(特に欧米諸国)は多いものです。共働きなのになぜか育児の大部分は女性が担う。共働きなのに親が介護になったら仕事を辞めて介護を担うのも男性ではなく女性。同じようにキャリアを積んでいるはずが職場で優遇されるのは男性-。いまだにこの男女格差はさまざまな場面で起きています。

このような話になると、「では女性優遇にすべきなのか?」とか「硬直的な男女平等論」に発展してしまうこともありますが、男女の生物学的役割は明らかに異なるため、得意なことや苦手なことなどに性差があるのは当然です(例:重い荷物を持つのは男性が得意。職場のコミュニケーションを円滑にするのは女性が得意など)。他にも、ストレス耐性や疾病罹患リスクにも体のつくりの違いから性差があります。

男女平等とは何もかもを平等にするという極端な考え方に基づくものではなく、「性差」による違いを男女が互いに認め合い、理解し合い、助け合いながら「協力して諸問題に取り組んでいく」ことではないでしょうか。ただ現状は、長い歴史の中で男性主体の社会・風土が出来上がっているのは事実です。そのような中で女性の方がさまざまな負担を強いられてることを特に男性陣にはご理解いただきたいと思ってます。

【課題10】“健常者至上主義”社会からユニバーサルな社会へ

エレベーターがない駅(車いすや杖を使っている人にとっては大変!)、マスクをしたまま接客をする店員(聴覚障がい者にとっては何を言っているか分からない)、塩分・糖質たっぷりのメニュー中心の飲食店(食事制限がある人にとっては外食は困難)など、世の中の商品やサービスは「健康な人」を前提にしているものばかりです。同時に「健常者」と「障がい者・罹患者」には“見えない心理的壁”があります。ユニバーサルな社会をつくっていくためには、“見えない心理的壁”を払拭し、皆で一緒に「ユニバーサルな商品、サービスは何か?」を共創していく必要があります。以下2つの取り組みはまさにそれを実現しています。

【課題11】地域格差をどう縮めるか?

風土、習慣、伝統文化、医療・福祉充実度、交通アクセス、商業充実度などの違いが地域差を生み出し、結果、地域ごとの罹患率、健康寿命、平均寿命、ヘルスケア投資額、年間医療費などに大きな差が出てきます。この地域格差をどのように縮めていくか?「地域医療構想」「スマートシティ化」「遠隔診療」「モバイルヘルス」などで地域格差を縮める取り組みが、国、自治体、企業主体で行われていますが、まだまだ発展途上の段階です。

 

 

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